第35話
結局の所、誰かに求めても仕方ないんだよ、助けを。
誰でも良いからと叫んで誰か助けてくれるだろうか。そんなことはない。誰も助けてくれないオチに決まっている。
そんなこと分かっているんだ。俺だってもう高校生なんだらから。
いつだって自分を助けてくれるのは自分なんだよ。
でもさ。それでもさ。
「誰か助けてくれねぇかな……」
「何か言ったか、メガネッ!」
「てめぇら全員最低だって言ってんだよ!!」
人間大砲という言葉を知っているだろうか。
サーカスなどで行われる曲芸の一つで、曲芸用に作られた大砲から、人間を打ち出し、予め想定された落下地点に置かれた水平に張られたネット、もしくは緩衝用のマットになどに着地させるものである。
いきなり何を解説しているかって?
それは、つまり。今の俺の状態が。
「覚えてろ!? 生きて帰ってきたらウサギ野郎の次はお前らだからなっ!!」
まさに、それなんだよ。
「その意気や良しだッ! 二人とも準備は!」
「ばっちりだよぉ!」
「こっちもいつでもいけるわ!」
「俺はいけねえ」
「全員おっけいだ!」
聞けよ、人の話。
俺が魔法少女に返り咲いたとして、いまだに上級で戦う二人との戦力差は絶望的なものに変わりは無い。
そんな俺達に出来る精一杯。それは、一瞬でもウサギ野郎の隙を作って総帥さんになんとかしてもらおう作戦しかなかった。
それは分かる。
それはよぉく分かる。
だけどよ。
隙を作るためにデブの魔法で硬化させた俺を、スノウさんの魔法で弾丸として撃ち出すのは分からない。
「死ぬ覚悟なんて糞食らえだ! いつでもどこでも生きる気があるやつが生き残るってもんなんだよ!」
「なにもしねえチビが偉そうに言ってんじゃねえ!!」
「あれって絶対なにかのゲームの台詞だよねぇ」
「感化されるタイプって居るわよね」
いやぁぁ!?
大砲がッ! 大砲が角度をあげてきた!? ちょ、ちょっと待って! タンマ! まじでタンマ! まだ覚悟出来てないから! あんな世紀末な戦いしているなかに突っ込む覚悟とかまだ出来てねえから!!
「死ぬ! まじでこれは死ぬ! 落ち着け! もう少しみんな考えよう! みんなが生きるだけじゃなくて無傷で終わる作戦を考えッ」
「撃てェ!!」
「Ready! Steady! Go!」
「きらきらぴかぴか願い星! ミラクルの身体をダイヤモンド並に固くしちゃえ~!」
「ぎゃぁぁあああああああ!!」
はやっ!? は、はや、はやぁぁぁぁ!!
無理っ! 無理無理無理ぃぃい! こんな状況でウサギ野郎に一撃当てるとかまじで無理っ! 出来ない、無理! 駄目ぇぇぇ!!
「ぐはッ!?」
「ふん……、総帥の力もこの程度かぽよ。やっと肩が温まってきたというのにぽよ」
「ぐっ……、ふ、ふはは。喜び給え……、ワシは傷を負えば負うほど魔力が上がる能力者なのだよ」
「ドエム属性ぽよか。魔法少女モノには出てきて欲しくないぽよな」
「そっくり、そのまま返そうではないか。その言葉を」
炸裂し続ける魔法に破壊音に交じって二人の会話が聞こえてくる。もうどっちも出てくるな、魔法少女モノ以前に社会に!
かなり上空に居たはずの二人の姿がぐんぐんと大きくなっていく。
くっそぉぉ! もうこうなったらヤケクソじゃい! 気付くなよ! このまま気付くなよ!!
「そろそろボクも飽きてきたぽよ」
「ほう、決着を付けようと言うのかね」
「そうぽよなぁ」
ダメージが入るなんて思っちゃいない。
でも、いままでずっと馬鹿にし続けてきたウサギ野郎の顔面に! 渾身の一撃をッ!!
「無駄なハエがまた来たみたいだしぽよなぁ」
腹の立つほどいやらしい笑みが、
「ッ!」
俺へと向けられた。
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