第34話


 死にたい。

 なにがどうってもう本当に死にたい。


「ちょっと本当に気持ち悪いから近づかないで欲しい……」


「そッ! そんな酷いこと言ってあげないでよぉ! 大丈夫だよ、メガネ! ボクは否定しないからねっ!」


 そもそもどうして俺は怪人になろうなんて提案したんだよ。そうだよ、見てきたじゃねえか。いままで色んな怪人を見てきたじゃねえか。

 ほとんどまともな姿なんてしてなかったじゃねえか。初めてまだまともだったのはチビのスーパー怪人カイジンツクールくらいだったはずじゃねえか。


 どうして。

 どうして……。


「お前……、そんなに魔法少女が好きだったんだな……」


 どうしてまた姿になってんだよォォオオ!!


 変な怪人の姿じゃなくて、この姿になってんだよ!?

 おかしいだろ! 俺にだって人に言えない性癖のひとつやふたつあるぞ! 変なこだわりだってある! 目玉焼きにはマヨネーズとか! 豚生姜焼きにはマヨネーズとか! 豚キムチにはマヨネーズとか! オムライスにはケチャップとか!!

 その辺から怪人に繋がっても良いじゃねえか! なんでだよ! なんで、よりにもよってまたミラクルなんだよ! これじゃ、これじゃあまるで……ッ!!


「魔法少女になって興奮している変態だなんて、……気持ち悪いわよ」


「ぐふっ」


「げふぉっ」


「どうしてデブまでダメージ受けてんだよ」


 いやぁぁぁ!?

 そうだよ、そうなるよな! スノウさんの言った通りになるよな!? 俺は、俺は!! 魔法少女になって悦んでいた変態だってことか!? 女の子の姿になって、女の子とハグ出来て喜んでいただけだと思ってたら、魔法少女になったこと自体に興奮していたってことなのか!? 違う、違う! 違うと言ってくれぇぇぇ!!


「へんた、おい、メガネ、デブも。いい加減にしろって」


 こいつ、いまヘンタイって言いかけたな?


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、魔法少女になって可愛くなって喜んでいてごめんなさい」


「もぉ! あんたのせいでデブまで変な感じになっちまったじゃねえか!」


「ワ、ワタシのせいって言うの!?」


「ヘンタイなのはこいつらのせいではあると思う」


「どっちの味方だてめぇは!!」


「よっし、復活した」


 くそっ! なんか手のひらの上で踊らされたような気がするが、良いとするとしよう。

 で。


「お前もいつまで落ち込んでんだ!」


「ふごっ!?」


 ぶつぶつ謝罪を続けるデブに軽く蹴りをぶち込んでこっちも復活させておく。


「ああ……、ワタシの可愛いミラクルが……」


 うっせぇな! 悪いとは思ってるけど、こっちだって正体がバレた上でまた変身するなんて想定外だわっ!!

 ああ、もうこれも全部……ッ!!


「ウサギ野郎のせいだッ!!」

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