第27話


「見事、だ……」


 色々と邪魔は入ったとはいえ、敵の幹部クラスとの戦いである。

 それはもうアニメであれば盛り上がること間違いなく、例えば途中でオープニング曲がカットインする演出とかあっても良いほどの状況である。

 もしかしたら私たちのなかで脱落者が出てしまうこともあり得るかもしれない。ウサギ野郎が負傷する分には大歓迎だ。


 そう、信じて疑わなかったわけだ。

 だからかな。


 まあ、良いんだけどさ。


 私の開幕一撃目の魔法少女パンチで決着が着くとかさ。

 思わないわけじゃん。普通さ。


「勝った……、の?」


 シャインさんの驚きの声が漏れ落ちる。

 別に苦戦に続く苦戦の末になんとか勝てたから零れた言葉ではない。いや、もう本当にそっちのほうがいくらマシだったか。


 勘違いしてほしいわけじゃないが、苦戦をしたかったわけじゃない。痛い目に会いたいわけでも、他の二人が痛い目に会ってほしいわけでもない。


 でもさ。

 なんというかさ。


 あるじゃん!!


 そりゃシャインさんだって、……の? ってなるよ! それこそ様子見も兼ねた攻撃だったからな!? 一撃目にすべてを込めて!! とかでもなく、避けられることも前提として、相手の反撃にもすぐに対応できるように意識した攻撃だったからな!! それを普通にごふぅ!? って受けて、ピクピク痙攣したあと、見事だ。とか言われても意味わかんねえよ!!


「ワタシの能力は強制的にただの人間を怪人にする力なのだ……」


 こいつの言葉に動揺させられていたスノウさんの目が若干死んでいる。私たちの言葉を受けて宿った彼女の瞳の炎が完全に鎮火していた。


「言って……、ましたね」


 会話したいわけではないが、美少女二人に任せるのも最低だと思って返事をして見た。心底嫌なんだけど。


「ただの人間を怪人にする力なのだ……」


「はぁ……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「人間居ないと意味なくて……」


「屋上を選んだ意味はァ!?」


 我慢出来るか!

 この姿であまり大声ツッコミなんかしたくはないけれど、これはもう無理だろう! なんだこいつは馬鹿か!? ただの真正の馬鹿か!?


 スーパー怪人の力はどうした!! 今までの怪人は変な特殊能力以外にも身体能力が人間離れしていたじゃねえか!

 スーパーはスーパーでスーパーなんだよ、とか言っていたスーパーな能力とか宿れよ! そこはスーパー的にスーパーなスーパーさをスーパーに見せつけていくところだろう!!


「ふっ……」


 おい、こいつなにニヒルに笑おうとしているんだよ。

 言っておくがあまりに情けないから言わなかっただけで、今のこいつは腹を抑えて崩れ落ちたままで。つまりは情けない尻を突き出してピクピクしているんだからな。何をどうやってもニヒルからかけ離れた姿だからな。


「そこに、浪漫があるかな、と」


「馬鹿じゃん!」


「うわぁ」


「……」


 責任者ァァァ!!

 こいつを主任に付けた責任者出てこいやァ!!


「予想以上だ、魔法少女よ」


 言ったけどさ……。

 出てこいって。

 言ったけどさァ……。


「ワシが、株式会社トッテモワルインデス総帥である」


 後ろから聞こえる声に。

 私たちが上ってきた階段から聞こえてきた声に。


 出てくるなよ、真面目に。


 そう思うしかなかった。

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