第26話


「ワタシの能力は!」


 強者の演出とか言っていた自分が恥ずかしい。いや、でもさ。思わないわけじゃん? 仮にも悪のアジトでだよ? ちょっと強そうで重要そうな敵が女性社員に頼んで後ろから扇風機回してもらっているとか。

 一番意味不明なのは女性社員とナチュラルに言っている自分がだけどな!


「強制的にただの人間を怪人にする力なのだ!」


「強制的……っ! だとしたら今までワタシたちが戦ってきたのはっ」


「その通り! 言ってしまえば被害者だ! 君たちは可哀そうな被害者を正義の味方面して倒してきたということだ!」


「なんてことを……ッ!」


「だとしても!」


 株式会社トッテモワルインデス営業部主任のスーパー怪人カイジンツクールの言葉にスノウさんが動揺していると、大きなおっぱいを揺らしながらシャインさんが一歩前に飛び出した。


「彼らが何も悪いことをしていない人たちに悪さをしていたのは事実だよぉ! それも怪人になって仕方なくしていたとしても! それを止めてあげることだって必要なことだったはずだよ!」


「シャイン……」


「敵の言葉に惑わされちゃ駄目だよ、スノウ! 怪人にさせられた人たちがどうなってしまったのか、それは今のアタシたちには分からない。分からないけど……ッ」


 シャインさんが杖を振る。

 先端の鈴が小さく、だけど、確かに鳴り響いた。


「いま、アタシ達がしないといけないことは明確だよ!」


「そうです!」


「ミラクル……!」


 私としたことが……。いくらふざけているような状況とはいえ、翻弄される仲間を、それも本当の美少女を目の前にして最初に動けないなんて。男としてなんて情けない。


「シャインさんの言う通りです! まずは……、まずはこの人を倒しましょう!」


 シャインさんの言葉に乗っかった形になるのはカッコ悪いかもしれないけれど。本当は私から言うべきことだったかもしれないけれど。

 それでも、やるべきことをやりきるんだ!


「そうだぽよ! 別に怪人になった人間がどうなってもきっと大丈夫だぽよ!」


 やりきるんだ!

 聞こえない! ウサギ野郎の糞みたいな台詞なんて聞こえない!!


「そうね……、ワタシとしたことが、ごめんなさい」


 もはや彼女の瞳には迷いはない。

 私たちの(ウサギ野郎の言葉は納得いかないが)言葉で彼女は自分が為すべき道を見定めることが出来たようだ。


「仲間たちの言う通りだわ! スーパー怪人カイジンツクール! まずは貴方をここで倒す!」


「ふっ、やはりこの程度の揺さぶりでやられる魔法少女ではないようだ。では……ッ!」


 来るか……!!


「ここで暴れると部屋が壊れるので屋上へ移動してもよろしいでしょうか」


 くそったれがァ!!

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