第20話


「朗報ぽよ! 敵のアジトの一つを突き止めたぽよ!」


 普段通り怪人を退治した後のことである。解散する流れになっていた私たちへウサギ野郎ことチーカマが鼻息荒くやって来た。……ウサギも鼻息荒く出来るんだな。


「ほんと! すっごいじゃん、チーカマ!」


「これで少しは進展しそうね」


 大はしゃぎするシャインさんに、こんな時でも冷静なスノウさん。二人の美少女の対比が本日もなんて可愛らしいのだろうか。

 それはともかく、えらい話が急だな。いや、こっちとしてはありがたいんだけど。


「ルーキーズチャレンジも終わったぽよしな」


「はい?」


「こっちの話ぽよ」


 聞いてはいけない言葉を聞いた気もするけれど、それは流しておくことにしよう。なぜかは分からないけれども。


「それで、それで? もしかして今からアジトに殴り込みに行く感じ?」


「今から、ですか」


 私たちの魔法はゲームのように明確なMPがあるわけではない。単純な体力消費みたいなもので、少し休めば連戦だって可能と言えば可能だが。それよりも。


「今日は駄目だぽよ。今から戦えば夜になってしまうぽよ。未成年の君たちを夜に働かせると恐ろしいことになってしまうぽよ」


 コンプライアンス的にな。


「確かに、そろそろマ、お母さんが心配していそうね……」


 沈み始める夕日に目をやりながらスノウさんが呟いた。聞き間違いでなければ、いま母親のことをママと言おうとしたのだろうか。

 ……落ち着け、落ち着くんだ。俺、じゃなかった私。可愛すぎて叫びそうになるとかミラクルのキャラじゃない。そんなことすれば一気に怪しまれる、落ち着け、落ち着くんだ。


「スノウってもしかして普段ママって呼んでいるの? かっわいぃぃ!」


「ちょ、やめッ、シャイン!!」


 シャインさんは良いなァァァ!!

 ……こほん。


「あ、あの、スノウさんが大変なことに……」


「そうよッ! 離しなさい、シャイン!!」


「ぶぅ……」


「頬を膨らませても駄目なものは駄目っ」


「それじゃあ決戦は明日ぽよ」


 もみくちゃになっている二人を無視して話を進めるのはその方が話が早いと判断したのか、それとも自分が早く帰りたいからなのか。間違いなく後者だろうな。


「さすがにボスが居るとは思わないけどそれなりの強者がいる可能性は高いぽよ。今日はしっかり身体を休めておいてほしいぽよ」


 こいつがこんなことを言うとまさかのボスが居る気もする。とか言っておかないと本当に居そうだ。


「分かってい、ちょっといい加減にしなさい、シャイン!」


「はぁい……」


「二人とも明日は必ずアジトを潰すわよ。いままで以上に気合い入れましょう」


「はい……ッ」


「まっかせてよ! ミラクルもスノウもばっちり守ってあげるからね!」


「ええ。ワタシも二人も守ってみせるわ」


「わ、私も頑張ります!」


「うんうん。女の子同士の暑く、熱い友情ぽよな」


 こいつ今暑苦しいって言いかけなかったか。


「今日はこれで解散ぽよ! 明日の夕方17時に集合ぽよ! 場所はあとでメールするぽよ!」


 こうして、俺たちの戦いにおける大きな一歩が踏み出されることになる。

 踏み外してしまうことのないよう慎重に。だけども大胆に。きっと……、成功してみせる! 早いところ魔法少女から解放されたいからな!!


『スノウに抱きつけなくて残念だったぽよな(笑)』


 そのあとでウサギ野郎から届いたメール内容に思わずスマフォを叩き付けそうになった。

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