第18話


「それで?」


「ぽよ?」


 今日も今日とて怪人を退治した帰り道、すでに変身を解除した俺は我慢しきれずにウサギ野郎へ質問を投げかける。


「この前の話の続きだよ。組織については聞いたけど」


「ああ、怪人についてだったぽよね」


 余談になるが、一般人からはウサギ野郎は見えて居らず、こいつと会話している俺の姿も認知されないらしい。別に俺が透明人間になっているとかではなく、他の人からはただ歩いているだけのように見えるそうだ。どういう理屈かは分からないが、変人扱いされないというのであればこちらとしては都合が良い。


「うぅ……ん、怪人ぽよか……」


「どうしたんだよ」


 妙に歯切れが悪い。

 このウサギ野郎が適当を抜かしたり暴力を振るうことは多々あるが、こういった対応を返すのは初めてだった。


「もしかして全然分かっていないとかか」


「そういうことじゃないぽよ。勿論全てではないぽよがある程度は分かっていることもあるぽよ」


「じゃあそれを教えてくれよ」


「それが……、今日が何曜日か知っているぽよ?」


 今日……?

 いきなり何を言い出すか分からないが。


「水曜日だろ」


 コンビニで立ち読みしている時に呼び出しくらったから嫌でも覚えている。あと、面倒臭い体育が二連続である曜日でもあるしな。


「そうぽよ。それが都合が悪いんだぽよ」


「は?」


 どういうことだ?

 水曜日に何か行動を起こすのが悪い。ならまだ分からなくもない。だけど、説明するだけだろう?


「……」


「……」


「ノー残業デーなんだぽよ」


「ものすごくどうでも良いわッ!?」


 ああ、そうでしたよね! こいつにまだまともな反応を期待している俺が悪いんだよね! くそったれが!!

 ていうか、お前の所属もあれか、会社か!?


「大事なことなんだぽよ! 残業時間が加算されるとどうなるか知っているかぽよ!?」


「知らねえよ!」


「上司の小言を聞くこっちの身にもなれぽよ!」


「情報なしで戦わされる現場の身のほうがきついわ!!」


 いまだにどういう理屈になっているか分からない相手と原理の分からない魔法で戦い続けているんだぞこっちは! しかも仲間の二人はなんとなく理解しているみたいでボッチ感まであるし!!


「シャインかスノウに聞いたら良いんじゃないかぽよ」


「お前の仕事だろうが!? 二人に投げてんじゃねえよ!」


「仕事を振るのが上司の仕事ぽよ」


「お前の部下になった覚えはねえよ!!」


「我が儘ばっかりぽよ……、これだから童貞は鬱陶しいぽよ」


 おほほい……ッ! 面白いこと言うじゃねえか。

 その言葉そっくりそのまま全力で打ち返してやろうか……!!


「どうせお金を出してお姉様に手取り足取りしてもらえないとえっちも出来ない奴は本当に駄目なんだぽよ」


「死、ごほぉ!?」


「でも優しい僕は教えてあげるぽよ」


 くそぅ……、変身していない状態じゃこっちが不利だ……。でも、こいつ最近変身している時は二人が居る時しか出てこねぇし!!


「怪人とは――」

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