第13話
怪人は退治するとぽわんと煙となって消えてしまう。彼らがどこから生まれてどこへ行くのかは分からない。
ウサギ野郎に聞いてもはぐらかされる。絶対にあいつは何かを知っていると睨んでいる。
「おっ! つかれミラクルゥ!」
「お疲れ様」
うずうずと抱きつこうとしているのを我慢しているシャインさんがてこてこと近づいてきて、こんな時でも冷静なスノウさんが軽やかに地面に降り立った。
「お疲れ様です、お二人ともありがとうございました!」
「まっかせてよ! ミラクルへの攻撃は全部アタシが守ってあげるからね!」
「ミラクルの攻撃も良かったわよ、良い蹴りだったわ」
「そうそう! もうカッコよくて可愛くて惚れちゃいそうだったよね!!」
「あ、あはは……」
出来れば私ではなく、俺の時に言ってもらいたい台詞である。まず間違いなくあり得ないことだけども。
「それにしても……、この怪人はいったいどこから生まれてくるのでしょうか」
「あれ? チーカマから聞いていないの?」
「へ?」
「おかしいわね……? ワタシ達は魔法少女になった時に彼から説明されてたんだけど」
「……」
あ、の野郎ぉぉぉおおおお!!
ほ、ほほう! ほほうほう! おまっ! あの……ッ! あのボケぇ!? なんだっ! 差別か! 元が男には適当な説明でも良いってか!?
「た、ぶん私が魔法少女になったのは急だったので忘れてしまっていたのかと……」
「そうなんだぁ、でもちゃんと説明しないなんて駄目だよねぇ」
「まったくね。どうせしばらくしたら現れるでしょうしその時に聞いてみると良いわよ」
二人には無難な答えを返しておくとして、早く……、早く来いあのクソウサギ野郎……! 次会った時がてめぇの最後だ……!!
「申し訳ないんだけど、用事が残っているからワタシは先に帰らせてもらうわね。チーカマが来たら伝えておいて」
「はいはぁい」
「ぁ、分かりました!」
「ごめんね」
軽い様子で飛び跳ねればあっという間にスノウさんは見えなくなってしまう。
「アタシはチーカマが来るまで待っているけど、ミラクルはどうするぅ?」
「私も待ちます。さっきのこともありますし」
さぁ、来い……!
来た瞬間に攻撃魔法をぶち込んでやる……! どこかお気楽なシャインさんだけならうっかりとか言えばなんとでも誤魔化しは効く!!
「あれ? 電話……、チーカマからだぁ」
「へ?」
「もしもぉし! ちゃんと怪人は倒し、え? ああ、うんうん。ふんふん、それは大変だねぇ……! うん、分かった! ミラクルにも伝えておくねぇ」
なにやら雲行きが。
「なんかいまとっても忙しいらしくてこっちに来られないんだってぇ、悪いけど今日はここで解散しておいてって」
逃げたァァァ!!
あの野郎絶対に逃げた! いつもタイミング良く現れるんだ! 盗聴とか絶対しているはずだから俺に説明してないの思い出して逃げやがったあのウサギ野郎!!
「もしかして敵のことなにか分かったのかなぁ! それだったら良いよね!」
「そ、うですね……」
「どうしたの? 顔色悪いけ、もしかして風邪!?」
「い、いえ! 元気ですよ! ほら! ほら!」
「ほんと……?」
「ひゃ!?」
腕を振って元気さをアピールしていれば、シャインさんに腕を掴まれて……。
ちかッ! 顔……ッ! 顔が! 美少女の顔が目の前に! おぅふっ!? おっ、ひぎぃぃぃい!!
「う~ん、確かに熱はなさそうだけ……ミラクル!? ど、どうしたの!?」
「きょ」
「きょ?」
「今日は帰りますぅぅぅぅ!!」
「み、ミラクル!?」
無理ッ! 美少女が俺の額に額を当てて熱を測ってくれるなんてそんな最高のシチュエーションは経験値のない俺にはもう耐えられない! というか男だってバレた時に今日のことで何を言われるか分からないのがもう怖い! ていうか、そんなことばっかりで幸せだけどもう怖い!!
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