第10話
「どう思う?」
「何をかを言えよ」
授業でもなければあまり行くことがない音楽室。教室よりも狭いので掃除が楽かと思えば、小さなテーブルが付属している椅子は一箇所に固めておくことが出来ず少し移動させては掃除して、移動させては掃除してを繰り返さなければならずに意外と時間がかかる。
これは明日は手伝うの止めようかな……。
「デブだよ」
「デブ? デブがどうかしたか?」
昼休みに宣言していた通り、さっきまで俺と一緒に掃除を手伝っていた彼は用事があると帰って行った。
そのため音楽室には俺とチビの二人しか居ない。
「あいつさ、最近用事があるとか言ってどっか行くの多くないか?」
「あー……、言われて見れば確かにな」
先週……、先々週ぐらいからか? 確かに夕方になると用事があると言うようになったとは思う。けど。
「そもそも俺たち知り合ってまだ一ヶ月だぞ? 普通に考えて塾だとかバイトだとかあるんじゃねえの」
「それはまぁ、そうなんだけど」
うちの学校はバイトは特別な理由を除いて禁止されている。だが、学校の目を盗んでバイトしている生徒はそれなりに居る。実際家の近所のコンビニで二年の先輩がバイトしているのを俺は知っている。
「最初は入学してしばらくだったからその用事がなかったんじゃねえの?」
「そう考えたら面白みがさー」
「友だちのあれこれで面白さを求めるなよ。てか、そんなに気になるなら普通に明日聞いたら良いじゃねえか」
「メガネは浪漫が分からねえのか! メガネのくせに!」
「メガネに万能性を求めるな」
眼鏡をしていれば頭が良いだとか、眼鏡を外せばイケメンになるだとか、本気になる時は眼鏡を外すだとか、眼鏡を外せば目が3になるだとか。
なるわけねえだろ! あるのは外せば目つきが悪くなることと、ラーメン食べるときに真っ白になることくらいだよ!!
「それより、スマフォ鳴ってるぞ」
「お、悪い悪い」
マナーモードにしていれば学校は黙認してくれる。さすがに教師の前で使っていれば一発でアウトだけどな。
誰かからの電話に出たチビが部屋の隅っこでしばらく話し込んでいると……。
「悪い、ちょっと腹痛くなってきたからトイレにッ」
「あ? 大丈夫か?」
「大丈夫! 大丈夫! それと、あとはオレ一人でやっておくからメガネはもう帰っててくれ!」
「え、でもここまで来たら」
「良いから良いから! じゃあな!!」
「お、おぃ! ……なんだ、あいつ」
腹が痛いと言うわりにはすごいスピードで出て行った。……、漏れそうだったか? ともあれ。帰れと言われてもどうせあと少しだし……。
「とかなんとか思っている時に限ってよ……!」
震えるスマフォの画面に映し出されるのはウサギ野郎の文字。
取らないわけにはいかないが。
「出番だぽよ! キューティーミラクル!!」
こいつの声を聞くだけで苛立ちがマックスになっていく。
チビには悪いが、本人が言い出したことなので掃除は彼に任せて俺は鞄を引っつかみ人気のない所を探すために駆けだした。
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