第7話
「それは大変なんだね」
「大変なんだぽよ」
事の発端は、日本語を話す不思議なウサギチーカマくんが僕のもとへ現れたことから始まった。
「でも、僕は男だしこんな見た目だよ?」
「変身したら見た目はどうでも良くなるぽよ!」
聞けば、世界の平和を守るために魔法少女が必要にも拘わらず最近は魔法少女になってくれる子が激減しているとのこと。どこでも人手不足が、とニュースでは聞いていたけどまさか魔法少女業界でもそうだなんて。
話すウサギを見てしまえばそもそも魔法なんてあるのかよ、という普通な疑問が浮かぶことはなかった。というか、こんな展開いまを逃せば一生やってこないだろうし。
「喧嘩もしたことないよ?」
「魔法で肉体は強化されるぽよ! そもそも普通は女の子に頼むくらいなんだからその辺は大丈夫ぽよ!」
「それもそうか……」
躊躇していた理由が解決してしまえば断る理由を探すのが難しくなってしまう。なんといっても魔法少女だ。それも見た目がそのままならお断り案件だけど美少女になれるというでのあれば話は別。
むかしから僕は可愛いものに目がなかった。こんな見た目で恥ずかしいけれど可愛いものはなんでも大好きだった。自室だってぬいぐるみで溢れていてせっかく高校で出来た二人の友人を招くことも出来ないほどだ。
そんな僕が可愛いの象徴ともいえる魔法少女になれるなんて。危険は伴うだろうけど、それを跳ね除けるほどの魅力がそこにはあった。
「それじゃぁ……、あ、僕一人で戦うことになるのかな?」
「いまはそうぽよ。でも出来るだけはやく他の仲間を探してきてあげるぽよ!」
「それも男の人……?」
僕が魔法少女になれるのは童貞をこじらせる可能性が大きいから。悲しいけれどまさしくその通りすぎて反論も出来ない。
自分を棚に置いて言うけれど魔法少女が全員童貞をこじらせた男だと……、その、ね?
「安心するぽよ! まず一人が居れば親御さんの説得も簡単になるから次からはちゃんと女の子を誘うぽよ!」
「あー、確かに自分の娘が最初だとちょっとハードル上がるよね」
そういう意味ならいきなり最初の魔法少女を男から選ぶ理由も分からなくは……、ないかな。これがテレビで放映とかされていればブーイングは避けられないだろうけど。
「よし。乗りかかった船だからね。僕なんかで良ければチーカマくんの手伝いをするよ」
「ありがとうぽよ! 君はとってもチョ……うカッコイイぽよ!!」
「あ、あはは……。そんなこと言われたのは初めてだよ」
本音を言えば抵抗がないわけでもないけれど、その抵抗よりも可愛いになれる魅力は大いに高い。それに僕みたいな奴が世界を守れるなんてそれも含めて魅力的だ。
「変身するには――」
こうして僕は魔法少女キューティーシャインになった。
まさかただのデブだった僕がスタイル抜群の金髪お嬢様系美少女になれるなんて思ってもいなかった。良くて見られて問題ない程度の見た目になると思っていたのでこれはとても嬉しい誤算だ。
手に入れた力が援護系だと知った時は焦ったけれど、すぐにチーカマくんは約束通りキューティースノウを連れてきてくれた。
彼女も遠距離系で直接戦闘は得意でないにしても、二人いれば戦い方にも幅が生まれる。ちょっとだけとっつきにくいかな、と思った性格も数回会った頃にはまるでいつも一緒に居る友人のように仲良くもなれた。
そして可愛いオブ可愛いのキューティーミラクルの参戦! 年下の子が入ってくるなんて最初は驚いたけれど、感情が抑えきれないほどに彼女は可愛いから何も問題はない!
この姿になっていると見た目が良い分自信がついてしまうのか大胆な行動に出てしまう。それはきっと僕の正体がバレてしまえば彼女たちを不快にさせてしまうことだから。
絶対に。
バレるわけにはいかない!!
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