第3話
「完璧だぽよ……、完璧なんだぽよ」
「……」
「これで晴れて君もヒーローの仲間入りなんだぽよ! まずは君に宿った力の説明を」
「なぁ」
「なんだぽよ」
「……なにこれ」
「なにがぽよ?」
変身した俺の武器はステッキだった。それは良い。ステッキだって素敵じゃないか。どこかで棒術は攻守に優れた格闘技だと聞いたことがあるからな。
俺の持っているステッキは長さが30㎝程度で先端がハートマークになっているけど。
変身した俺の衣装はただの布だった。それも良い。最近じゃどう見ても普通の服にしか見えない、けど強い。なんて設定はどこにでもあるからな。
俺の衣装はふりふりスカートな今時のアイドルでも嫌煙しそうなものになっているけど。
変身した俺の見た目は女の子だった。それも良い。男が女に変身して戦う漫画だってそれなりにあるからな。
「ってなるとでも思ったかァ!?」
「どうしたんだぽよ」
「女じゃねえか!? 女の子じゃん! 女の子になってんじゃん! なにこれ? え。なにこれ!?」
「メタモルフォーゼぽよ」
「ヒーローって言ったよな? お前さっきヒーローって言ったよな!?」
「魔法少女も立派なヒーローだぽよ」
「終わった!! 魔法少女って言いやがったな!? はっきり明言しやがったなお前! おまっ、おっまっ!?」
ふわふわなミディアムな髪型なのはまだ良いよ! 髪色ピンクってどうなってんだよ! ピンクって人間が普通になれる色じゃないだろもうこれ!!
背だって高い方じゃなかったけど、もうこれめっちゃちっこいよね!? なんとなくだけど小学生から中学生くらいのノリだよね!? これ!!
男が……っ!
それもイケメンでもなんでもねえ、はっきり言ってモブな男が! せめてブサイクとかならキャラも立っているだろうに、ただのモブな俺が魔法少女とか。
「誰得だよ!?」
「これには深い訳があるんだぽよ」
今になって思えば語尾がぽよぽよ言い出している奴が普通のヒーローの相棒なわけないよな! 確かに魔法少女チックな相棒だよな! 普通のヒーローの相模が何かは知らねえけどな!!
「最近は魔法少女になれる女の子が減少しているんだぽよ」
「え?」
それはまさか、敵が先に手を打って魔法少女になる前に殺しているとか……? それとも夢を見る子が少なくなって……、とかな魔法処女的理由?
「コンプライアンス的に」
「コンプライアンス」
なんか違うぞ。
「自分の娘が危険な目に会うのが嫌だって親御さんが増えているんだぽよ」
「親御さん」
「ほら。未成年を働かせるわけだから親御さんの許可は必要ぽよ?」
なるほど。
確かに何歳まで魔法少女になれるかは知らないが、確実にそれは未成年だろう。だって少女だし。
ということは未成年を働かせるわけだから両親の許可は、ちょっと待とうか。
「俺の両親は許可出したってこと!?」
何考えてんだ、あの二人!?
いくらなんでも自分の息子が魔法少女になる許可出すとか頭おかしんじゃねえか!?
「出していないぽよよ?」
「うん?」
「そもそも君の両親には何も聞いていないぽよ」
「え? いや、話がおかしくねえか?」
「おかしくないぽよ。そもそも男である君がどうして魔法少女になれるのか。それは!」
「それは……?」
「君が童貞だからぽよ」
「シバき飛ばすぞてめぇ!!」
あと、今更だけどこの姿の俺の声めっちゃくちゃ可愛いな、おい!
「童貞のまま30歳になると魔法が使える話は知っているぽよ? つまり潜在的に男は魔法使いになれる資格があるんだぽよ。あと君は放っておけば魔法使いになれそうだから才能も他の男よりばっちりぽよ」
「うるっせぇな!! あとそれなら魔法少女じゃなくて魔法使いにしろよ! ハリーでポッチャーで良いじゃねえか!!」
「つまりは君の両親に許可を取らなくて良いのはそういうことだぽよ」
「……うん?」
ちょっと待て?
俺が魔法少女になれるのは、というか魔法が使えるようになる理由は癪だが分からないこともない。確かに俺はモテないからな。このままいけば30歳まで童貞だといううこともあるだろう。
だが、未成年であることは俺だってそうだ。危険な仕事をさせるのに親の許可が必要ないことの説明になっていないんじゃないか?
「……」
「……」
「童貞に守ってやる価値はねえ」
「そういうことかァァ!! あとてめぇ語尾はどうした語尾はッ!!」
「ぽよぉ?」
「ぽよぉ? じゃねえよ! 本当にねえよ! なんだその理由は! おぃぃい!」
「でも種の存続を考慮したときに童貞とかマジで価値少なくないぽよ?」
「ぐっ」
「それならモテる男に一夫多妻を認めてあげるほうが魅力的な子が生まれてくるぽよ」
「うぐっ」
「産業廃棄物になるだけの未来なんだから、魔法少女になって少しは役に立つんだぽよ」
「ちきしょぉぉぉおお!!」
何が一番悔しいって。
ちょっぴりそうだよな。と思ってしまったことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます