第2話
「行ったわよ、ミラクル!」
「任せて! 煌めくハート! 輝けドリーム! ミラクルキューティードリーマー!!」
「カッ! カラララァァァァァ!!」
大丈夫です。
ジャンルは変わっておりませんし、お話を間違えてアップしたわけでもありません。ん? 俺は何を言っているんだ?
街のドーナツ屋さんに取り憑いてあまぁいドーナツを一口で火を噴いてしまうほどの激辛味に変えてしまっていたカライスキーノは、俺が放ったミラクルキューティードリーマーで退治することが出来た。
大丈夫です。俺の頭は正常です。
「すごいわミラクル! やっぱり貴女が居てくれると安心ね!」
「シャインが的確に誘導してくたんぶっ!?」
ドーナツなんて目じゃいほどの甘い香りが俺を包み込む。と同時に息が……ッ! 息がッ!?
「シャイン、シャイン……。ミラクルが呼吸困難で倒れる前に離してあげなよ」
「きゃぁ!? ミ、ミラクル大丈夫!?」
「な、なんとか……、ありがと、スノウ……」
「ん」
冬の朝の布団の数倍は包容力のある柔らかさ。苦しかったけれどあの柔らかさに包まれるのであればあの程度どうってことはない。
カライスキーノがキラキラと光へと還っていくなかで、俺は目の前に居る二人の少女に目を奪われていた。
「どうしたの?」
「べ、別に!?」
二人ともが現実に存在して良いのかと思えるほどに美少女である。
光を反射して輝く美しい金髪と大きすぎるお胸が魅力的なほんわか系美少女キューティーシャインと、雪山を彷彿させる銀髪をポニーテールに纏めたクール系美少女のキューティースノウ。
そんな二人が着こなしているのは、ふりふりレース満載な衣装。
そう、俺たち三人は魔法少女なのである!
大丈夫です。俺の頭は正常です。
俺たち三人。
つまりは俺も魔法少女なのであるが。分かる。分かるぞ、気持ち悪いよな。吐きたくなるよな。でも待って欲しい。特徴のない冴えない男がふりふり衣装を着ているのではないんだ。
今の俺は……。
※※※
「おいらと契約してヒーローになってほしんだぽよ!」
「……」
疲れているんだ。
明日の小テストに向けてちょっとだけ頑張って勉強なんかしていたせいで、遅くまで勉強なんかしていたせいで、そのせいで幻覚を見ているんだ。
やはり人間何事もほどほどが良いんだ。ああ、そうだ。
「聞いているぽよ?」
気分転換に窓を開けたら日本語を話すウサギが飛び込んでくるなんて、そんな馬鹿な話があるはずがないじゃないか。
もう寝よう。明日のテストはもう充分だ。幻覚が見えるほど勉強したんだからきっとだいじょ
「ごはッ!?」
「聞いているぽよ?」
こ、この野郎!! いきなりボディーブローだァ!?
「なにしやがる!!」
「話を聞かないほうが悪いんだよぽよ。そんなことよりヒーローに興味はないぽよ?」
「待て、落ち着け俺……。これは幻覚。幻覚の相手をするとかそれこそ馬鹿のやること……」
「話を聞かないなら次は二連撃だぽよ」
「とりあえず話してくれ」
あれを二連続は死ぬ。
「実はこの世界はみんなが知らないだけで日々色んな危機を迎えているんだぽよ! 君には才能があるぽよ! みんなを守るヒーローになってほしいんだぽよ!!」
「……ヒーロー?」
「そうぽよ」
「リァリィ?」
「勿論だぽよ!」
「お。……ぉぉぉおおおお!!」
キターーッ!!
キタキタキタキタァァァ!! キタよ! これ来たよ! これ!!
漫画みたいなことなんか起きるはずがないと思っていたか? 残念だったな! 起こる時には起こるんだ! 聞いた? 才能があるって! 才能があるとか言われちゃったよ! お母様!! 産んでくれてありがとう! 才能を持って産んでくれてありがとうママン!!
「危険は伴うぽよ……。でも」
「勿論だ! 俺にしか出来ないことなんだよな!」
「そうなんだぽよ!」
「やるよ! 俺! ヒーローになるよ!!」
「ありがとうぽよ! 君ならそう言ってくれると信じていたぽよ!!」
「どうしたら良いんだ!」
「まずは早速変身だぽよ!」
変身!
くぅぅぅ! あれか! ライダー系か! いいぞ! ライダー系なら顔も隠れるからちょっと自信がない俺でもやれる! カッコ良く決めてやるぜ、必殺の飛び蹴りを!!
「メタモルフォーゼ、と叫ぶぽよ!」
「任せろ! メタモルフォーゼ!!」
愚かな俺が誰かに伝えることがあるとすれば、それは一時の感情に身を任せるなということだろう。
ちょっと面白そうだとか、
ちょっと非現実を楽しみたいとか、
他人とは違う何かが欲しいとか、
そういうのはな……。駄目なんだよ。
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