天罰! セフィロトの樹!

 カガリから電話が来た。

 運転中のオレにも分かるように、通話はオープンにしてもらう。


「榎本鏡華くんが、どうして海蛇座銀河団に追われていたか分かったよ」


 鏡花のいた企業団体は、人為的にセフィロトの樹を作れないかという実験を、かなり昔からやっていたらしい。


 ただし、そのどれも失敗してる。やっぱりバリンジャークラスでないと、情報爆発って起こらないらしい。



「鏡華君の星は宗教色の強い星らしい。自分たちの行いは神に許されていのだと信じて疑っていない。逆に、鏡華君はあんな性格だから、地球の人々に危害を加えたくなかった」


「それでは、鏡華が地球に来た理由って」


「内部告発だよ」


 でも、銀河警察へ向かう途中、海蛇団に目を付けられてしまった。宇宙船は撃ち落とされて、地球での生活を余儀なくされた。そのすぐ後に、海蛇団が鏡華を追ってきた。


 海蛇団を雇った奴らは、銀河警察によって全て逮捕されたらしい。それで分かったのだ。今、海蛇団と大帝を一網打尽にする為、大部隊が地球に向かっているという。


「どうして、もっと早く言ってくれなかったの?」


「言おうとしただろけど、海蛇団に狙われているから、巻き込みたくなかったのかも」


「バカよ、あの娘は! とっくに巻き込まれてるんだから、もっと頼ってくれたっていいじゃない!」


「友達だから、巻き添えにしたくなかったんじゃ」

「だったら余計に頼ってよ!」


 優月の怒りは収まらない。

 鏡華に対してではなかった。力になれない自分に怒っているのだろう。


「亡命の手続きはこっちでしておく。鏡華君は名実共に地球人として暮らせるようにするよ。どのみち鏡華君は二度と母星には帰れないからね」


「どういうことよ?」


「もう、鏡華君の母星はないんだ」


 鏡華の内部告発を妨害しようとしていた奴らは、証拠不十分で不起訴となった。鏡華の本当の両親を事故に見せかけて殺害した容疑まで掛かっていたのに、だ。




「蟻の巣に水を流し込んだだけなのに、なんで裁かれなければならないわけ?」


 取調中、奴らはそんな事を抜かした。


 奴らは、地球人を下等生物としか見ていない。


 彼らにとって世界の書き換えは実験に過ぎず、単なる作業。

 

 地球に与えた被害など、夏休みの絵日記程度の出来事でしかない。


 それは、母星の連中も同じだった。

 母星の奴らにとっては、鏡華と鏡華の両親だけが悪者で、自分たちの主張こそ正当なのだと。



 奴らを乗せた宇宙船が母星へと降りていく。


 カガリは、見ているしかなかったらしい。


 その時だ。どこからともなく、隕石が落ちてきたのは。



 突如現れた隕石は、黒幕を乗せた宇宙船を、軽々と押し潰す。そのまま、速度を上げて、奴らの母星へと激突したのだ。



 光と熱が、奴らの星を包む。



 カガリは宇宙に、セフィロトの樹を見たという。


「虎徹、これって奇跡なのかしら?」


「違うな。おそらく天罰ってヤツだぜ」



 話を聞きながら、オレはある物語を思い出す。

 

 神に近づこうとして、神の怒りを買った塔の話だ。神をマネして世界を作り替えようとした奴らに、天罰が下ったのだろう。




 カガリによると、この星が再び人が住めるようになるまで、あと三万年はかかるらしい。

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