第11話 伝えたい事と未来

「菜々に呼び出されるの、珍しいな」

「ああ、うん……ちょっと、話したいことがあって」

 雅人まさとと一緒に来たのは近所にある大きな公園だ。

「どうした?」

 少しだけ目を合わせるのも、恥ずかしくなってしまう。

 意識しちゃって、上手く話すことができなかった。

「あのさ。この前の……返事だけどね」

 それを切り出したとき、雅人も顔を赤くしている。

「うん……ごめん。いきなりだったし、忘れてくれ」

 そんなことはないのに。

 しっかり言わないといけない、勇気を振り絞って言うことにした。

「雅人のこと、好きだよ」

 ようやく言えた気がした。

 それと同時に顔が熱くなる。

 恥ずかしくて下を向いていた。

 全然顔とか見えていなかった。

「え、マジで? 無理に言わなくても」

 雅人がいった言葉にはすぐに反論した。

「無理してない! 雅人のことを考えたら、どんどん好きだってことがわかってきて」

 雅人がわたしの手を握っている。

 心臓の鼓動が速まっていく。

「この気持ちが雅人と同じ好きなの」

 顔を上げると、雅人が顔を赤くしていた。

「菜々。呼び出しって、この事を言いたかったの?」

「うん。早く言いたかったの、でもなかなか言えなくて」

 雅人がフッと笑って、わたしのことを見つめている。

 それは見たことがない表情で、大人っぽく見えてしまう。

 わたしは少しだけ笑っていた。

 雅人はまた話しかけてきた。

「菜々、俺とつきあってください」

 わたしはびっくりしてしまった。

 また心臓がドキドキと波打っている。

「えっ! 雅人、早くない?」

「早くないよ。逆に遅いくらい、タイミングがなかったし」

 それを聞いて、思わず笑ってしまった。

 いつもの雅人が好き。

 これからも一緒にいたい。

「うん。よろしくお願いします、雅人」




 家に帰る途中。

 手を繋いで歩いていたけど、あんまり慣れない。

「それと進路と両親との仲は?」

 雅人が心配していたことを話すことにした。

 あのあと、家族との仲はだんだんと戻りつつあって、進路のことは自分の行きたい大学に賛成してくれた。

「どこ? 大学は」

「藤池大学家政学部の現代デザイン学科。被服の専攻をしようと思ってる」

 その話をしたとき、びっくりしていた。

「え? 藤池大学の家政学部ってこの辺のキャンパスだよな」

「うん。そうだよ」

「俺の志望してる文学部のあるキャンパスと同じだ……菜々と」

 わたしはびっくりしてしまった。

 いつの間にか同じ大学を志望していたことを知らなかったから。

「菜々。大学、もしかしたら一緒に行けるかもな?」

 雅人に言われたとき、とても楽しくなってきた。

「今度は合格して一緒に行きたいな~」

 高校受験のとき、ほんとは雅人と同じ高校を第一志望にしていた。

 その頃から無意識で雅人と一緒にいたいって思っていたみたい。

「あとね、修学旅行のことなんだけど」

「え? 中止になったって、嘆いていた」

 わたしはスマホで写真を見せた。

「マジで……三年生の二月に行くの!?」

 スマホの画面にはプリントの文章。

 そのプリントには来年の二月に二泊三日で、沖縄への修学旅行を計画しているということを示していた。

「だから、大学受験を年内に終わらせたいの!」

 雅人はため息をついてる。

「推薦入試……がんばれ。もう目標決めたのかよ?」

 わたしたちは家に帰った。

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