第10話 恋と新しい変化

「そう言えばさ、菜々ちゃんって好きな子とかいないの?」

「ちょっと、望悠みゆちゃん!?」

 望悠ちゃんがいきなりその話を聞いてきた。

「え~。もうそろそろいても良いんじゃない?」

「それはこっちのセリフだよ?」

 望悠ちゃんこそ三十歳になるんだし……なんてことは言わなかったけど。

「え~……言わなきゃ、ダメ?」

 缶ビールを飲みながら、うなずくのを見えた。

「いいけど……幼なじみの雅人って言うんだけどね。中学卒業まで一緒でさ。この前、告白されて」

「うわぁ……青春してんなぁ~、で? 返事とかは?」

 望悠ちゃんはビールを一缶、飲み終わっていてもうほろ酔いみたいだ。

 夕飯を食べ終わって、リビングに布団を持ってきてから、その話をしていた。

「……ちょっと、待っててって言った」

「え! なんで?」

 わたしは敷き布団を抱きしめている。

「だって。好きかわからないんだ。一緒にいて安心するし、その……」

 なかなか言いかえることが難しい。

 ずっと黙ってしまう。

 難しいな、望悠ちゃんにわかりやすく話すのは。

 そのときだ。

 わたしのスマホにLINE通話の着信音な聞こえてきた。

「え! ちょっと、雅人から?」

 望悠ちゃんの方を向くと、ゴーサインが出ちゃってるし!

「も、もしもし? 雅人……?」

『菜々、お前。家出してるのか?』

 電話越しの声はいつもよりも尖っている。

 やっぱり怒ってるな。

 それよりは今日はわからないけど、変に意識してしまうことがある。

「ごめん、雅人の所に、連絡が行っちゃってるよね?」

『え。うん……俺は母さんから聞いただけだし。LINEにメッセージ送っても既読すら、つかねーし……心配したぞ』

「ごめん。叔母さんの家にいてね、明日には帰るつもりでいる」

 雅人と話していると、心につっかえている何かがなくなる。

『じゃあ、またな。これからはお互いに体に気を付けてろよ?』

「うん……ありがとう。遅くにごめんね」

「例の幼なじみ? でしょ?」

 望悠ちゃんが笑いながら話してくる。

 コクンとうなずくと、再び話し始めた。

「え~と。通話してるところを見たけど……菜々ちゃんも好きなんじゃない? 彼のこと」

 望悠ちゃんに言われて、心のなかにストンと収まった。

「そうだよね。言われて、スッキリした」



 寝る直前に家族のLINEグループをブロックを解除して、メッセージを見た。

 メッセージを打つと、母さんからメッセージが来た。望悠ちゃんにわたしが電話をしたあとに伝えていたのを、初めて知った。

 父さんと母さんは優しい感じでメッセージが来ているけど、少しだけ怖くなくなっていた。

「望悠ちゃん。ありがとう、母さんに伝えてくれて」

「いいの。その代わりに約束して、姉さんたちと進路をちゃんと話してよ? 自分の進路は自分のものだからね」

 そう言って望悠ちゃんは隣の布団に潜り込んだ。

 わたしはそのまま一緒に眠りに落ちた。




 翌朝、わたしは望悠ちゃんに送ってもらった。

 父さんと母さんにまず謝った。

 そのときに母さんも謝っていた。

「そんなに苦しんでたなんて……ごめんね。菜々、これからは自分の進路を応援するよ」

「母さん。ごめんなさい、ひどいことを行って」

美順みゆきと話し合ったよ。菜々、お前の人生を決めつけていたって気がついたよ、傷つけてすまなかった」

「大丈夫だよ。父さん」

 家族との接し方も少しずつ変化が起きてきた。

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