第38話 帰宅。お疲れ様のお手軽ペペロンチーノとカルボナーラ&ラムプリン 上

「たっだいまぁ~」

「21時前に着いたかー」


 一泊二日の小旅行を満喫し、俺達は東京へ帰着した。

 荷物は行きとほぼ同じ。

 灯台へ行った後、市場へ出向き散々買った魚の干物や、地元産のハム、ベーコン、ヨーグルト等々は殆ど俺と四月一日の実家へ送ってもらった。お金は便利を買う為に存在するのだ。


「つっかれたぁ~。たのしかったぁぁ~。そして――おなか、減ったぁぁぁ!」

「あ、こらっ!」


 靴を脱ぎ捨て、四月一日は叫びながら部屋の中へ。ソファーへ飛び込む音がした。

 ……ったく。

 注意しつつ、靴を直す。


「先に家へ帰れよー」

「やーだー。何か食べて、飲まないと、わたしは、もう、一歩も動かないからねっ!」

「……確かに腹は減ったな」


 靴を脱ぎ、手を洗って、リビングへ。

 早くも四月一日はソファ―に寝転びながら、テレビをつけ、寛ぎの構え。

 テーブルに土産が入っているビニール袋。椅子に鞄を引っ掛け、白猫のエプロンを手に取る。


「四月一日幸さんや」

「な~に~? 篠原雪継君~?」

「『働かざる者、食うべからず』」

「! くっ! そ、それは……小学生の時、読書感想文で読んだ気がするやつっ!!」

「知ってるだろうが……篠原家はそれを信奉している。まず、手を洗えっ! その後、風呂掃除っ!!」

「報酬は!」

「お手軽ペペロンチーノ&カルボナーラ」

「もう一声!」


 大エース様は上半身を起こし、挙手。ふむ。

 少し考え、土産の中身を確認。

 そこには、特産品を集めていた道の駅風な店で買ったブランド玉子あり。

 戸棚なから、白猫と黒猫が描かれた中くらいのマグカップを二つ取り出し、ぼそり、と呟く。


「――お手軽キャラメルプリン」

「はーい♪ 私、お風呂をピカピカにしてきまーす☆ あとあと、余り野菜でサラダとスープも作る?」

「頼む。なお、俺の料理自体は正味15分で終わる。そして、出来たら俺は即食べる」

「!?!! き、汚いっ! 流石、雪継、汚いっ!! あと、可愛くないっ!!!」

「先輩の教えなので」

「わたしはそんなこと、おしえてないぃぃ~。よっと」


 先輩様は軽くジャンプし、ソファーから降り、お風呂場へ「ペペロン~カルボ~♪ オマケにプリン~☆」……変な歌過ぎねぇか?

 呆れつつ、夕食の準備。

 まずは――


「時間が少しかかるプリンからか」


 二つのマグカップそれぞれに黒砂糖小匙二杯と水を小匙一を入れ、電子レンジへ。

 その間に、卵液作り。

 ブランド卵を二つボウルに割り、黒砂糖を大匙……


「カラメル付きだと、四杯はちょっと多いか?」


 加減し、四杯のところを三杯。かき混ぜ、かき混ぜ。

 その後、牛乳を入れ、バニラエッセンスも少し。再びかき混ぜ、かき混ぜ。

 電子レンジが呼んだので、マグカップを取り出す。

 良い感じにカラメルになっている。いい香りだ

 袖を捲った四月一日が顔を出した。

 

「! 甘い匂いがする!!」

「もうプリン出来るぞ。そしたら、すぐスパゲッティを作るからな?」

「!? は、早過ぎないっ!」

「急げ。働け。俺は腹が減った」

「急ぐ。働く。私も腹が減った――……はっ! 雪継、ビール! お土産の銚子ビール、冷やしておいてっ!!」

「お、そうだな」


 マグカップの内側にバターを塗り、茶こしでプリン液を濾しながら注ぎつつ答える。そのまま、再び電子レンジへ。これで、プリンは完成。

 大半は送ってもらったものの、今晩飲む為に持ち帰った土産の銚子ビールを濡らし、緊急措置。冷凍庫へ。凍る前に作らねば。

 食器入れから耐熱容器を取り出し、その中に折った細目スパゲッティを入れ、オリーブオイルをかける。

 冷蔵庫から親父が作ったベーコン、玉ねぎ、にんにく、トマト。棚から瓶に入った鷹の爪を二本を取り出す。

 なお、玉ねぎ、にんにく、鷹の爪はうちで作ったものである。

 ……あの人は何を目指して?

 疑問に思いつつも、ベーコンはちょっと大きめ。ニンニクは普段通り刻む。玉ねぎもさっさと切っておく。

 耐熱容器へベーコン、ニンニク、コンソメ、水を入れ、仕込みが終了。

 小さめのボウルに卵を割り、パルメザンチーズをたっぷり。だまがなくなるまで、延々と混ぜる。

 その間に、電子レンジが再び呼んだ。

 中のプリン二つを確認。


「ん――こんなもんかな?」


 独白しながら取り出し、ラップをしてこれまた冷凍庫へ。粗熱を取る。

 交換で耐熱容器を投入。

 カルボナーラはほぼ完了したので、ペペロンチーノに取り掛かる。

 小さめなフライパンにオリーブオイルをひき、ニンニクを投入。

 ――いい匂いがしてきた。


「くんくん……くんくん……。いい匂いがする~」

「まずスープ作れ。玉ねぎとトマトは切っといた。玉ねぎはこっちで半分使う」

「りょーかいっ! ありがと。……えへへ♪」


 黒猫のエプロンを身に着け、四月一日が隣に立った。

 小鍋を取り出し、オリーブオイルを少し。玉ねぎを入れ、少しの塩。これをすると飴色になり易くなるのだ。

 四月一日が楽しそうに聞いてきた。


「コンソメスープでいいよね??」

「それ以外は面倒だ。今から、コーンスープを作るのものなぁ」


 鷹の爪の種を捨て、フライパンへそのまま二本入れ、続けて残りの玉ねぎも投入。炒めつつ、電子レンジへ耐熱容器を投入。

 大エース様も小鍋にトマトを入れた。指示を出す。


「四月一日幸さんや」

「ん~? なに~??」

「此処は俺がやるから、お前はカルボナーラの仕上げを」

「え? やだけど?」

「……おい」

「私は、料理が出来る男の子って、とってもとっても、と~っても、いいと思う!」

「…………」


 満面の笑みである。こんなの反則だろうが!

 ……電子レンジが鳴り終えるまでに、ペペロンチーノを仕上げればいける、か。

 俺は四月一日の視線を感じながら時間計算をし、フライパンへ水を注いだ。

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