ローズの本性
ローズ置き去り作戦について話し終えた後、俺の呪いや現状についての報告もした。寿命が早くてあと数年と言うと、
「貴方が死んだら私も死にます」
と病んだ事を言ってきた。何とか撤回させたが……目はまだ死ぬ気満々だった。俺が死ぬ前にコイツもどうにかしておかないとな……。好きな相手でもできれば生きようと思うかな?
要件も済み、ルビアの秘書がいっぱいいっぱいな顔をして部屋を訪れたのでそこで解散した。しばらく部屋で休み、その後ルビアの秘書からいくつかのアイテムを受け取り部屋でくつろいでいると夜になりローズが帰ってきた。
「お楽しみ、でしたか?」
「ああ、楽しい時間だったな」
下手に誤魔化すと感づかれるのでそういう事にしておいた。
「ここにこんなに魅力的な女性がいるのにな~。う~ん、こんなにアピールしていたのになぁ? 私、好みじゃありませんでしたか?」
「いや、エロくていい女だと思うぞ」
「その言葉、普通の女性に言うと怒られますからね? ちなみに私には褒め言葉です!」
エロいって言われて嬉しいのか? 深くは考えないでおこう。
「まあ、酒でも飲むか?」
そう行って睡眠薬入りのグラスに酒を注ぐ。
「まあ、ありがとうございます! 勇者様もどうぞどうぞ!」
「ああ、頂こう」
そう言って乾杯を交わし、酒を飲み交わした。もうしばらくもすると眠りに落ちるだろう。そうしたら縛って馬車でエルフの里だ!
「ねえ、勇者様って格好いいですよね~」
「そうだろう?」
「はい~こんなに筋肉もあって、顔も格好良くて……最高です! チュ~しちゃいます! チュ~!」
ペタペタ体や顔を触っていたと思ったらチュッチュしてくるローズ。おかしい、何故だ? もう二時間も経っているのに一向に眠り気配がない。あの薬欠陥だったのか?
「あれ~勇者様、グラス空ですよ~さもう一杯!」
「お前も空だな。お前も飲め」
しょうがない。酒で寝落ちさせるか……。だが、俺も相当やばいぞ。酒飲みすぎだし、ローズエロいし、我慢できない……いや頑張れ俺! 帰ったらイーナが待っている! あ、でもエルフの里行って帰ってくるとなるとしばらく会えないのか。
「ん~? どうしたんですか勇者様? 私の胸見ちゃって、エッチ……なんて!」
そう言って自分で服をめくるローズ。駄目、もう無理だ。なんでコイツこんなにエロいんだ!
「勇者様? これは浮気ではありませんよ? ただ、性欲処理のお手伝いをしているだけです……さ、正直になりましょう?」
……そう、これは浮気ではない。コイツを置き去るための作戦、そういう事にしよう。という訳で体を重ねた俺とローズ。
「ふふ、これでアナタも私のもの……!」
そう言ったローズが印象的だったがそれどころではなかった。途中、
『な、何で!? いいから私の言うことを聞きなさい!』
と何やら言っていたが黙らせた。そしてお互いいつの間にか眠りについた。
夜中こっそりと起き、寝ているローズを魔法のロープでベッドに縛り付けた。
魔法のロープは一日相手を完全に拘束するマジックアイテムで力を入れづらい縛り方をするため、並大抵の人間では脱出不可、と言われている。その後馬車を操りエルフの里に向かった。
「……何かお土産、イーナに買ってやるかな」
目的のためとは言えやっちゃたからな……。良い、と言われていてもやっぱりな。そして長い間馬車を走らせエルフの里に一番近い平原に到着する。
「ここからは徒歩か……」
「へぇ、勇者様ったらキャンプでもしに来たのかしら」
何!? 声のした方を向くと馬車の下からローズが転がって現れた。馬鹿な……。
「貴様、どうやって!」
「私の職業柄毒の類は効かないのよ。それに縛ったり縛られたりも私、得意なの」
全部無駄だったのか……。驚きを隠しきれない俺に微笑むローズ。先程までとは口調が違う。こちらが素なのか。どうする……殺すか? まだここがエルフの里とバレたわけではないだろうが、俺がここに来たということで何かある、と思うだろう。そしてここを徹底的に捜索されたら不味いかも知れない……。殺すのが一番か、だが。
俺が思案しているとローズが微笑みながら、
「ねえ、何を隠しているの?」
「言うわけ無いだろう?」
全く、意味のない質問をしないでくれ。そう思っているとますますテンションの上がるローズ。なんなんだ?
「私と体を重ねて虜にならなかった者は過去いなかったわ。そもそも重ねなくてもある程度、男は私の虜のはずなのに」
「いや? お前の体最高だったぞ? 自分で言うのもアレだけど結構虜になっていたと思うが」
「ふふっ、でもアナタの心の中にいる大事な人は塗り替えられていないでしょう? 普通の男は体を重ねたら私の操り人形になるのにアナタはなっていない。それが悔しくて嬉しいのよ」
そう言って近づいていくるローズ。
「いつかアナタを私のモノにしてあげる。それまでアナタに付きまとわせてもらうわ」
何かヤバい奴に目をつけられたかも知れない……が、その言い方だと、
「ボルツ国は良いのか?」
「そんなのよりも面白い人を見つけたからね」
そう言って舌なめずりをするローズ。一々エロい。まあとにかく、信頼はできないが信用はできそうだ。一応ティタに会ったらいつでも逃げ出せるように準備はしておけ、と言っておこう。
そういう訳でローズを無視して森の奥に向かい始めると、
「ちょっと、ここまで言ったのに無視!?」
そう言って追いかけてきた。
「ところで口調、というかキャラが違うようだが」
「男受けすると思って変えていたのよ。そ・れ・と・も、勇者様は以前のほうがよろしかったでしょうか?」
「いや、どっちも魅力的だから迷うな」
素直にそう言うと若干動揺している様子のローズ。
「アナタ、変わっているわね」
「お前よりは数倍マトモだ」
そんな言葉をかわしながら奥に奥にと進んでいく。
「で、何があるのかしら?」
「誰かにバラしたら殺すが……?」
「出来ないでしょうけど信用してほしいわ」
「エルフの里だ」
そう言うと驚愕の顔でこちらを見てくるローズ。
「そんな事、私に言ってよかったの?」
「おいおい、お前が信用しろと言ったんだろ? 言葉には責任を持てよ」
そう言うと何故か照れた様子のローズ。意外と単純で純情だな。いや体は純情ではないか。
そして結界の近くまでやって来てとある問題に当たる。
「入り方がわかんねえ」
「ちょっと」
しょうがないじゃないか。前はリアンが何か言っていたから入れたのだが、忘れてしまった。とりあえず適当に言ってみるか。
「勇者フユキが命ずる! 森よ開け!」
「……何も起きないわよ?」
凄い恥ずかしい。だがここで帰るわけにはいかない!
「おーい! ティタ! リアン! フルル! 俺だ、フユキだ! 開けろ!」
「まるで長年家を空けていた亭主ね」
ちょっと黙っていてくれないか。俺もそうだと思ったけど。しばらく叫んでいると何処からともなく一人のエルフが現れた。
「あ、フユさん! お久しぶりです!」
「ようリアン。お供無しなんてちょっと不用心じゃないか?」
「どの口が言うのよ」
「わ、フユさんこの女性は?」
不味い、ルビアの時の再現が起きてしまう!
「俺の仲間でローズと言う」
焦って俺がそう言うと、
「はじめましてエルフの方。私は勇者様の仲間でローズと申します」
若干嬉しそうにそう挨拶するローズ。仲間、というワードがそんなに嬉しかったのだろうか。
「わあ、仲間! 素敵ですね。私はエルフの王女、リアンです! よろしくお願いしますね!」
王女様? という目でリアンを見るローズ。気持ちは分かる。
「ところでリアン、エルフの里に用があるんだが入ってもいいだろうか?」
「もちろんフユさんなら大歓迎ですよ!」
そう言って以前と同じ呪文を唱えて開かれる道。
「さあさあ! こちらですよー!」
「エルフの王女と知り合いなんて意外と隅に置けないのね、勇者様?」
「悪いがやましい事は何もない」
軽口を交わして以前お世話になった里に再び帰ってきた。呪い、どうにかなるといいな。
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