幼馴染襲来

73.再会の日

 もうすぐ夏休みだ。毎日暑すぎるのは勘弁だけど夏休みは楽しみだ。紗由奈と付き合いだして初めての夏休み。どこに行こうか。


 でもその前にレポートを出さないといけない講義もある。

 避暑も兼ねて図書館で資料探して、そのまま個人ブースでレポート作成だ。


『そっちどう?』

『まぁまぁかな。紗由奈は?』

『もうちょっとって感じ』


 時々やり取りするメッセージにニヤけてしまう。彼女と楽しい夏休みを過ごすためにもレポートを早く仕上げてしまわないと。

 そんなふうに考えて、また参考資料に視線を戻そうとした時。


「智也くん!」


 図書館だからか小さくて、でも驚きで勢いを殺しきれてない声が耳に飛び込んできた。

 僕を智也くんって呼ぶ人なんてこの大学にはいないはず。

 もしかして別のトモヤって人にかけられたのかもしれないと思いながら声の方を見ると、女の子が僕の斜め後ろに立っていた。


 僕を見て、すごく嬉しそうにしてるその女性ひとに見覚えはない。同じゼミでもないし、ゼミ友の友達とかでもない。


「えっと、ごめん、誰?」


 尋ねると彼女はあからさまにがっかりした顔になる。表情豊かだな。


「わたしだよ、マミだよ」


 マミ? 知り合いでマミって子は……。

 あっ、いたっ!

 幼稚園から小学校低学年の時によく遊んでた子だ。一応幼馴染ってことになるのか。

 それ以降、高校までも一緒の学校だったし、グループ内の仲間みたいな感じでそれなりに交流はあったけど別に付き合ってたわけじゃない。


 大学は確か地元だったはず。なんでここにいるんだ?


「山下真美さんだよね」

「思い出してくれたんだ! 嬉しい! 最高の再会だわ」


 山下さんの声が大きくなったから、思わずしーっと人差し指を立てた。


 周りの人がこっち見てる。

 山下さんも気づいて、恥ずかしそうに「ごめんなさい」って縮こまった。


「それで、どうしてここに?」


 聞きながら、嫌な予感しかしなかった。

 だって、山下さんの記憶を引っ張り出す時に僕は思い出してしまったんだ。


 幼稚園児の他愛ない、けれど結構な人が経験してる(かもしれない)、あの約束を。

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