64.視線の先
僕が水瀬さんをもてあそんだってデマを流したのは誰か。竹中なのか、それとも本当に竹中が匿ってる誰かなのか。
その答えが竹中の口から語られた。
「二人が喫茶店で密会してたところを写真に撮ったのは、俺なんだ。俺はあの二人がデートしてたって話しただけなんだけど、なんか変にウワサが広まっちゃってさ」
竹中がへらっと笑った。
彼が言うには、いくら人によってゆがめられたとはいってもウワサの出所が自分だって特定されたら厄介ごとに巻き込まれるかもしれないからどうしようかって思ってた、と。
でもこれは嘘だなきっと。
「竹中くんに話を聞いたって人も『新庄くんが女の子をもてあそんだらしいって聞いた』って話だったけど?」
また沈黙。
「ねぇ、隠し事はなしにしようよ。わたしは誰にも言わないから」
今にも顔がくっつきそうな距離だ。またぐっと熱い感情が湧き上がってくるけどここで台無しにはできない。
竹中は周りを見る余裕もないのか、軽く目を見開いて赤城さんを見つめてる。
すごく見つめあってる。
そして。
「判った。話すよ。あれは俺がやったんだ」
言質ゲット!!
松本を見るとボイスレコーダーを片手にニンマリしてる。
ここに綺麗に入ってなくても、赤城さんも持ってるけどね。
「そうだったんだ。どうして?」
「あいつ、ヘタレなくせに格好つけてうざったいんだよ」
心底嫌そうな声だ。
嫌われてるのは知ってたけど直接悪口を聞くのって、こたえるな。
僕をののしる言葉が竹中の口からポンポン出てくる。
数回会っただけのヤツになんでここまで言われないといけないのか。結構ショックだ。
「でもあいつも自分から戦線離脱なんて、俺ラッキー」
僕を落としたことで満足したのか、竹口は大胆にも赤城さんに面と向かって言った。
「改めて言うけど、俺、赤城さんのこと好きなんだよ。付き合ってくれないかな」
ここで
赤城さんどうするんだろう。
僕達の視線の先の赤城さんは、にっこりと微笑んだ。
あ、この笑顔は……。
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