19.期限は5日

 五日以内に赤城さんに告白しないと、竹中が赤城さん狙いで動く。

 厄介なことになったなぁ。


「結局、どうするんだ?」

 松本が心配そうに聞いてくる。


「どうもこうも……」

 僕はそこから言葉を続けられない。


「ゴメンな。まさか竹中があんなこと言うなんて思わなかった。あんな挑発的なあいつ、初めて見た」


 だろうな。でなけりゃ一緒にカラオケに行ったりしない。


「告白したことにしておくのは? 口裏合わせるからさ」

「いや、それは逆にマズいだろ。赤城さんに確認されたらどうするんだよ」

「そっか……」


 大学の学食で二人だけどんよりしてしまった。


 そこへ。


「あれ、新庄くんと松本くん。どうしちゃったの? まるでお葬式帰りの人みたくチンツーな顔して」


 赤城さんがやってきた。ご本人の登場でかなりアセった。


「あー、いやー、ちょっとね」

「困りごとなら相談に乗るよ?」


 はい。実はあなたに好きですと告白するかどうしようか悩んでいるところです。

 なんて言えるかっ。


「詳しくは言わないけど、負ける可能性の高い勝負に無理矢理挑まされてるって感じで」


 実際、竹中と張り合ったって勝てる気はしないんだよなぁ。なんか、やることそつなさそうだし。


「あらら。でも勝負はふたを開けてみないと判らないって言うじゃない。戦う前から弱腰じゃチャンス逃しちゃうよ。ファイトォ」


 赤城さんは、拳をつくってボクシング選手みたいにパンチをびゅびゅっと打って見せた。速い。さすが極めちゃってる人だ。


「おおぉっ、赤城さん、かっこいい」


 松本がびっくりして拍手してる。そっか、赤城さんがすごく強い人だってことは、みんな知らないんだったな。


「ありがと。とにかく新庄くん、もっと元気だして、頑張ってね」


 うん、赤城さんに励まされて、なんか元気出てきた。

 赤城さんは、それじゃ、と手を振って行ってしまった。

 あぁ、やっぱいいわ赤城さん。


「なぁ、新庄。いっそのこと赤城さんにコクっちゃえば? うまくいくかもしれないぞ」


 彼女が行ってしまってから、松本がそっと小声で言う。


「俺が見た感じ、赤城さんもおまえのこと、なんとなく気にしてるように見えるんだよな。少なくとも即ゴメンナサイはないと思うんだ」


 マジで? それならその方向で考えてもいいけど。


 ……でもなぁ……。なんか引っかかるんだよ。


 とにかく期限は五日、いやもう四日か。どうするか、きちんと結論出さないと。




 五日間いろいろと考えた。どうするのが一番いいのか。

 今日、その答えを竹中のヤツにはっきりと言ってやる。

 ……ちょっと怖いけど。

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