第68話 機械島とは……

 

 「おっ、そのことだが……ハリー達から聞いた限り、かつてマシンナリーはサーディアス一帯の地の守護者だったというからそれ由来で決定ぽいぞ?」


 そういえばここへ向かう移動中にハリーが言いかけてたような?


 「ガガ……ウム、我ラハカツテ守護者ト呼バレテイタノタ……困ッテイル者ニ力ヲ貸シテイタラ、勝手ニ呼バレダシタノダガナ……」

 「そうそう、そんな話だったよねー」

 「だね」

 「ガガ……ダガソレモ遠イ、日ノ話ダ……地上トノ交流ガ、絶タレテ久シイ……今ドウ呼バレテイルカ……ソモソモ我等ノコトヲ知ッテ、イルノカ……」


 あー、そっかー。

 マシンナリーさん達と交流があった時代の人が語り継いだりしてない限り……少なくとも100年以上は経っているみたいだから守護者について知らないってこともありえるのかも……


 「……ん?地上って……」


 あれ?ハリーのその言い方って……それじゃあまるでここが……


 「……っ!地下にあるみたいじゃんっ!」

 「「……え?」」

 「ガガ……リリー、ソレハ間違イ、ダ……」


 ……ん?違うの?正解だと思ったのになー。


 「あのな、リリー。地下じゃなくて空だ、空」

 「リリー、2択だったのに惜しかったねー?」

 「いや、海の中とか入れたら選択肢はもっと増えるぞ?」

 「おおー、海の中の国とかありそう……早く見つけないと」

 「だな」


 え?2択だって?……わたし的には1択でしたけど、何か?


 「って、空……え?」

 「そうだ。この機械島アミュライトは空に浮かんでいるらしい」

 「ガガ……アル程度ナラ、移動モ可能ダゾ」

 「ええーっ!」


 なんと、島は島でも浮島の方だったのかー!そう言われれば地下にある島って何だ?ってなるよねぇ。

 つまり……わたしは今、空に浮かぶ島にいるってこと?それってすごくない?……ということはこの場所は浮いてる島にある地下?地底?なんか頭がこんがらがりそうだよ。


 「イベントの時からある程度は予想してたけど、かなり大きいこの島を浮かばせられる上、移動も可能とか技術すごすぎだよね」


 ベルはイベントの時に転移させた区画は島のごく一部なんじゃないかって考えたとか……クランメンバーの意見も同じらしい。


 「ああ。ハリーたちを助けたあとはクランメンバー連れてきたいな。あいつら発狂して研究しそう」

 「ははっ、ありえる……検証班が悔しがりそうだけど」

 「ま、アイツに教えたら楽しみそうな気もするな……逆に他で見つけてやるって意地にもなりそうだけど。しかも、今のところ転移陣以外では往来できないしな……アイツらがたどり着くのはまだ先だな」

 「だね……つまり、わたしたちが調べつくせるってこと……ふふっ」

 「2人とも悪い顔になってますけどー?」

 「「あ」」


 こうは言っているものの、シュウたちは検証班のひとたちとも親しいんだってー……ただ、競争相手でもある(情報を売りつけるか買い取るか)から時々バチバチするらしい。


 「んー、でもテイマーがいれば……」

 「テイマーか……それならあり得るか?」


 ふむふむ。テイマーっていうのは魔物と仲良くなれる職業なのね?

 そして空を飛ぶ魔物をテイム(仲良くなることをそう言うんだって)していれば、この機械島アミュライトを見つけられるかもしれないってことかぁー……もふもふの魔物……アリだな。でも最初からテイマーになるって決めてスキルとか組み立てないと難しいみたい……うーん、残念。


 「ガガ……二人トモ、ソレハ不可能ダ。ガガ……ココハ通行手形ガ、ナイ限り……認識、デキナイ」

 「「まじかー」」

 「通行手形ってパスポート的なやつ?」

 「んー、まぁそんな感じかな?多分」

 「今まで通行手形の話は聞いたことないから想像だけどな」

 「うん」

 「そっかー」


 ん?わたしたち通行手形とか持ってなかったけど……通行手形は転移陣には必要なかったのかな?

 ふむふむ。本来なら門番であるハリーがチェックして、持っていなかった場合は追い返されたらしい。

 ハリーが門番をしていた頃は天籟の鐘の転移陣側も管理されていて、使用できたのは通行手形を持ってるひとだけだったんだって。

 つまり、出国審査と入国審査があったみたいなことだよね。もちろん、忍び込もうとするひともいてそういう時はハリーの出番だったらしい。


 「うわー、これって今のところわたしたち以外島に来れないんじゃない?」

 「わーい、貸切だー」

 「……いや、まぁ……そうなる、か?」

 「わたしたちが天籟の鐘の情報流さない限り難しいでしょ!」

 「まぁなー」

 「ガガ……全テ解決シタラ、リリー達ニハ最上級、ノ手形ヲダソウ」

 「わーい……最上級って?」

 

 ふむふむ……通行手形にもランク(☆1~☆7)があって入れる地区が限定されたり、場合によっては入島料が課されていたらしい。

 そして、通行手形を手に入れるのは難しく、地上との交流が盛んだった時代でも年に数十枚程度しか発行されなかったとか……何万人(体)が暮らしてたって聞くと、通行手形ってめっちゃ希少だよね。

 あ、でも最低ランクならマシンナリーさんが個人的に気に入った(仲良くなった)ひとに渡すこともあったって話だから少し増減はしてたかも?

 通行手形の星が増えるほど出店できる地区が増えたり、移住や出店の審査が簡単になったんだとか……うん、やっぱりそうやって聞くとイベントの時に転移された場所はそのうちのひと区画っぽいよね。

 移住とか出店をかなり細かく管理するのはマシンナリーさんたちの国民性みたいだね……寿命が違うから、住民のなりすましとかが出ないようにって意味もあったとか。

 通行手形があまり発行されない分、マシンナリーさん達が地上へ行って手を貸したり、交流することの方が多かったんだってー。天籟の鐘の以外にも転移陣はあったらしいけど、今どうなってるかはわからないって……この時シュウたちが異様に食いついて転移陣の場所を聞いてた。他の転移陣は他の街や国へ行けるみたいだから重要らしい。ハリーがいた転移の間はサーディアスしか行き来できないんだけど、他の転移の間は違うところへつながってるんだって……この辺はハリー情報だからほぼ確実かな?


 そして最上級(☆7)の通行手形はどこの地区でも入れるし、提示するだけで宿や食事も無料で案内されるうえに滞在中は機械島アミュライトへの国民同等と認められていて、移住も出店も簡単だったとか。

 その上、マシンナリーさん達からの信頼だけでなく、地上でも通行手形を見せると国から優遇(税金とか)が受けられるほどだったらしい。そんな貴重なもの盗まれそうだけど、その辺は本人もしくは血族で登録した人しか使えないようにしてあったんだって。



 「ねえ……それってギルドカードに似てるよね?あれも本人登録したよね?」

 「おお。わたしも頭をよぎった。まさかの原型なんじゃないの?アーティファクトに分類されるのかな?」

 「妹よ……同感だ。もしかしたら長い年月が流れてその技術だけ残った可能性もあるな」

 「おおー、なんか正解っぽい気がする!」

 「運営がどこまで考えてんのかはわからんがな」

 「たしかに……何も考えてない可能性もあるね」


 シュウとベルはすごく楽しそう。うん、検証班のひと達とバチバチな理由を垣間見た気がする。

 わたしは考えてもわからないや……まず、アーティファクトとはなんなんだ?ってところからスタードだよ?


 「てかハリー、そんな貴重なものをくれるとか言っちゃって平気なの?」

 「ガガ……問題無イ」


 ただ、その通行手形が役に立つのはマシンナリーさん達が自由に暮らせるようになってかららしいけど、その自由を手に入れるために協力してくれたメンバーならば最上級(☆7)の通行手形ぐらい承認されるはずだってハリーは言ってた。

 あ、承認っていうのはマシンナリーの議会的なやつがあるらしい。多分、どこかの部屋……墓場と呼ばれるこの場所とは別のセキュリティが厳しいところで休眠させられてるとのこと。そういうのも細かく分けられた上で休眠させられてるみたいだから、かなりの数になりそう……もちろん全員をすぐに助け出すんじゃなくてバレないように少しずつ人数を増やす予定らしい。


 「もらえるっていうならもらうけどさー、こうなったらなんとしてでもハリー達助けないとね?」

 「だなー」

 「うん!」

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