第44話 検証


 「「え?」」

 「「……は?」」

 「なんだこれ……」 

 「穴だな……」

 「穴に見えるわね……」

 「罠とか?落とし穴っぽいし」

 「罠かー……リリーが何か知ってるも?」


 それぞれ興味深そうに地下をのぞき込んでいる。


 「まさか……ね、ねぇ?もしかしてワールドニュースの天籟の鐘鳴らしたのリリーとかじゃないよね?」

 「「「「「えっ」」」」」

 「まじか……」

 「えへへ……」


 おっと……危ないっ!よそ見してたら穴に落ちそうになっちゃたよー。落ちたら登るの大変なんだからねー!そうだ柱にロープつけておかなくちゃ。あれ、案山子さんならぴょーんですぐだよね……はっ!背負ってもらえば楽勝なのではっ!


 「リリー!もちろん、ちゃんと説明してくれるのよね?」

 「あ、ベル。うん、もちろんそのつもりだよ。えっとねー……今のように鐘の真下あたりの地面に手をつくと地下への入り口がパカッと開きまーす。あ、罠ではないよ……多分」

 「はぁ……肝心のワールドニュースについての説明がないんだけどなー?」

 「え?」

 

 あ、あれ?なんでみんな呆れ顔なの?間違ったことは言ってないはずだけどなー……


 ガコンッ


 「あ!せっかく開けたのに閉まっちゃったよー……」

 「時間経過で閉まる仕組みかしら?」

 「ぽいね」


 もう1度、地面に手をつけようとすると……


 「リリー、ちょっと待って!」

 「ん?シュウ、どうしたの?」

 「それ、俺も試してみたいんだけどいいか?」

 「うん!鐘の真下の地面に手をつけば開くはずだから!」

 「わかった」


 早速、シュウはわたしがやったように地面に手をつく。


 「うーん……開かないな」


 開けられる人とパーティを組んでいても地面は開かないのかー。


 「他に条件があるのかも?」

 「たしかに……鐘に触るだけなら検証班が試してるはずだよなー」

 「でも、これからもリリーしか開けられないなんてことはないよね?なにか方法があるはず……」

 「うーん……じゃあ、わたしと同じ行動してみたらどうかな?」

 「「「「「「……同じ行動って?」」」」」」

 「うん。それは……」

 「「「「「「それは?」」」」」」

 「鐘の掃除です!」


 (((((そんなことしてたのかっ!)))))


 「そうそう、ワールドニュースのことだけど……採取で森をウロウロしてたら建物が見えて鑑定してみたら天籟の鐘の近くは安全地帯ってなってたんだよねー。休憩がてら鐘が鳴るの待ってたんだけど、全然鳴らないからなんでかなーって思ってよく見たら汚れてたから掃除してみたんだよー」

 「お、おぅ……」

 「それで鐘が鳴ったってことか?」 

 「うん、しばらく待ったら鳴ったよ?……あとねー、クエストだったみたいでモンスターを倒したことがないっていうクリア条件があったような?」

 「死に戻ってたとは聞いたけど、まさか1度もモンスターを倒したことなかったとは……」

 「まあまあ。ソロの初心者がこの街でモンスター倒すのはなかなか難しいと思うよ」

 「うんうん……シュウやベル、常夏、アリッサ、タミルみたいにプレイヤースキルでなんとか出来るとは限らないんだからね」

 「いや、それを言ったらルティもだかんな?お前もプレイヤースキル高いだろーが!」

 「……えへ」

 「うわー、あざといっ!リリーと大違……すまん、なんでもない。とりあえずやってみるわ」

 「うん」


 シュウが代表して試すことに……あらかた鐘の掃除が終わったら鐘が鳴るまで休憩。

 うん、わたしは耳を塞いでおくねー。


 ガラーン!ガラーン!


 「おっ、鳴った!」


 あれ、なんでベルや他の数人は平気そうなの?案山子さんはもちろん平気だ。

 反応が真っ二つだ。耳を塞ぐアリッサとルティ、平気そうなシュウ、ベル、常夏、タミル……


 「なんで平気なの?」

 「ん?……あっ、状態異常耐性のおかげかも」


 平気そうなメンバーはそれを持っているらしい。キャラメイクの時に手に入れたり途中で取得可能になったスキルなんだってー。


 「へぇー……状態異常耐性か。ほしいなー」


 言ってみたら獲得できないかなーって期待したけどダメだったよ。残念。


 「おっ、称号ゲットしたぞ!」

 「まじか!内容は?」

 「どうやら『天籟の鐘を鳴らした者』って名前で報酬はスキルポイント+2だな。ってことは1回限りのクエストってことかー」

 「これじゃあ検証班が鳴らせないわけだわ……絶対モンスター倒したことあっただろ」

 「だね~……最初はリリーみたいな子にしかクリアできないようになってたんだね~」

 「……ん。これはレアなクエスト」

 「ぽいなー」

 「へー……」

 「リリーの称号はどうだった?」

 「ん?わたしは『初めて天籟の鐘を鳴らした者』だったかなー?報酬はスキルポイント+5とスキルオーブ(ランダム)だったかな?」

 「スキルオーブが報酬って滅多に聞かないぞ?それこそイベントの上位入賞者とか」

 「ふっふっふっ……それで水魔法をゲットしたのだよ!」

 「おおー、おめでとう」


 その後、シュウが地面に手をつくと開いたので……他のメンバーも称号欲しさ(というよりスキルポイント欲しさ)にそれぞれが鐘の掃除をすることになった。うん、鐘もう汚れてないよね……その行動が大事ってことかな。

 

 「シュウ、時間がかかるならちょっと群生地まで行ってくるね!」

 「え、でも……リリー1人で平気か?俺も行こうか?」

 「あ、大丈夫!案山子さんついてきてくれるし。あんまり離れないようにするから!」

 「ウン、マカセテ!」

 「でもなー……いくら案山子が戦えるからって」

 「そうだ、案山子さんには魔物避けの効果があるの!オンオフできるんだよー。だから大丈夫!」

 「はっ?」

 「みんなが戦闘したいって言ってたからからさっきまでオフにしてもらってたんだ」

 「まじか……変な質問するなーって思ってたらそういうことか」

 「あ、このことは情報屋さんには売らないでね?」

 「もちろん!リリーが許可したもの以外は売らないから安心しろ」

 「うん!じゃあ行ってくるねー」

 「おー」


 シュウを置いて群生地にて時々聞こえる鐘の音を数えつつしばらく採取していると……


ピコン!

 〈スキル:鑑定がレベルアップしました〉


ピコン!

 〈スキル:採取がレベルアップしました〉


 「わーい、レベルアップだー」

 「オメデトー」

 「案山子さん、ありがとう。さっきの鐘で人数分鳴ったし、戻ろっか」

 「ワカッタ」


 天籟の鐘へ戻るとそれぞれ称号(というよりスキルポイント)を手に入れ満足そうだった。最後に案山子さんも挑戦してみたけどダメだった……。


 「よし、これで地下にいけるねー」

 「うん」


 シュウが鐘の下の地面に手をつくとパカッと開いた。


 よし、今度こそれっつごー!


 ー今日の案山子さんメモー

 ・案山子さんだけでは鐘の下は開かなかった。でも掃除は頑張ってた

ルミエルさんに聞くこと……

 ・案山子さんに背負ってもらうには何が必要ですか?

 ・体重に耐えられますか?

 ・どれくらいの荷物を持って跳べますか?

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