第30話 クリスタル

 鑑定の結果はこうだ。


*****


 名称:転移陣

 説明:かつて友好の証の鐘とともに設置された転移陣。使用時にMP200を消費する。


*****



 どうやら転移陣に触れるとMPと引きかえにどこかに転移できるみたい。でも必要なMPが200らしいので今のわたしが触っても無駄なようだ。

 MP200を消費すればひとりでもいいのか数人でもいいのかはわからない……うん、わたしプレイヤーのフレンドいないからね……試すこともできないんですよー、ぐすん。


 「はぁ、どこに転移するかわからないし……数日後には茉由ちゃんと合流できる予定だからその時に相談してみよーっと」


 あとは何もないかなー……ん?なんか落ちてる……ほこりが被っててわからなかったけど石っぽいな?5センチにも満たないソレをとりあえず拾ってみた。


 「石?でもよく見ると透明だなー?」


 鑑定してみた。


*****


 名称:至誠のクリスタル

 説明:コアに差し込むことができるクリスタル。


*****


 「石じゃなかった!そして情報が少ない……レベル不足かなー。コアってなんのコアなんだよー!」


 それにコアに差し込むことはわかったけど、差し込んだらどうなるかもわからないままだし……


 「とりあえず、地下はこれくらいかなー。戻るかー……ってあれ、どうやって登ればいいわけ?」


 天井に開いている……つまりわたしが落ちた穴は2メートルくらい上にある……ぴょんぴょんと一生懸命ジャンプしたけど全く届かない。


 「えー……どうしよ」


 その後もロープを結んだ投擲ナイフを投げて、どこかにうまくひかからないかなーとか期待してしばらくやってみたけど全然ダメ。あ、でも投擲スキルはレベルアップしたよ。

 

 「はぁ……こうなったら仕方ない。地下道へ行くしかないかー」


 こんな脱出の仕方は嫌だけど仕方ない。他に方法がないんだもん……はぁ。

 慎重に地下道を進むと……うん、思った通りすぐに死に戻れたよ。そもそも地下道を無事に通り抜けられるなんて思ってなかったから当然なんだけど、モンスターすら確認できず瞬殺でしたよねー……

 確認したいこともあるし、今度行くときは他の脱出方法をちゃんと考えてからにしなくちゃね。


 「ふぅ……なんか疲れた」

 「おっ、リリー帰ったか」

 「はい」

 「畑も順調そうじゃな?つくづく成長促進はすごいの」

 「そうですよねー……あ!そうだ、グランツさん!」

 「ん?なんじゃ?」

 「コアってなんですかねー?街の外でコアに差し込むクリスタルを拾ったんですけど……」


 《#水__ウォーター__#》でクリスタルを綺麗にしてみたら白っぽくて透明度の高いものだった……けど肝心の使い道がわからないんだよねー。


 「コアのぉ……おっ、そうじゃ!案山子1号が特別なことは話したよな?」 

 「はい……えっと、他の案山子さんは1号さんのコピーくらい違うとか」


 あ、案山子さんが自分のことかとぴょんぴょん近寄ってきた。


 「うむ、案山子1号は製作者がこだわって作ったというがの、1号だけがどこからか手に入れた部品を組み合わせたものらしいんじゃ。もちろん手は加えてあるが……他の案山子は詳しくは知らんがそれを模倣して作ったんじゃ。完璧に模倣できなかったから性能に差がある。やつは悔しがって開発を続けておっての、時々試作を持ってきてるわ」

 「へー」

 「で、本題はその手に入れた部品で唯一やつが模倣しきれなかった部品がコアなんじゃよ」

 「おー!じゃあもしかして……」

 「うむ、コアに穴が開いておればそこにクリスタル?を差し込めるかもしれんの……」


 わくわく……


 「グランツさん!案山子さん!試してみてもいいですかっ?」


 案山子さんはすぐそばまで近寄ってきたのでいいって返事だと思う……多分。


 「うむ、もし異常が起きたらすぐにやつに連絡すればいいだろう。しかし、リリー……もしかしたらそのクリスタルが取り外せなくなったり壊れる可能性も十分にあるし、売りに出せば高い価値がつくかもしれんぞ?案山子を作ったあやつなら高値で買うこと間違いないしの……リリーは構わないのか?」


 ちょっとだけ高値販売につられそうになったけど、このクリスタルで案山子さんがどうなるかの興味の方が勝った。


 「はい、お願いします!」

 「うむ」


 早速、グランツさんと案山子さんのコアを確認させてもらうとやはり差し込める穴があった!


 「あら、何してるのかしら」

 「あ、バーバラさん!ちょっとクリスタル拾ったんで案山子さんに付けてみるところです」

 「そ、そう……」


 うん、バーバラさんはよくわかってないみたい。グランツさんが詳しく説明してようやくわかってくれた。よかった。


 案山子さんのコア自体はだいたい20センチくらい。穴はいくつか開いてるみたいだけど、とりあえず1番上に差し込んでみることに……


 「じゃあ、行きますよー。グランツさんとバーバラさんは念のために離れててくださいね!わたしなら復活できるので!」

 「うむ」

 「え、ええ」


 ふたりが十分に距離をとったのを確認してからクリスタルを差し込む。


 「えいっ!」


 ふぅ……とりあえず爆発とかしなくてよかったー!


 「うーん……外見に変化はないですね」

 「そうじゃな」

 「ええ」

 「ウン……」

 「「「えっ?」」」


 あれ、おかしいな……わたし、グランツさん、バーバラさん……返事が多くない?


 「グランツ、バーバラ、リリー……コンニチハ」

 「え、案山子さんが喋ってるのっ?」

 「ウン、クリスタルノオカゲ……」

 「まあまあ!こんなことが起こるなんて」

 「う、うむ……驚きじゃの。やつに連絡しなければいけんな」

 「はー、あのクリスタルすごいものだったみたいですねー」

 「アリガト……ハナセテウレシイ。ネックレスモ、ボウシモウレシイ」


 おおー、なんと案山子さんが話し出したではないですかー!カタコトだけど、今まで一方通行だったから嬉しい!


 「案山子さん!これからもよろしくね」

 「ウン、ガンバル……」


 いやー、持ち帰ったかいがありましたねー。

 そうそう……もう1度行ってみたら鐘の下に地下への入り口はなかった。

 どうやら地面がパカッと開くのは鐘の真下あたりに手をつくことが重要みたい。あのときは地面が揺れて咄嗟に出た行動だったけど他の人でも開くのかは不明。

 あ、もちろん準備せずにやると二の舞だから体にロープをくくりつけて鐘つき堂の柱と繋いでおいた。うん、パカッと開いて落ちても宙ぶらりんで無事ってやつ。これリアルだったらロープでお腹痛いんだろうな……ものすごーく時間をかけてロープを登りましたよ。安全地帯地帯じゃなかったらやばかったよ。

 で、穴から出るとすぐに地面が元に戻った。きっとさっき死に戻った時もこうして元に戻ったんだろうなー。

 まあ、転移陣は魔力も足りないし休憩スペースとしては優秀なんだけど……やっぱり気になっちゃうよね。




◆ ◆ ◆


名前:リリー

種族:人間

性別:女性

状態:正常

種族レベル:Lv1

HP:40/40(+5)

MP:40/40(+5)

STR:5(+2)

VIT:5(+5)

INT:5

AGI:5

DEX:80

LUC:777(固定)

ステータスポイント:15ポイント

職業:農家見習い  Lv4

スキル:鑑定Lv2、裁縫Lv2、採取Lv2、栽培Lv2、投擲Lv2→ Lv3、毒耐性Lv4、麻痺耐性Lv4、気配察知Lv2、隠密Lv2、地図 Lv3、成長促進 Lv3、瞑想Lv1、水魔法Lv1

スキルポイント:28ポイント

取得可能スキル:挑発、武器回収、工作

称号:遅咲きのラッキースター、挑戦者、方向音痴、天籟の鐘を初めて鳴らした者

所持金:877G(預金:6500G)

装備:麦わら帽子、軍手、見習いのシャツ、見習いのズボン、見習いのブーツ、初心者用投擲ナイフ×3、どんぐりネックレス、花柄エプロン

持ち物:初級ハイポーション×5、初級マナポーション×5、初心者用裁縫セット、水袋、火打ち石、ギルドカード(F)、葉っぱ×6、小石×22、木ノ実×8、体力草×23、魔力草×27、メモ紙、ペン、きゅうり×3、ミニトマト×10、ハニービーの毒針×5、ハニービーの羽×40、はちみつ3瓶、ローヤルゼリー1瓶

販売所(4/10): 体力草★2×5、体力草★3×5、魔力草★2×5、魔力草★3×5(金庫:5520G)


◆ ◆ ◆



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る