第29話 天籟の鐘
ゲーム内の夜はわたし的にあんまりやれることが少ないので1度ログアウトし、用事を済ませてから再度ログイン。
いつも通り畑の世話やミニトマトの収穫を済ませ、販売所に出品してから街の外へ出発……
そうそう、このあたりはゲームだけあって本来なら畑を休ませる必要があってもゲーム内では問題ないみたいで、次々作物を植えてもいいらしい。まぁ、その場合は肥料とか混ぜた方がいいらしいけどね。
地図に載ってない場所をウロウロ……うん、地道な作業だけど迷子にならずに済むから頑張ってるよ。ほら、1人でもいつかは死に戻りじゃなくて歩いて門をくぐれるかもしれないし……
気配察知と隠密を駆使してモンスターを避けつつ採取。
「あれ、この辺全然モンスターいないなー?なんでだろ?ま、いっか……よし、採取するぞー!」
移動しつつ採取を続けると……建物が見えた。
「……ん?あれなんだ?」
とりあえず鑑してみると……
*****
名称:天籟の鐘
説明:かつて、友好の証として贈られた鐘。素材に魔物よけが含まれているため半径数十メートルが安全地帯となっている。
*****
「やったー!ここなら死に戻らなくて済む!」
でも、友好の証なのになんでこんな場所にあるんだろう?街中にあってもおかしくないのに……鑑定のレベルが上がればもっとわかるのかなー?
天籟の鐘かー……天籟ってどういう意味だったっけ?うーん……確か、風が物に当たって鳴る音とかそんな意味だった気がする。大きさはお寺とかにある半鐘ってやつ?と同じくらい。鐘つき堂っぽい建物まで完備とは……鐘にはよくわからない模様が施されているし、何かしら意味があるのかも……といってもお寺にある鐘とは雰囲気も違うし、今は半分くらい地面に埋まってるけどねー。
「っていうことは、風が吹いたら鐘が鳴るってことなのかなー?」
わくわく……しばらく待機すると強い風が吹いた。
しーん……
「あれ、音が鳴らないじゃないかー……ん?」
……どうやら汚れているせいで音が鳴らないみたい。
「せっかくだし掃除してみようかなー」
建物が地面に半分埋まってるおかげで鐘のある場所に簡単に登れたので、軍手の片方を濡らしてゴシゴシ……うわっ、真っ黒……
「うーん、結構錆びてるな……」
もう片方の軍手で乾拭き。うん、今はこれくらいしかできないけど挟まってたゴミは取り除いたし……お昼でも食べながら風が吹くのを待つとしよう。
ていうか鐘を鳴らして音を聞いてみたいけど、紐とかついてないし方法がそれしか思いつかなかっただけなんだけどねー。一瞬、投擲の的にして当たったら音鳴るかなーって思ったけど、流石に投擲の的にするのはいかがなものかなーってやめた。
お昼を食べてのんびりしていると突然風が吹いた。
ゴーン、ゴーン!
「うわっ、ビックリしたー」
鐘のすぐそばにいたものだから耳が痛いよー……しかも、結構な強風で鳴り続けてるし。両手で耳を塞ぎ、音が鳴り止むのを待っていたら……
ピコン!
《ワールドニュース:天籟の鐘が鳴りました。これにより新たなステージが開放されます》
ピコン!
〈特殊クエスト:天籟の鐘を鳴らせ!を達成しました。それに伴い称号が付与されます〉
「あれ、この鐘って結構重要だったの?てか、今気づいたけど風が吹くたび鐘の音が鳴り響いたら騒音問題になっちゃうから街の外にあるんじゃない?ちがうかな?」
ウィンドウ上で詳細がわかるみたいなので調べてみた。
*****
特殊クエスト: 天籟の鐘を鳴らせ!
内容:かつて、友好の証として贈られた鐘。しかし、寿命の長さが異なることで徐々に交流がなくなり放置されて廃れてしまった。鐘を鳴らすと……
期限:今日中
*****
「あれ、こんなクエストあったんだー。なんでここにあるかはわからないままかー……」
今日中にクエスト達成できなかったら、明日も挑戦できたのかな?ま、できちゃったから関係ないんだけどねー。
称号の詳細も見てみる……
*****
称号:天籟の鐘を初めて鳴らした者
報酬:スキルポイント+5、スキルオーブ(ランダム)
取得条件:モンスターを倒したことがなく、天籟の鐘を掃除し鐘を鳴らすこと。
*****
へー。ハニービーのはちみつ採集は問題ないんだ。ま、倒してないことには違いない……うん、弱くてよかったかも。茉由ちゃんとかは絶対できないクエストだったんだね。鐘を鳴らした者って掃除しただけなんだけどいいのかな?
「クエスト達成できたんだからいいはず。あ、スキルオーブ(ランダム)ってナビさんが言ってたやつだっ!確か、スキルオーブは街で購入して取得することもできるけど、ほとんどが基本的なものばかりで結構価格が高いだっけ?ランダムかー……なんだろう」
ピコン!
〈スキルオーブ(ランダム)を取得しますか?Yes or No〉
もちろんYes!わくわく……
ピコン!
〈スキル:水魔法を取得しました〉
「わーい、はじめての魔法だー!水やりに便利だね」
試しに使ってみるけど、まだレベル1だから《#水__ウォーター__#》しか出せないみたい。1回使うとMPが1減ってバケツ半分くらいの水を出すことができるとわかった。毎日水やりすればレベルも上がるだろうし、も探したら攻撃とか防御の魔法も使えるかも……楽しみだなー。
《#水__ウォーター__#》を使って水袋に補充していると突然地面が揺れた。……地震?
「うわー……痛っ!」
そのせいなのか偶然かわからないけど、足元の床がパカッと開き、薄暗くて小さな空間に転落した。
「もー、下手したら死に戻るところだったじゃないかー。今日はまだ死に戻ってないんだからねっ!」
小さな空間の先には薄暗い洞窟が続いてるみたい……地下道かなー?しかし、気配察知で奥の方モンスターがいることがわかった。少なくとも数体は……うん、とりあえず放置だなー。だって、絶対死に戻るもん。逃げ道もないし、そもそもランプすら持ってないから無理無理。
ひと通り周囲を見てみるものの何もなかった……ただひとつを除いて。
「うん、扉がある……」
警戒しつつ開けてみると……
「なんだ、何もないじゃん」
なんでこんな空間があるんだろ……休憩スペースかな?もう1度じっくり観察してみる。
ん?薄暗くてよくわからないけど何か地面に描かれているな……これ、不用意に触ったらやばそう。とにかく鑑定してみると……
「転移陣?なんだそれは……」
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