第26話 お手伝い その2


 グランツさんとバーバラさんについて歩くことしばらく……その間に出くわしたモンスターはグランツさんとバーバラさんによってあっという間に倒された。わたしだったら何回か死に戻ってるねー。


 「リリーちゃん、もう着くわよ」

 「うむ、まずはここからだぞ。余裕があれば他にも行くつもりじゃが」

 「はーい……え、まさか養蜂ってハニービーの巣を襲撃することなんですか?」

 「うむ。決して女王は殺してはならぬぞ?女王さえ生きていればまた収穫できるからの」

 「はぁ」


 ふたりが指差す場所に巨大なハチの巣が見えた……うん、多分わたしハニービー自体倒せないから女王どうこうよりも死に戻りを気にしないと……だって復活しても1人じゃここまで来れない可能性大だもん。

 

 「あ、そうだわ。女王は他のハニービーよりひときわ大きいからすぐにわかるはずよ」

 「そうですか……」


 ただでさえハニービーはバスケットボールくらいの大きさがあるのにそれよりもひときわ大きいなんてあまり近寄りたくないなー……


 ハニービーは巣に近づくと凶暴化し攻撃してくる。針には麻痺の効果があるだけでなく何度刺しても針は抜けないらしい。

 

 「で、わたしは具体的に何をすればいいんですか?」

 「うむ、リリーはハニービーの巣の近くで声を出して注意を引くだけでよい」

 「その間にわたし達がはちみつを採集するから」

 「は、はぁ……」

 「耐えられそうになくなったらわしらを呼んでくれ。一旦離脱するからな」

 「ええ、無理はしないでね?他のモンスターが出てきた時も呼んでちょうだい。駆けつけるから」 

 「わ、わかりました」

 

 とりあえず1度やってみることに……グランツさんに指定された場所に立ち声を出す。


 「おーい!ハニービーさーん!こっちこっち!」


 グランツさんとバーバラさんはすでにわたしとは反対側の位置に移動している。それにしても気配がないんだけど……いる、よね?


 そうこうしているうちにハニービーが何体か巣から飛び出してきた。いくらデフォルメされてると言ってもたくさん集まってくると結構怖いね……


 「うわー!チクチクされてる……あ、でもいつもより耐えられてるかも。はっ!エプロンのおかげ?」


 その間もグランツさんとバーバラさんはハニービーを倒しながらはちみつを集めているみたい。

 うん、ふたりともめっちゃ強い……しかも一撃で確実にハニービーを倒しているあたりに慣れを感じる。

 囮といっても動き回ることはなく、ふたりが気配を消し素早く動き回るのでわたしは時々大声で注意を引けばいい。うん、簡単だと思うでしょ……でも地味に大変だったよ。ハニービーに群がれながら周囲を観察してなるべくふたりに注意が向かないように大声を出したりとか、ゲージを気にしたりとか……慣れてないから余計にそう感じたんだろうけどさ。

 ふたりが順調にはちみつを集める間もわたしはハニービーにチクチク刺されてじわじわHP減っていき……あ、ゲージが赤になった。


 「グランツさーん、バーバラさーん!もうそろそろやばいですっ!」

 「うむ、仕方ない。一旦離脱じゃ!」

 「ええっ!」


 追ってくるハニービーをグランツさんが倒しつつ一旦離脱……


 「すいません。あんまり長く居られなくて……」

 「いや、ふたりで集めたからいつもより速いペースだったぞ」

 「ええ、それにほとんど集め終わったからちょうどよかったのよ?」

 「そうですか……」

 「うむ、リリーこれを飲むといい」


 グランツさんに渡されたのは……


 「ポーションですか?」

 「うむ、回復が早まるじゃろ?遠慮するなよ?」

 「ありがとうございます」


 ポーションを受け取りひと口……あんまり美味しくない。

 その顔をみたバーバラさんは


 「リリーちゃん、ポーションはほとんどがそんな味よ」

 「へー……そういえば初めて飲みました」

 「そうなの?」

 「はい。あ、もう回復したみたいです」

 「そうか……で、どうじゃ?続けられそうかの?」

 「さっきみたいな感じでいいなら……」

 「十分よ。ね、あなた」

 「うむ」

 

 次の場所はさっきの巣より奥の方にあるらしい。少し休憩してから出発することになった。


 あ、そうだっ!

 

ピコン!

 〈スキル:瞑想を取得しました〉


 スキルポイントが1ポイントで取得できたし、必要だと思ったんだよね……うん、囮にはうってつけのスキルだった。動かなければ回復が早まるんだから……動くと効果がなくなってしまうけど声を出す分には問題ないみたいだからグランツさんとバーバラさんの役にも立てるし。ま、ひとりで行動するときには使えなそうだけどねー……


 「そういえばグランツさんとバーバラさん、ハニービーを倒したあと何か拾ってましたけど」


 うん、向かってくるハニービーを倒しつつ何かを拾い、はちみつ採集……わたしには絶対できないなー。


 「うむ、それはドロップ品じゃな」

 「ドロップ品……」


 あー、確かモンスターを倒すと落とすとかいう素材か……わたし、モンスター倒せたことないからなー、ぐすん。


 「ハニービーのドロップ品はほとんどが毒針か羽なんだけど、売るとそこそこの値段になるからついでに拾ってたのよ。リリーちゃんにも後で分けてあげるわね?」

 「え、でも……わたしが倒したわけじゃないですし」

 「リリー、遠慮するでない」

 「そうよ、もらえるものはもらっておきなさい。ドロップ品だってリリーちゃんが囮をしてくれだからこそたくさんあるのよ?」

 「うむ」

 「えっと、ありがとうございます」


 そう言うとふたりは満足そうに笑った。毒針は弓を使う人に人気があるらしい……羽で裁縫ってできるのかなー?葉っぱができるくらいだから羽も出来そうだけど……ま、試してみればいっか。


 休憩後、ハニービーの巣を目指し再度出発するのだった……うん、こんなに死に戻らずに森の中にいるの初めてだなー。

 がんばるぞー、おー!

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