第25話 お手伝い その1


 今日は終業式だったので半日で終わった。若干、持ち帰る荷物が多くなったけど明日からは夏休みなので内心わくわく……茉由ちゃんとは夏休み中にゲーム内で待ち合わせする日を決めたから会えるはずだし、昨日の夜お母さんと話し合ってやることをしっかり済ませるなら長時間ログインする権利を獲得したのですよ!

 

 「んー……14時かぁ。今ログインしても多分夜だよねー……よしっ!」


 部屋の掃除や宿題をすませることに……あっという間に時間が過ぎた。うん、宿題も結構進んだよー……


 「おっ、もうこんな時間かー……もう朝になってるかな?」


 準備してログイン……


 「ん、部屋が明るい……やっぱ朝になってたー」


 さっそく畑に向かう……ミニトマト!ミニトマト!わくわく!


 「あっ!おはようございます」

 「おお、リリー今日は早いな?」

 「そうだわ、朝ごはん食べる?」

 「はい!ぜひ!あ、でもその前に畑だけチェックしたいんですけど……」

 「そう?じゃあリリーちゃんの分は残しておくわね」

 「ありがとうございます!」


 さっそく畑をチェックするも……


 「はぁ……ミニトマトはまだだったかー」


 雑草を抜き、水やりを済ませた後に販売所も確認する。すべて売れていたので再度出品……また採取しにいかないとなー。

 それが終わるとグランツさんとバーバラさんの家へ。


 「さあ、どうぞ」

 「いただきます!」


 もぐもぐ……うまー!


 「リリー、今日は何か予定があるのか?」

 「いえ、ミニトマトもまだ収穫できないし……何かお手伝いできることがありますか?いつもお世話になってるので張り切ってお手伝いしますよー」

 「まあっ」

 「うむ、わしとバーバラは養蜂もしておってな……」


 ようほう……養蜂……はちみつ!じゅるり……


 「そうだったんですか?はっ!もしかしてこのはちみつも?」

 「うむ、そうじゃ」


 このはちみつ、パンにつけると最高に美味しいんだよねー。バーバラさんがいれてくれるお茶にいれるのも捨てがたいけどさ。


 「あなた……さすがにリリーちゃんには危ないんじゃないかしら?」

 「そうなんですか?」

 「うむ……バーバラの言う通りかもしれんな。リリーには荷が重いか……」

 「蜂かぁ……そういえば街の外で何度も刺されて麻痺耐性と毒耐性のスキルゲットしたんですよねー。あれってよくあるんですかねー」


 あら、グランツさんとバーバラさんが同時に振り向いた……シンクロ。


 「なんだと……そうか。それなら……」

 「ええ、それだったら話が変わってくるわねぇ……」

 「ん?」


 グランツさんとバーバラさんはふたりで話し合っている。その間に朝ごはん完食。


 「ごちそうさまでした!今日もすっごく美味しかったです!」

 「いーえ。ねぇ、リリーちゃん。明日も美味しいはちみつ食べたいかしら?」

 「そりゃあ、食べられるものなら食べたいですっ」

 「ふむ……じゃあリリーにも手伝ってもらおうかの?」

 「頑張りますよ!グランツさんとバーバラさんにはお世話になりっぱなしなので!」


 うん、わたしグランツさんとバーバラさんに会えてなかったら多分、二進も三進もいかなくてこんなに楽しく過ごせてないと思うもん。いつもはついてないけど、こればっかりは運がよかったと思う……


 「そう……じゃあ、リリーちゃんは囮をお願いね」


 ……はい?囮?


 「あれ?なんか今、囮って聞こえた気がするんですけど……」

 「ええ、そうよ。今まではわたしがやってたんだけど年齢的に辛くなってきて……最近はちみつの収穫量が少なくなっちゃったのよ」

 「……はあ」

 「うむ……じゃが、わしらのはちみつを待っている者がいるのでな……やめるわけにも行かんのじゃ」

 「そうなんですか……わたしでできることなら頑張ります!」

 「リリー、よく言った!わしらの場合、バーバラがこれ以上耐えられないと言ったら一旦引き返して体力を回復させてからまた挑んでいたんじゃが……」


 あー……赤ゲージになったらグランツさんに言えばいっか。万が一があってもわたしは復活できるし、バーバラさんに囮をさせるよりよっぽどいいはず……多分?

 それにしても囮ってなにするんだろ……ま、ふたりの言う通りにしてれば大丈夫か!


 「わかりました!わたしも危なくなったら報告しますね?」

 「うむ……その時は一旦離脱することにしよう」

 「リリーちゃん、いくら復活できるからって無理はしないでね?」

 「はい!」


 ふたりは準備があるとのことなのでわたしが朝食の片付けを買って出た。うん、わたしは軍手つけて麦わら帽子かぶって水補充すればいいだけだからね!あとはホームにおいてあるし問題ないね。

 

 片付けを終え、水を補充しているとふたりが準備を整えやってきた。


 「うむ、待たせたな」

 「いえ」

 

 わたしの装備をみたバーバラさんは何か思ったように家へ入って行ってしまった。


 「あれ?忘れ物ですかね」

 「……うむ」

 「お待たせ。リリーちゃんにこれをあげようと思って……」

 「え?」


 そう言ってバーバラさんは真新しいエプロンをくれた。


 「わたしの代わりに囮をしてもらうんだもの。これをつければ少しはマシになるはずだわ」

 「わー!バーバラさん、ありがとうございますっ!」

 「破れたりしたら繕えば問題ないからね?リリーちゃんの手に負えない時はわたしが直してあげるから安心なさい」

 「はい」


 エプロンを鑑定してみると……


*****


 名称:花柄エプロン

 レア度:R 品質:★8 耐久:100

 説明:熟練の職人によって丁寧に作られた花柄模様のエプロン。VIT +5、HP微回復

 製作者:バーバラ


*****

 


 なんかすごい。特に品質がすごいわー。HP微回復ってことは普段より回復が早くなるってことでしょ……多分、バーバラさんの破れたりしたらっていうのはこの耐久値ってやつが関係してるっぽいなー。

 さっそく身につけてみる……おおー、エプロンだ。どこからどうみてもエプロン。うん、ポケットが付いてるから便利そうだね。



 「さて、出発するかの。準備はいいか?」

 「ええ」

 「はい!」


 案山子さんに見送られ、グランツさんとバーバラさんついていく……なんとなく養蜂って畑の端の方でしてるのかなーって思ってたんだけど、なんでだろー?街の外へ向かってるみたいなんですけど……

 あれ?養蜂ってわたしがよく死に戻ってる森でやってるのっ?

 わたし、役に立てるかなぁ……一抹の不安を抱え森の中へと入っていくのであった。

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