第18話 待ち合わせ


 茉由ちゃんとの約束のためログイン……


 ゲーム内ではお昼過ぎ……念のため少し早めに西門へ向かう。


 「あ、待ち合わせ門の外側か中側どっちか決めなかったなー」


 門の外は少なからず死に戻る可能性があるので、ひとまず門の内側に。すぐそばに花壇の横にベンチがあったのそこで待機する……ここだったら麦わら帽子ですぐにわかるはず。


 「こういう時は動かずじっと待つ方がいいんだよね?」


 念のためリアル1時間後にタイマーをセット……会えなかったら電話が来るはずだから一旦ログアウトしないと。わぁ、風が吹くと花のいい匂いがする……癒されるなー



 「ん、もう時間かー」


 タイマーがなるまで行き交う人々を眺めながらじーっと座って待ってたけど、茉由ちゃんは来なかった。


 「おかしいなー?茉由ちゃん迷子かな?わたしは動いてないから迷子になってないもーん」


ピコン!

 〈スキル:瞑想が取得可能になりました〉


 瞑想は一定時間動かないことが取得条件みたいだ。効果は瞑想するとHPやMPの回復が早くなるらしい。


 「なんかスキルゲットできたから時間の無駄にはならなかったけど……街の外でじっとしてたらモンスターの的だよね……隠密と重ねて使えば見つからずにすむのかな?とりあえず保留でいっか」


 一旦、ホームに戻ってログアウトする……


 「あ、茉由ちゃんからだ。もしもし?」

 「もしもし、由莉奈?本当にいた?」

 「うん、西門の内側にいたよ?花壇のそばのベンチにずっと座って待ってたけど……」

 「……そう。見つからなくて全部の門回ったんだけどなー」

 「うーん……すれ違ったのかな?」

 「……どうだろう」


 そういえばじっとして行き交う人々を眺めてたけど、わたしも赤い髪のショートカットの女の子は見てないなあ……


 「ま、会えなかったのは仕方ないしもう少し1人で頑張ってみるよ……茉由ちゃんだって忙しいでしょ?」

 「でも……」

 「んー、どうしても困ったらまた相談するから。そうだなー……夏休みはゲーム内で一緒に遊ぼう?」

 「わかった。困ったらすぐ言ってね?またはじまりの街に行くことがあれば待ち合わせしようね!今度は確実に会える場所で!」

 「うん、街中で迷子にならないよう道覚えるね」

 「期待しないで待っとくわー」


 さて、ログアウトついでに宿題やお風呂、ご飯を済ませてからもう1度ログインーー


 もう夕方だったので、地図スキルゲットを目指し、バーバラさんに譲ってもらった紙とペンを手にウロウロした結果……迷子になった。

 念のため地図に載ってる場所をウロウロしてたんだよ?困った時は地図を見ようと思って……いつのまにか全然違う場所にいたけど。迷子になったと思って地図開いたら地図の空白地帯に自分を示す光が点滅してたよね。


 とりあえず道行く人に尋ねてみよう。


 「すいませーん」

 「なんだい?」

 「ここはどこでしょうか?」

 「……ん?」

 「道に迷ったみたいで……」

 「あら、そうなの……」


 買い物帰りらしき奥さんに事情を説明する。ちょっと恥ずかしい……


 「で、どこに行きたいの?」

 「えっと……農業ギルドです」


 グランツさんの農場で通じるかわからないから農業ギルドにした。あそこなら何人かに聞けば知ってる人もいるはずだし、農業ギルド近辺まで行ければ地図も役に立つからね。


 「いいかい?少し遠回りだけどわかりやすい道を教えてあげるからよく聞くんだよ」

 「はい!ありがとうございますっ」

 「まず、そこの十字路を左に曲がる。そして3番目の横道を右、まっすぐ行くと広場に出る。広場から教会が見えるからその方向にある道に進む……そしてそのまま道なりに進むとY字路に行き当たる。左側の道に進むと大きな通りに行き当たる。それを右に行くと農業ギルドが見えてくるはずだよ」


 あー、混乱してきた。聞きながら紙にメモはしたけど大丈夫かな?


 「ありがとうございました」

 「いーえ、迷ったら他の人に聞きなさいね」

 「はい」

 

 言われた通りに進んだものの何度かわからなくなり人に聞いたため、迷子から抜け出すのにかなりの時間が経ってしまいあっという間に日が暮れた。


 「はぁー……ようやく地図に載ってる場所に来れた」


 何という安心感……


ピコン!

 〈条件を満たしたため称号が付与されました〉


*****


 称号:方向音痴

 効果:スキルポイント+3、地図スキル付与

 取得条件:一定時間迷子になること。


*****


 「わーい、地図スキルゲットしたぞー」


 思ってたのと全然違う方法だけど、望んだスキルなので嬉しい!しかも付与だから取得するのにポイントとかいらないんだよー!


 「あ、でもこれウロウロしたところしか埋まらないんじゃ……」


 よし、地図に載ってない道をほんの少しだけ歩いてみよう。載ってない横道があったのでほんの少し歩いてすぐに引き返した。ふぅ……

  

 「おおー!地図が埋まってる!」


 多分、わたしの周囲2メートルくらいが埋まっていってる。お家なんかはその前を通るだけで地図に載るので中まで入らなくていいみたい。ウインドウ上のマップとも連動しているようで使い方はあまり変わらない。

 グランツさんにもらった地図はそのまま適用されたので地図を手に入れられるときはそうした方がわかりやすそうだけど、迷子防止には十分だ。来た道がわかるって重要だよ?


 「スキルのレベル上げたら範囲も広がるのかなぁ……」


 うーん……えいっ!


ピコン!

 〈スキル:地図がレベルアップしました〉


 5ポイントを消費してレベルアップさせた……ポイントがもったいないとか言ってられない。死活問題だからね……

 それに地図スキルの取得ポイントが5ポイントだったのでプラマイゼロ……っていうか称号の分を入れたらプラスだよねっ!わーいっ!


 さっきの横道にもう1度入り少しだけ先に進んでみることに……


 「おおー、やっぱり範囲が広がってるみたいっ!」


 多分、範囲はわたしの周囲3メートルくらいだと思う……1歩踏み出したらそれくらい先まで地図が埋まったから。

 しかも、地図の縮小と拡大ができるようになってる!うーん、地図スキルがレベルアップすれば便利な機能がついてくるのかな?

 確かナビさんも地点登録なども可能になるとか言ってたよね?


 「はぁ……街の外ならすぐに死に戻るからあんまり関係なかったけど、街の中は大変だなぁ……うん、地道に街中の地図を埋めてレベルアップ狙っていこうかな……」


 あー、疲れた。今日はさっさとホームに帰ってログアウトしよーっと……



◆ ◆ ◆


名前:リリー

種族:人間

性別:女性

状態:正常

種族レベル:Lv1

HP:35/40(+5)

MP:40/40(+5)

STR:5(+2)

VIT:5

INT:5

AGI:5

DEX:80

LUC:777(固定)

ステータスポイント:5ポイント

職業:農家見習い Lv2

スキル:鑑定Lv2、裁縫Lv1、採取Lv2、栽培Lv2、投擲Lv2、毒耐性Lv2、麻痺耐性Lv2、気配察知Lv1、隠密Lv1、地図Lv1→ Lv2

スキルポイント:34ポイント

取得可能スキル:成長促進、挑発、武器回収、瞑想

称号:遅咲きのラッキースター、挑戦者、方向音痴

所持金:7777G

装備:麦わら帽子、軍手、見習いのシャツ、見習いのズボン、見習いのブーツ、初心者用投擲ナイフ×3

持ち物:初級ハイポーション×5、初級マナポーション×5、初心者用裁縫セット、ロープ、水袋、火打ち石、ギルドカード(F)、葉っぱ×16、小石×22、木ノ実×8、体力草×31、魔力草×27、メモ紙、ペン


◆ ◆ ◆


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