第13話 街の外へ その1

 早めに夕飯を済ませログイン……


 「気をつけるんだぞ、リリー。畑は任せておけ……」

 「グランツさん、わかりました。ありがとうございます!」

 「リリーちゃん。これ、軽食よ。森で食べるといいわ」

 「わぁ、ありがとうございます!」


 バーバラさんから軽食を受け取り、井戸から水を汲み、水袋に水を入れた。うん、これで喉が乾いても大丈夫。


 「では、いってきます!」

 「「いってらっしゃい」」


 グランツさんとバーバラさんに見送られ街の外へ向かう。

 グランツさんたちに教えてもらった門は畑から1番近い西門。

 それ以外の門は地図に載ってなかったので選択肢はない……地図に載っていたおかげで迷子にならなかった。ふぅ、よかった。

 門番さんに特に止められることなく無事に街の外へ出ることができた。


 「おおー……」


 見渡す限り森だ……あれ、はじまりの街といえば草原で弱い魔物と戦ってレベルアップを狙うんじゃないの?

 他の門の外はそうなのかも……ここはたまたまかな?


 「ま、いっか……とりあえず見えるものは鑑定しつつ採取してみよーっと」


 意気揚々と出発。慎重に森に入って……


 「あれ、あんまり人がいないなぁ……この森って人気ないのかなー。あっ、そっか!他のプレイヤーはもっと森の奥に進んでるのかも……」


 木が生い茂って太陽の光を遮っていて辺りは薄暗い……上から虫が降ってきそうで気になる。風が吹くと葉っぱがパラパラと落ちてくるので、とりあえずアイテムボックスに入れる。


 「まずは迷子にならないように気をつけよう……帰れなくなったら困るし」


 慎重に歩いていたのに、何が起きたかわからないまま死に戻ってしまった。


 「はっ!ここは……ん?離れの部屋?死に戻ったのかぁ……」


 目を覚ますとベットに横になっていた。何か衝撃を食らった気もするけど……わけもわからず、死亡した。かすかに覚えてるのは突然地面がなくなりゴロゴロって……多分ちょっとした崖を滑り落ちたと思われる。死に戻るほどの衝撃を受けたのに服も破れてないし、汚れてもいない……初期装備って便利だねー。


 「上ばっか見てちゃダメだよね……足元も注意しないと」


 離れから出ると……


 「あら、リリーちゃんどうしたの?」

 「森に行ったはずじゃないのか?」

 「えへへ……たった今復活したところです」

 「ああ……異界の旅人は復活できるんだったね?」

 「はい、復活地点を離れの部屋にさせてもらったので……」

 「そうか。いくら復活できるとはいえ気をつけてな」

 「はい!ありがとうございます」

 


 グランツさんとバーバラさんに再び見送られ森へ入る。


 しばらく慎重に歩くと……崖を発見した……


 「こんな2メートルぐらいの高さで死んだのか……がーん」


 うん、足元にさえ注意してれば気づいたはず……ウロウロしつつ、鑑定や採取を出来そうな場を探す……


 「あれ、なんで動けないの?……ん?なんかブンブン聞こえない?」


 あ、蜂がいる。かなり大きい。具体的にはバスケットボールくらいの大きさかな……鑑定


 「名前はハニービー。ふむふむ。巣に近づくと凶暴化し攻撃する。針には麻痺の効果があるか……てことは刺されたのかー」


 この辺りのどこかに巣があったんだねー……で、気づかないうちに蜂に刺され麻痺状態になってしまったわけかー……全然身動きが取れない。その間も何度もハニービーに刺されるが、しばらくするとどこかへ飛んで行った。ふぅ……


 「これっていつまで動けないんだろ……時間が経てば動けるようになるのかなぁ?」


 鑑定はできるから動けるようになるまで目につく木や花、草や石を鑑定することにした。


 「うん、ほとんどただの草とかただの石だなー……鑑定のレベルが上がればもっと分かるようになるのかなー……ん?」


 どこからかガサガサと音がする……

 あ……茂みから飛び出してきたツノの生えたウサギに体当たりされた。


 「うわっ」


 麻痺のせいで何もできないまま倒れこむ……そして、再びウサギがこちらに向かってくるのを見ていることしかできなかった。


 「はぁ、ついてない……また死に戻っちゃったかー」


 うーん、体当たりはなんとか耐えられたのに……やっぱ最後のツノが刺さったのが原因だよねー……


 「HPがわかるようにできないのかなー」


 メニューをしばらく調べるとHPやMPのバーを視界の端に出せることを発見したので街の外に出るときは出しておくことにしよう。


 「よし、今度こそ!」


 テクテク……森に入って……隠れつつ採取……

 

 「ふっ……これならたくさん採取できるかもっ」


 ついでに落ちている石や枝も鑑定していく……夢中で鑑定していたら視界の端にあるバーのHPがじわじわと減っているではないかっ。


 「あっ、あれ?なんでHPが減ってるのかなー」

 

 また麻痺したかと思えば体は動く……なんでだろ……ん?耳元でシューシューと音が聞こえる。そういえば肩に何かがいる気がしてきた……恐る恐る肩を見てみると


 「いやー!蛇っ」

 

 痛覚設定のおかげか痛みは感じなかったけど、どうやら蛇に噛まれて毒状態になったことでじわじわとHPが減っているみたい。

 振り払おうとすると蛇がどんどん締め付けてきた。


 「まずいよー」


 だんだんと締め付けが強くなり身動きができなくなってきた。できることがないので蛇を鑑定するとポイズンスネークとなっている。体長は2メートルから3メートル、毒で弱らせ絞め殺すらしい。


 「あー、これ死に戻り決定かも……さっきのハニービーみたいにいなくなる気配ないし……」


 その間もじわじわとゲージが青から黄色、赤と減っていきHPがゼロになる=死に戻るということがわかった。

 うん、見慣れた天井だ……なんてったって短時間で3回目だからねー。


 「はあ……疲れた。バーバラさんのご飯食べてリフレッシュしよーっと」


 部屋で休憩して軽食を食べた。うん、バーバラさんが持ち運べるように作ってくれた意味よ……まだあったかくて美味しかった。ひとつ発見。アイテムボックスは時間経過しないみたいだ。


 「とりあえず今日は森で頑張るって決めたし、せっかくグランツさんが畑のお世話をしてくれてるんだから日があるうちは挑戦しよう!デスペナもないしねー」

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