017・前編ー走る意味(笑)
「ハッ……ハッ……ハッ」
こうも毎日走っていると学校に行く意味とかわざわざ走る意味とか、いろいろ考えてしまうのは人の
そもそもなぜ生き物は走るのか。元々は生きるために必要な機能だったはずなのだ。獲物と獲るため、敵から逃げるため。
強く、速く、逞しく。
走るとは、そういう事だ。少なくとも学校とやらに遅れそうだから、とかそんな理由ですることではないと思う。
いや、もしかしたら俺は今、命の危機に瀕しているのかもしれないが、今日は別になにかがあって、早く行かなきゃいけなくて、遅れたら青華にボコボコにされるとかそんなことはないはずなのだ。ボコボコでは無くとも、ボロボロにはなるかもしれないが(なぜボロボロにされるのか、俺には分からない)。
走るという生き物の機能を使うとしたらそもそもが危険な場所に向かってではなくその反対方向にこそ向けるべきなのだ。
前ではなく、後ろへ。
危険地帯へではなく、安全地帯へ。
そうあるべきなのだ。
しかしながら、本当に残念なことに、そうはいかないのが現実である。
行きたくなくても前に進まなきゃいけないし、ボロボロになると分かっていてもいかなきゃいけない。
走るという機能が生きるためにあるのなら、足は前に進むためにあるのだ。より、先にあって優先されるのが足なら、それに付属する機能である走るという事も、あるいは逃げるという事も、足につられ、危険な方へ向いてしまう。
そんな矛盾した機能が生き物に備わっている
より強く。
より速く。
より逞しく。
生きるために。
多くの矛盾を抱えて、多くの問題を抱えて。
完全ではなく不完全。
完成ではなく未完成。
だから人は美しいという人がいるけれど。完璧ではないから、人は美しいという、人もいるけれど。
不格好で格好良くなく、美しいまま、人は生きていく。
間違ったまま問題を先送りにしながら。
今だって、俺は少しずつスピードを落として、学校に着くのを先送りにしている。
今にも雨が降り出しそうな曇り空のように、どんよりとした気持ちが俺の心を埋め尽くしている。
「ん?」
思わず足を止める。
今なにかがピカッと光ったような……?それも空じゃなくて、学校のどこかで。
あ、ほらまた光った。
学校の方からオレンジ色の光が時々見えている。
なんだあれ。
「祭りか?」
あれだけ激しく光っているとなると祭りか訓練か。
どう考えても訓練なのだがそこで先に祭りが出てきたことにまず驚いた。
次に驚いたのは俺の通う高校、つまり、国立関東区対特異犯罪警備育成専門高等学校から黒い煙が上がっていたことだった。
向こうに見える恐らく校舎から上がっているであろう黒煙を視界に入れた瞬間から、俺はスピードを上げ、今度こそ、文字通り、本当の意味で飛び出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。