014―人間じゃないって誉め言葉かな?

 風が、強く吹いている。

 西の空から照らす夕日はその場の二人を燃えるよう赤く染める。

 住宅街の中にある公園で二人の男女が向かい合っていた。というか俺らだった。

 住宅街の公園に凍りついた男にその目の前に立ち尽くす小中学生のようで高校生の女子、が居た。……一体どういう状況なんだ。


 「なあ」

 「へっ?」


 呼びかけられて驚いたのか一瞬跳ねた青華が素っ頓狂な声を上げる。

 なに驚いてんだ。


 「いや、これ溶かしてくれよ」

 「う、うん。そうね。今溶かすわ」


 前述のとおり凍ったままだった俺の氷が青い粒子となって拡散していく。

 いい加減凍り過ぎて今にも壊死するんじゃないか。心配だ。

 嫌に素直に氷を溶かした青華は溶かした後もまた黙り込んでしまった。


 「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」


 長い。

 なっがい。

 三点リーダだぞ? それがこれだけ埋まるほど黙るって本来ありえない状況だ。

 が、先程あれだけの化物じみた相手と対峙したのだ、しょうがないともいえる。

 それからまたさっきの倍の三点リーダが埋まった頃にようやく青華が口を開いた。


 「……鈴人、さっきのは、誰? 何だったの、あれ。あんなの、まるで」


 ――人間じゃないみたいじゃない。

 人間とは思えない。化物じみた、怪物のようななにか。

 人間以外の生命体。

 人間のような生命体。

 あまりの実力差が青華にそう思わせ、俺にもそう思わせた。

 あれは、メデスは、人間ではない。あんなのが人間でいい訳が無い。

 そう、思わせたのだ。

 どれだけ化物のようでも人間ではあるのだろうが、それでも人間とは思えなかった。


 「――なにって、そりゃあ」


 人間とは思えなくても、化物みたいでもどうにも俺は、メデスの事が怖くは無かった。

 簡単に殺し合いをしろなんていう奴だが、なぜか嫌いになれない。

 だから俺は青華の問いにこう返したのだった。


 「謎のゴスロリ少女メデスちゃんだろ」

 

 と。

 

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