007ー細かいこと気にする奴はモテないけど大雑把な奴もモテない
「へい! そこのお二人さん!」
「え? 何、この人、一人?」
チャラい系を装って目の前の二人組へ近ずいて行く。………何やってんだろう俺。
一歩また一歩と歩みを進める。今の俺は歩き方から仕草の一つ一つまでちゃらんぽらん感が出ている。そうしろと言われた。青華に。
そして服もボロボロにしている。ボロボロにされた。青華に。
………本当に何やってんだろ。俺。そして何て事してくれてんだ、青華。
「何だか分からないけど怪しいんだけど、どうする?」
「あぁ、倒すか。怪しいし。何より一人であんなにボロボロなんだ。ペアも倒されてしまったんだろう。そして怪しいし」
「そうね。そうしましょう。怪しいから」
すごく物騒だ。そしてすっごく怪しまれていた。
とにかく、当初の目的であるところの混乱させることはできたようだった。
「お、オイオイ。そんな物騒な事しないで、話し合いを」
「発射!」
ヒュン!と何かが俺の頬を掠める。
「悪い! 外した!」
「外した! じゃねえよ! 危ねぇよ! 当たるところだったじゃねぇか! まずは俺に謝れよ!」
「こっちは当てるつもりで打ってるし、見るからにアブナイ奴にいわれたくないわ!」
そうだった。今の俺は『歩き方から仕草の一つ一つまでちゃらんぽらん感溢れる奴』だった。
ふむ。ここは一つ、本当の事を、真実を教えてあげないといけないかもしれないな。このままでは色々誤解したままになってしまう。
「おい! お前ら。今はこんな感じだが、普段の俺は見るからに誠実で嘘も吐いたことも無さそうな好青年だからな!」
「それはない」
「それはない」
ばれた。一瞬の間も無くばれた。何故だ。まぁいいかそんなこと。
敵に洗脳(直ぐにばれた)を掛けつつ距離をとる。
視線を戻すと、相手の男周りには何か丸い玉が浮いている。あれは……ガラス玉──ビー玉か!
つまり、女の方の能力がが『ガラス玉を作る』か何かで、男の方が浮かしている方の能力か。男の方の能力は十中八九『念力』だろう。
「やっちゃえ!」
「おう!」
女の方の掛け声で男が大量に浮かせたビー玉を跳ばす。
「しぇあ!」
カッコイイ声とともにビー玉の軌道を見切り避け、近づく隙を探している。
「こ、こいつ、只のアブナイ奴じゃない…!」
女の方は俺の動きを見て戦慄していた。
「ふ、今ごろ気づいたか。そう、俺はアブナイ奴じゃない。そう……俺は」
「こいつ、凄くアブナイ奴だったのね!」
「ちゃうわぁ!ぐ、づへっぇ!」
ツッコんだ少しの隙を大量のビー玉に襲われる。
「くっ、このビーダマン共め。これも作戦の内かぁ!」
「いや、100パー君が悪い上に私女だからマンじゃないし」
「いいんだよ! 細かいこと気にする奴はモテないぞ」
「大雑把過ぎてもモテないよ」
え!? マジで!? 青華の野郎、許さねぇ。
しかし、このままでは埒が明かない。もうスピードでぶっちぎるか………。
そう思うが早いか、霊力を足に溜め始める。
まだ、まだだ。もう少し……今っ!
「ハァ!」
溜めた霊力を放出し一息に男の方との距離を詰める。
そして今度は、肩と肘から霊力を放出し、殴りつける。
「オラァ!」
「なっ!」
雰囲気軽いガラスが割れるような音が辺りに響く。そして……
「青華ぁ!!」
「了解!」
俺の合図で飛び出してきた青華が男の足元を青・い・氷で凍らせる。
そして、青華の手元で日光を反射させたそれが鈍く唸りを上げる。そう、金属バットである。
更に俺も、もう一度拳を構える。
「「オラァ!」」
バットのフルスイングと霊力ブーストの拳を受け男の残りのシールドが全て無くなり、護霊の腕輪から失格を告げるアナウンスが流れる。
「さて、後は………」
俺と青華は同時に振り返る。
後ろにいるのはビー玉を作れるだけの無力な子羊が。
「え、とその、あの」
女は振り向き走り出した。逃走だ。しかも速い。
が、悲しいことに相手が悪かった。
「逃がさねぇよ」
霊力を使った俺の前ではやはり無力だった。
俺に捕まった子羊さん(勝手に名付けた)の顔はは恐怖に染まっている。
そこに近づいて来た青華は微笑みながら能力を発動させる。
「ヒッ!」
自分の体が凍らされ始めた事に気づいた子羊さんは小さく悲鳴をあげる。
(ご愁傷様です)
その日、子羊さんの心には一つのトラウマが植え付けられた。
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