ただしいいちにちのおくりかた

仕事のこと

職場で何か変わることがあるか、と問われたら、満ちるエネルギーのカラーが違うだけ、だと答える。



職種で何か問われることがあるか、と問われたら、職場で執務する業務の種類が違うだけ、だと答える。



上司で何か影響を受けることがあるか、と問われたら、理念でまとめられた優先順位が違うだけ、だと答える。



部下で何か結果が違うことがあるか、と問われれば、楽しさと苦しさの与え方が違うだけ、だと答える。



40代女、氷河期世代、硬い職種ではあるが、パートタイムに甘んじることができるのか、はたまた、生き延びているだけなのか。



おおよそ、成功しているとは言いがたいが、とりあえず、満足していることは確かだ。


ほんの少しだけ観察力と脳みそを使う仕事で、勤務条件には資格制限がある。また、特定の条件を満たす集団に、与えるサービスでもある。


パートタイムなだけあって、資格を要した限定された能力は使うが、専門家とは言い難いと思う。


パートタイムなだけあって、母であり、氷河期世代でもあるからして、転職はしてきたため、出世の言葉とは縁遠いと思う。



そんな私が、最近気づいたことがある。仕事を務めあげるために、欠かすことができない食べ物である。




にんにく。



にんにくを摂取すると、唾液腺あたりに、痺れるような苦さが一日纏わり付く。また、漏れなく、後ろのデスクに座る若き男子や、隣に座る美しき女子に、鼻につく匂いを蔓延させる。…お客様にも。


だが、しかし、欠かすことは難しいと覚った。40になって、知ってしまった。若き自分に教えてやりたい。


霊力の源を。


霊力と視えることに相関はない。


霊道が開けば、自分の意思にかかわらず、視えるものである。視たいから視えるものでもなき、視たくないから視れないものではない。


霊道も、自分の意思にかかわらず、開く。開きたいと思って開かれるものでもなく、開きたくないから開かないものではない。


自分の意思がまったく考慮されない、この理不尽さをなんとしてくれよう。しかも、霊能者の生き方と呼べるバイブルすら、存在しない。暗中模索しながら盤石な生き方を選ぶか、破天荒に玉砕覚悟で生き抜く覚悟を決めるか、いずれかに分類されることだろう。


霊道が開けばまず起きるのは、マインドリーディング。肉体の視点を合わせれば、どんな方の心も即座にわかってしまう、というアレ。開いた後、1か月は外出するのが難しい。


ウィンドウショッピングにすれ違った人ぶんだけ、その人の意識が身体をかけ巡る。川の水が流れるように、想いのしこりが止まらなければ、何も起きない。だが、意識が身体中をかけ巡ること自体、普通にはないことなので、驚いてしまって、無意識に気に留めてしまう。何かよくわからないが、身体を撫でるように温風が流れたり、ミント水がはい流れたりする、感じ、が、拭えないならば、誰でも、無意識に周辺を見渡すだろう。


1か月もすれば落ち着く。私は、この現象を、ネットワーク開通と呼ぶ。もちろん、ネットワーク開通をしたら、セキリュティソフトは必要だと思う。一般人には、ジョブズにはなれない。私は一般人だと思われるだけあって、この霊道を開く、は、実は誰にでも起きる。


ものすごく辛い想いをすることや、絶望に瀕すること、神秘現象は本当にあると信じること、など、それらしいものが条件かと思いきや、むしろ、逆である。


私は、視える世界をエンターテインメントだと信じて疑わなかった20代女子であった。第二子にも恵まれ、子育てに多忙を極めるなか、なぜ、私であったのかを問い続けるばかりだった。果ては、霊道が開いている、と教えてくれたWさんにも、知らないと言い続けた。本当に頑固やなと言われた。



リーディング機能のコントロール不能期間は、最初の1か月だけではない。ある条件を満たすと、アップデートをしなければならなくなる。コントロール不能から脱出することができる要件は、ひとつ。肉体と意識の使い方を知る、だ。


リーディングをしたくてしているわけではないので、リーディングしたくないと思ってリーディングをしないままでいると、リーディングして欲しい生霊が抑圧してくる。もちろん、生霊を飛ばしてくる、生きている人間は、生霊を飛ばしている自覚はない。


思う、想う、念う


念になるまでには、相当な時間やしつこさが必要に思うかもしれない。だが、念は、そこらじゅうで、そこかしこに飛ぶ。以心伝心と言われる現象は、実は、無意識に生霊を読みとったとも言える。


不思議ね、なんか嬉しいね、と思う現象は、実は、不思議でもなんでもなく、視える世界では、息を吸うくらい、いつでもどこでも起きている。


にんにくは、この生霊の素とも言える。想いを反芻して念いに至ったのち、生霊にするまでには霊力が要る。この霊力を簡単にパワーアップする食べ物がにんにくであった。


視える世界が、視えない世界にある食べ物に影響を受けるなんて、考えもしなかった。


にんにくで、自分の霊力をあげて、他者の念からガードできるくらいに、自分の意志を固くすることができるとは。


心のことは、メンタルの強さなんかでできてない。食べ物でできてるとは。


鈍感さは、筋肉質なシンプル頭脳でできていない。臭さでできているとは。


仕事で盛大な勘違いをされ、先輩にあたる方に注意を受けた。三時間話続ける電話を黙って聞いた。そして、意見を伝えた。決別に近い電話の切り方をした。霊体を3分のいち、食われたようなダメージがあった。

 1日しなければならなかったことをやめて、布団に潜った。

 夜中23時、風呂から上がった後、自室に向かう廊下にいたとき、その人の声で、勘違いしてたわ、と聞こえた。翌朝、勘違いしてましたとメールがあった。

 私は、ものすごく勝手な人だと思った。



視える世界は、視えない世界のものから大きな影響を受ける。



どうやったら、視えなくなるかを研究した。マッチョになるべくジムに通ったり、視えないふりをして生きたりもしたのに。



私が視えるとは宣言しないも、何か不思議な力があるのではないか、と気づく人もいた。観察力が高く、さらに論証による推理力が高いと評価する人もいた。


どちらも正解。


転職したばかりの仕事で、同行者とともに外出した際も、無意識に霊視してしまった。案件の調査をしに行ったのに、1時間近いドライブ中に、雑談の最中、結論を話してしまった。その結論の通りであった。まず、帰社までの1時間、沈黙が訪れた。

しばらくして、どうしてそう思ったのか、を聞かれたので、行く前に聞かされた情報で組み立てた推理を述べた。


私は、新人から、名探偵に格上げされた。



マインドリーディングコントロール不能状態と同時に起きるのは、名探偵だと感心されるくらいのアレである。霊視である。透視ではない。透視は、遠隔地にあるものや物質で隠されたものを、ヴィジョンで視るものだ。少なくとも、透視が苦手な私はそうだ。


名探偵パワーは、直感と同じ。ストーリーのある動画やヴィジョンを脳裏に視ることはない。ただ、分かる。


視える人だって言われたことが、あまりにもバカバカしくて、視えるんだってって、久しぶりに会った友人にちらっと話したことがある。ネタとして話したから、盛り上がって、職場を当ててみろと言われた。


あれは透視だったと思う。ヴィジョンで視たから、時間を巻き戻しした透視に近いと思う。カラオケボックスの一室で、紙に書いて説明した情報を、腕を組みながら聞いていた友人は、笑いながらうなづいていた。低いウンウンになり、押し黙り、最後には、叫んだ。


離婚を控えた友人が、私に友人としての助言を求めたとき、マインドリーディング、無意識に、いくつかしてしまった。半年くらい経つと、声を震わせながら友人が聞いた。ねえ、何か視えてんの、と。

そして、離婚すると言った友人を引き留めた。不吉なカルマの刈り取りを予知したからだ。具体的に何が起きるかまでは、わからなかった。どれくらいの時期にどんなことが起きるかを伝えた。


五年くらい経って、彼女とは、視える世界の話もしなくなった頃、近況を話したりした。教育現場で働いていた私は、彼女の子どもに関するトラブルの処し方を、現実的に助言した。彼女の子どもは不登校にもなり、彼女自身は2.3年ほど、鬱であったと思う。


私が友人にした助言は、


元旦那の行動は現実的には間違ってはいるが、友人は心で許さず、与えられたカルマをクリアにせず、何かを知れなかった。次は逃げられないようにして、あなたの娘が犠牲になる。5年後、あなたが許せるようになるために、あなたの娘は何かの被害を被る。


あのときのことを、彼女が思い出したかは分からない。


ただ、人は、理解を超えるものが本当にあるのだと分かる形で目の前に起きたとき、必ず、拒絶する。



わざわざ、当て馬になり、そんなストレスにさらされるのは、無意味なことだと思う。


だから、コントロール不能状態のマインドリーディングや霊視も、さきまわった言動になるために、できるだけ避けるべきだ。


それでも、視えることを教えた人には笑われる。隠し切れてないよ、私達を観察してると、人が話をする前に、動いてるのだそうだ。友人Dも私も、人の想いに同じ感度だねって。


霊能者のアイデンティティを受け入れてくれる人が、友人として残ってくれてる。ありがたいことに、そんな友人が私には、いてくれる。


私達の特性を覚らせずに、さらには、生霊に負けないで影響を受けずに仕事をすることは、至難の技である。


バレてはいけない。

社会に認められない障害に、負けてもいけない。


ネットワーク開通後、すぐに、謙虚さを本能に叩きつけるかの如く、散々悪霊憑依が起きる。憑依中は、憑依されていることに気づかない。憑依だと気づいたときには、憑依が解かれる。憑依だと気づいても、まとわりついて仕方ないときは、自分ではない自殺願望に弄ばれる。


ネットワーク開通後が一番ひどい。


早くセキュリティソフトを入れなければならないが、先にも書いたように、スピリチュアル大好きな人間が霊道を開くことができるわけではないので、スピリチュアル世界があることをまず受け入れることに壁があるわけだ。ゆえに知ろうとしないばかりか、私の友人が叫んだように生理的な嫌悪と闘うことになる。


この頃、視える世界を忘れるくらいになればなるほど、悪霊憑依が起きていた。注意すれば、気持ちをモニタリングすることができる。リラックスをすれば気持ちは自由になる。自由には責任が伴うが、心の自由にも責任は問われる。


愚痴、不平不満、悪口、を聞いただけでも、自分にしっかり邪気を祓うように施さないとそれに侵食されて、悪霊憑依が起きる。


私の友人が叫んだように、邪気を祓う、の五文字にすら怒りが湧いて仕方ないのに、自分から積極的に邪気を祓うことなど、するはずもない。


…ゆえに、この時期が一番危険な状態であると思う。私の場合は、一年、抗った。一年、セキュリティソフトを入れずに、視える世界のWさんに迷惑を撒き散らした。一年偲んだが、生きていくこと自体が難しいと分かり、セキュリティソフトを入れることにした。


セキュリティソフトもアップデートしなければ、最新のウィルスに対応できないことも知らずに。


つまり、生霊を飛ばしくる人間にはたいてい悪霊がついている。生霊を処することができたら、次は、霊能者であることを隠して、一社員として現実的に仕事をしながら、無自覚に悪霊を祓うことだけはいっぱしにやらねばならないという事態に陥る。


私は、こういう世界に生きている。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ワンダーランド Dandelion @laylalion

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ