第十話 エピソードタイトル未定[0.1版]
「え? ここにいない昏睡被害者もいるんですか?」
俺は予想外な返答に変な声を上げてしまった。
「ああそうだよー。ええと、確か少し前の奴は
道端に置かれた休憩用の腰掛けに座った腰の曲がりまくったおじいさんは、手にした杖の頭を撫でながらそう教えてくれた。
『
俺と
被害者たちの共通点を探る為だ。
今日も空は晴れていたが、雲があるため暑すぎず日中は動きやすい。
日のあるウチに集められるだけの情報を集めようと、俺たちは昨日以上に温泉地中を歩き回っていた。
「昏睡状態だったのに帰れたの? その人」
立ったまま話を聞いているとは違い、おじいさんの横にちゃっかり座りながら、
「迎えの人間たちが担いで帰って行ったよ。まぁ、いつまでもここにいられても困るしねぇ」
おじいさんは、すっかり真っ白になった無精ひげが生えた顎をジョリジョリいわせながら撫でた。
「じゃあ、昏睡被害者の人たちでここにいない人もいるんだー。どれぐらいの人数いたのかなぁ?」
黒髪をサラリを揺らし、
おじいさんは、そんな
「うーん。半分ぐらいの奴らはもういないんじゃないかね。昏睡した奴らの多くは村の外の人間だったからなぁ。身元が分かる奴らは身内に連絡して引き取ってもらったって話だよ」
そんな。大半の被害者はもうここにはいないなんて。
念のため色んな被害者を調べたかったんだけどな……
「残ってる人もいるの?」
「もともとこの村にいた奴は自分の家にいるさ。他の……身元が分からない奴らは、診療所にいるって聞いたけどねぇ」
診療所──俺がこの村に来て最初に行った(正確には担ぎ込まれた、だけど)場所か。
あの
俺は、思わず診療所のある方向への視線を向けた。
「そういえばさ! ここの温泉って若返りの効能あるんだよねっ!? おじいちゃん、実はこう見えて百歳超えてたりする!?」
突然
すると、おじいさんは一瞬ビックリするものの、ところどころ無くなってる歯を見せて鷹揚に笑う。
「お嬢ちゃん! そんな事信じてるんかい。
そして、
「え~。だってそう聞いたよ~。じゃあなんで『若返りの効能がある』なんて話が出たのー?」
おじいさんに撫でられながら、不服そうに
「ああ~。それは……うーん。まぁ若返ったように見える奴もいるからだろうなぁ」
「……若返ったようにみえる人、ですか?」
俺のメモを取る手が止まる。
どういう事だろうか?
「ほら、診療所の
それがな、ここに居ついて暫くしたら顔色が大層良くなってな。皺も減ったんだよ。髪も黒々として。
それからかな、若返りの効能があるって言われ始めたのは。
ま、ここに来るまでは大変だったそうだから、ここに落ち着いて温泉で身体を休めて、上手いもん沢山食うようになったからだろうけどなぁ」
「へー……」
おじいさんの言葉を聞いた
「ボクもここに住んじゃおうかなー。ボクも仕事で
いや、どこが? 肌ツヤツヤじゃん。輝いてるよ。昨日の夜だって不思議な液体塗った紙を肌に貼ってたじゃん。
「ん?
「いいや?」
「ホントにー?」
俺の飽きれた視線に気が付いた
***
「昏睡被害者たち、外部の人が多かったんだね」
茶屋の前の腰掛けに座り、道行く人たちを見ながら俺はそう呟いた。
色々教えてくれたおじいさんと別れ、俺たちは村の中心部の方まで戻ってきた。
一度郵便局に寄って本部に報告の電報を打つ為だ。
同時に郵便局の裏に
「なんでだろう? 別に村にも沢山人がいるのに。何がダメだったんだろう」
横に座る
「物取りのついてでに? いやでも、それなら別に昏睡にする必要はないよね。そういえば、なんで昏睡状態になるのかも分かってないんだよなぁ。
どんな異能なんだろう」
手にした湯飲みから一口お茶を飲み下してから、再度考えをそのまま口にした。
「……例えば。『若さを吸い取る』、とかね」
ポツリと、
その言葉に、俺はギクリとする。
「若さ?」
「そう。言い換えると、人の『気』、精気、生命エネルギー。それを吸い取られちゃうから昏睡するんじゃないのかなって」
湯飲みをクルクル回し、揺らめくお茶を見つめる
「それに……ここの温泉って『若返りの効能』があるって噂が立ったでしょ? なんか、繋がりを感じるんだよね」
確かに。
そういわれれば、そんな気がする。
「じゃあ、
「それは分かんない。まだどう発現する異能か不明だし。それに、先生がここに来たのは三年前でしょ? 事件発生が二年ぐらい前で少し時期がズレてる。もし先生が異能者なら三年前から事件が発生し始めるだろうし」
そっか。
「じゃあ違うのかな……それにしては──」
そう呟いてから、俺は言葉を飲み込んでしまった。
行き交う人の中に、知ってる人を見つけてしまったから。
近くに
「……火のない所に──煙はたたず」
そしてぴょいっと立ち上がると、
「今がチャンス。もしかしたら
俺の反応など見ずに、
……ええっ!?
……何を言ったんだ
そのままそこで
そして、静かな足取りで
「あの……キヨちゃんが、
深い緑の着物を着た
「あ、その。ええと、ですね。ちょっと、傷の具合をですね、聞きたくて……」
何も考えてなかった俺はしどろもどろになってしまった。
後で見てろよ……
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