第15話 大韓民国の復活

 八月十三日午後十一時、仁川空港沖、北緯36度95分21秒・東経125度7分27秒の地点に海上自衛隊潜水艦「とうりゅう」が浮上した。艦橋に豊島艦長、見張りの隊員とラ大佐が現れた。艦橋だけを突き出しているので艦上には上がれない。

 暗闇の中から微かに複数のエンジン音が近づいくるのが分かった。

「肉眼でも確認出来ました。漁船が五隻、確認できます」

豊島艦長の言葉にラ大佐が大きく息を吐き出した。

「ありがとうございました。迎えが無事に来てくれました」

 二十名の旅団隊員が漁船に乗り移った。お互い敬礼をしながら別れた。同じような光景が十三日に十地点、十四日に十地点で無事に行われた。大韓民国海軍特殊戦旅団隊員全員が無事に朝鮮半島に上陸を果たした。


 八月十五日「光復節」の日、朝鮮は祝日。前日からの宴会で朝鮮中が深い眠りに就いていた。

 午前二時。ソウル市内各所で銃撃と砲撃が始まった。旅団隊員二百名と大韓民国国民二万名が朝鮮人民軍の拠点、放送局、電力設備の制圧を始めた。

 朝鮮人民軍の士気は低かった。「命を懸けて、金正恩元帥の為に戦おう」という者は皆無だった。意表を突かれたせいもあるが、ほとんどの兵士は一発の弾も撃つことなく投降した。

 平壌以外は数時間で制圧が完了した。平壌はさすがにすんなりとは行かなかった。金正恩元帥を護る「護衛司令部」の抵抗は激しかった。

戦闘開始から十八時間後の八月十五日午後十時、平壌は完全制圧された。大韓民国が復活したのだ。

 復活と同時に大韓民国の空軍基地、空港には「イギリス連邦軍」が直ぐに入った。オーストラリア海軍艦船、ニュージーランド海軍艦船も朝鮮半島の周囲に集結した。

朝鮮半島の国境に集結していたロシア軍と中国軍をけん制する為だった。翌日にはイギリス空軍と海軍、インド空軍と海軍も朝鮮半島の守備に加わった。

 復活した三日後、ラ大佐が暫定大統領に就任した。ユン少佐は国防大臣に就任した。


「『日本国復活に協力を惜しまない』と伝えてくれ」

ラ大統領はそう言って、烏山空軍基地からニューデリーに向かうユン国防大臣を見送った。










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