第16話 日本復活への希望
「インドか…確かに、今一番頼りになる国かもしれませんね。インド政府の思惑はどうであれ元に戻るのが先決ですから。大韓民国が復活して、そちらに注意が向いている今がチャンスです。急ぎましょう」
順一と野口の報告を聞いた田中一佐は、腕組みを解き顔の前で手を組んだ。
「確かにチャンスです。考えていた以上に早く作戦実行になりそうだ。ところで、菊地さんの準備は万全ですか」
野口が心配顔で順一を見つめた。
「はい、作戦は完成しました。『私と華村さんの趣味』ということで王立研究所でスーパーコンピューターを借りてシミュレーションも済ませました。想定通りの結果を得ました。いつでも遂行出来ますよ、魚雷の準備が整えば…」
「あと一週間でタイガーフィッシュのセッティングが完了します。次に、朝鮮半島の任務を完了した潜水艦隊は、順調であれば一週間から十日でシドニー湾に帰還の予定です」
「それなら良かった…」
田中一佐と野口の二人は暫く眼を閉じた。
順一と華村は吹雪で囲まれたシドニー湾ガーデンアイランド基地に入った。田中一佐は二日前から基地に籠っていた。基地内で日本人だけの「独立国家日本復活作戦会議」を行う為だった。五十名近くの日本人も冬の嵐に紛れてガーデンアイランド基地に入っていた。その全員が私服で集まった潜水艦艦長と副艦長達だった。集まったメンバーの階級を分からないようにする為だった。極秘に存在している潜水空母「びしゃもん」長田艦長と「すさのお」飯島艦長の二人を会議に参加させる為だった。艦長の人数を分からなくしないと「潜水艦の数と艦長の人数が合わなくなる」からだ。
会議は二日間に及んだ。「人工地震作戦」を遂行するメンバーだけの会議も行われた。
ダーウィン空軍基地からニューデリーに向けてオーストラリア空軍機二機が飛び立った。一機には、作戦会議に参加するオーストラリア政府メンバーとオーストラリア軍メンバー、もう一機には、菊地順一、田中一佐、飯島艦長、エミリーが搭乗していた。
「いよいよ、日本復活の希望が見えて来ましたね…」
華村の前向きな呟きに、男たちは誰も言葉を発することは出来なかった。
ヒンダイ空軍基地の地下シェルターに増設された「独立国家日本復活作戦会議室」に、参加する国の政府関係者と軍関係者五十名ほどが顔を揃えた。その中にユン国防大臣がいた。
「復活おめでとうございます」
田中一佐の言葉にユン国防大臣は口角を上げた。
「日本国の復活作戦には、大韓民国軍を総動員します。ラ大統領自ら指揮を執るつもりでいます。必ず復活出来ますよ…次は、東京で逢いましょう」
ユン国防大臣は一人一人と握手を交わした。
会議は順調に進行したが、順一の気持ちは少し複雑になっていた。
「確かに、オセロゲームのように『民主主義国家』が『専制主義国家』にひっくり返され旗色が悪くなってきている。『ロシア、中国の覇権主義を止めて』今の世界情勢を逆転させるのが一番の目的なのか…」
イギリスとインドは「自分達が世界の覇権を取る番だ」と考えているようだった。
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