第4話 お願い、優た〜ん♡ 天城優輝(あまじょう ゆうき)は翻弄(ほんろう)される★

1 いもうと小悪魔ぷちでびるのようにお強請ねだりする


「おねがい、ゆうた〜ん♡」

 ビクッ! いもうと天城辰子あまじょう たつこあまったるいこえおれ身体からだ硬直こうちょくさせる。

 たかられる。瞬時しゅんじおもった。

ゆうたんにおすすめのほんがあるの♡ きたい?」

 きたくない! ヒグマかなんかあらわれて、このお強請ねだいもうとべちゃってくれねえかな?

(この希望きぼうとお将来しょうらいかなえられることとなる。いもうと旅行先りょこうさき北海道ほっかいどうにてヒグマべられるという非業ひごうげるのであった。

 くわしくはプロローグを参照さんしょう)

今月こんげつはピンチでな」

TSUTANYAツタニャ面白おもしろそうなほんつけたの♪

 『有毒生物ゆうどくせいぶつ読本どくほん』と『有毒植物ゆうどくしょくぶつ読本どくほん』っていう二冊にさつね」

天地てんちがひっくりかえろうとけっしてわんぞ! だいたいなんだ、その毒々どくどくしいタイトルは?」

「え〜、おにいちゃんのきそおなえイラスト満載まんさいなんだよ?」

「おまえ趣味しゅみ全開ぜんかいほんじゃないか!」

「そんなことない! べつに『え』に興味きょうみないもん!」

「そっちじゃなくて『どく』のほう!」

「え〜、どく面白おもしろいじゃ〜ん! おにいちゃんも興味きょうみちなよ」


2 いもうと淫魔サキュバスごと誘惑ゆうわくする


「なんで婚約者こんやくしゃってもらわなかったんだ」

「だって婚約こんやくしてわずか13にち金田かねだグループが倒産とうさんして、国外逃亡こくがいとうぼうするなんておもわなかったんだもん」

 まあたしかに金田かねだグループがこんな短期間たんきかんつぶれるとは予測不能よそくふのうだった。

「ねえねえ、ってって〜」

「ええい、くどいぞ! おとこ一度いちどわない』とったのだ。たとえ九天きゅうてんつるともけっしていはしない!」

「むぅ。そこまでうんならぎゃく絶対ぜったいわせてみせるよ」

 いもうとがキュピーンとひかる✴

 まずい。へんなスイッチはいったかも。

「ふっふっふー♪ ゆ〜う〜たんっ↗ ってくれたらわたしきにしていよ?」

 などとのたまいつつ制服せいふくのスカートをスルスルとたくしげる。

「ちょっ莫迦ばか、おまえ💦」

 いもうとふとももが段々だんだんあらわになり……。

「パッ♡」

「あっ!」

 あとすこしというところではなされスカートのこうへとかくれてしまう。

今日きょうあついね」

とブレザーをぎカッターシャツのボタンをはずはじめる。

 色仕掛いろじかけでせまるつもりか。だが生憎あいにくいもうと発情はつじょうなどしない。

 しかしおれ不治ふじやまいおかされていた。そのやまいは、お医者いしゃさまでも草津くさつでも完治かんちすることが出来できず、なおせるくすり開発かいはつ出来できたらノーベルしょう間違まちがいなしとわれている。そのやまいとは……。

 なにかくそう。おれはロリコンなのだ。

 容姿端麗ようしたんれい成績優秀せいせきゆうしゅう文武両道ぶんぶりょうどう博覧強記はくらんきょうき明朗会計めいろうかいけい、いやちがった。明朗快活めいろうかいかつ

 女子じょしからはすべからく求愛きゅうあいされ、教師きょうしからは絶大ぜつだい信頼しんらいけ、男子だんしからは羨望せんぼうたれている(読者どくしゃにはたしかめようがないから盛大せいだいる)。

 そんな完璧超人始祖パーフェクトオリジンおれたまきずがこのやまいなのである。

 ゆえ小学生しょうがくせいえらぶところのない、ちんちくりんないもうとぎゃく反応はんのうしてしまう。なんてこった!

 これがいもうとにバレればおれのこりの人生じんせいを『いもうと奴隷どれい』としてごす羽目はめになる。

 なので断固だんことして抵抗ていこうこころみる。

「ふっ、いもうとよ。おれ色仕掛いろじかけでとそうというつもりだろうが、そのつるペタちんちくりんな身体からだからは、一片いっぺん色気いろけかんじぬわ。出直でなおしてまいれっ!」

「ふえっ?」

 カッターシャツのボタンをはずいもうとまり、おれつめるひとみにはみるみるなみだまってあふし……。

「ふえ〜ん。おかあさーん。おにいちゃんがわたしのこと、ちっぱいのぺちゃぱいのまないたあわちちってった〜っ」

 きながら部屋へやていこうとするいもうと

 しまった。かあさんはおこらせるとおによりこわやまかみ仕方しかたあるまい。

辰子たつこ。その毒々読本どくどくどくほんな、一冊いっさつおう。いや、このあにどくについて猛烈もうれつまなびたくなったのだ」

 この一言ひとこといもうとはピューンとUターン↩

「ホント? おにいちゃんもだれ毒殺どくさつしたくなったの?」

 いや、なるものか。っていうか、おまえだれかを毒殺どくさつするつもりなのか?

いま物騒ぶっそう文言もんごんこえてきたのだが?」

のせいだよ♡ 『生物せいぶつ』と『植物しょくぶつ』、どっちがい?」

「ちょっとそのまえに。今月こんげつはピンチなんだ。だから来月らいげつまでってくれないか。来月らいげつかならってやるから、な?」

「むうぅ〜っ」

 フグのようにほおをふくららませ不機嫌ふきげんあらわにするいもうと🐡 しかしすこしでも先延さきのばししておかないと。

 と、ここで。

優輝ゆうき〜っ! 電球でんきゅうえてくれない〜?」

こえこえてきた。かあさんだ。なんのがれる好機到来こうきとうらい

かあさんがんでるからってくる」

行ってらっしゃい い  っ  て  ら  〜 ♪」

 いもうとしぶることなく笑顔えがおおくしてくれた。たすかった。


3 いもうと悪魔的デーモニックよわみをにぎ


 それにしてもふくれていたいもうと何故なぜ笑顔えがおだったのか。

 おれ電球でんきゅうえながらかんがえた。そしてひとつの結論けつろんたっしてしまった💡

 就中なかんずくおそろしい結論けつろんに。

 ちょうダッシュで電球でんきゅうえBダッシュで二階にかい自室じしつかう。そこでおれたのは、そむけけたくなるような惨劇さんげきであった。

「あっ、おにいちゃん、お疲れ様ですお  つ  で  す♡」

 おれ気付きづいたいもうとねぎらいの言葉ことばけてくれる。が!

辰子たつこよ、なにをしている」

 なにをしているかは一目瞭然いちもくりょうぜんだった。およそ人類じんるいかんがえうる最悪さいあく事態じたいまえにあった。

「おにいちゃんの〜、お・た・か・ら・さ・が・し?」

 最後さいごの『し?』の発音はつおんのところでくびかしげてみせる。

 その成果せいかたしかめるでもなかった。まえにはあたらしい生命せいめいすのに必要ひつよう崇高すうこうなる儀式ぎしき撮影さつえいした映像資料エロースDVD数点すうてんに、おも成人男性せいじんだんせい対象たいしょうとした男女だんじょあいいとなみを撮影さつえいした写真しゃしん中心ちゅうしん構成こうせいされた雑誌エロースぼん数冊すうさつ。さらに……。

「こんなのもつけちゃったんだけれど?」

いつつゴミばこなかから汚物おぶつつまげるようにまるまったティッシュをした。

すみませんでした さ ー せ ん し た ー 。もう、ご勘弁かんべんください★」

 土下座どげざひたいゆかこすりつける。無条件降伏むじょうけんこうふくポツダム宣言受諾せんげんじゅだくである。

「やだな、もう。おにいちゃん、かおげてよ」

 かおいもうと表情ひょうじょうる。小悪魔こあくまなんてなまぬるいものじゃない。微笑びしょうたたえたかんばせはまさに悪魔あくまのそれであった👿


4 いもうと女王クイーンのようにかしずきをもとめる


 コーヒーをれようと台所だいどころかうと。

「おにいちゃ〜ん、わたし、ミルクティーねー☕」

 いもうとがリビングで毒々どくどくしいほんみながら、おれこえけてくる📕

 苦々にがにがしくおもいつついもうとにはさからえない。

 自分じぶんいもうとのふたりぶんものっていくと、

「ちょっと、おかあさんのぶん用意よういしないなんてしんじらんない。おやないがしろにするなんて畜生ちくしょうむしけらのような息子むすこね?」

ひどわれようだ。むろん発言主はつげんぬしかあさん……ではなくいもうと辰子たつこだ。

 むっとして、

「これはかあさんとおまえぶんだよ。おれむのをやめたんだ」

 とかえした。すると、

「へー。おかあさん、コーヒーでいの? それおにいちゃんのマグカップだよ。そんなのでんだらおにいちゃんきんおかされて病気びょうきになっちゃうよ?」

 うにこといて病原菌びょうげんきんあつかいかよ。

 いもうとにらっていると。

「まあまあ。ふたりともケンカしない。おかあさんはつめたいモノみたいから自分じぶんりにくわ」

 かあさんがせきつ。おれはコーヒーを自分じぶんもとへとせながら、

「さすがかあさんはかせてくれるな」

つぶやく。けじといもうとも、

なにってんの? おにいちゃんきんおかされて病気びょうきになるのがいやだったからにまってるじゃない?」

「なんだと!」

「『美少女びしょうじょクラスメイトと保健室ほけんしつでセックチュ』だっけ? おかあさんにおしえてあげたら、おにいちゃんも成長せいちょうしたなってよろこんでくれるかもよ?」

「くっ。卑怯ひきょうだぞ、毎日まいにち50えんわたしているじゃないか!」

「おにいちゃんがわたしさからわなきゃいだけのはなしでしょ? なんでっかかってくんの? 莫迦ばかみたい」

 ちっ。なんとかいもうと弱点じゃくてんつけないと一生いっしょう奴隷どれいのままだ。

 かあさんがもどってきてテーブルのうえにおさらく。○マザキはるのパンまつりでもらった景品けいひんだ。そのうえには、うさちゃんりんご🐰

「おかあさん? うちでトリカブトそだてない? トリカブト栽培さいばいするのに特別とくべつ許可きょかとか必要ひつようないんだって?」

 かあさんがせきすわるがはやいかいもうとはなける。つかトリカブト栽培さいばいって、そりゃヤバすぎだろ!

「うちでトリカブトなんかそだてて、もし事件じけんとかあったら、うちがうたがわれちゃうわ」

「じゃあ鈴蘭すずらんは? 鈴蘭すずらんひところせるだけのどくが……」

 だからなんでどくのあるやつばかりをそだてたがる? そのうちクラスメイトを毒殺どくさつしたりとかしねえだろうなあ?

 りんごをえコーヒーもなくなったところでせきつ🍎

 と。

「おにいちゃん、おさら! おかあさんに片付かたづけさせるつもり?」

 くそっ! にくたらしい。


5 いもうとはそれでも妖精フェアリーのようにあいらしい


 おさらばそうとするとかあさんが、

「さっきは優輝ゆうきもの用意よういしてくれたでしょ? 今度こんど辰子たつこばんじゃない?」

ってくれた。形勢けいせい逆転ぎゃくてんだ。

 一瞬いっしゅんほおをふくららませくちびるとがらせるも、かあさんにさからうのは得策とくさくじゃないとみたのだろう。無言むごんがり、おさら全員分ぜんいんぶんのマグカップ、グラスをとうとする。なんかあぶなっかしい。

半分はんぶんってやるよ」

「おかあさんはわたしをご指名しめいだから!」

無理むりすんなって」

あるきながらうばいをしていたため、なにかにあしられた辰子たつこ体勢たいせいくずして、

「きゃっ!」

こえげる。

 おれ転倒てんとうふせぐためマグカップとグラスをにしたまま辰子たつこめた。

 しかしパンまつりで入手にゅうしゅしたおさらは、辰子たつこうでがった瞬間しゅんかんにすっぽけ、天井てんじょうたり、かべけてあるミョルニールハンマーに激突げきとつしフローリングのゆかへとんだ。しかも直後ちょくごにミョルニールがたおれてきて頭部とうぶがおさら直撃ちょくげきした。

 一瞬いっしゅん出来事できごとであった。せっかく苦労くろうしてたおさらが……あれ?

「ふたりとも怪我けがはない? それならかったわ。おさら? 平気へいきよ。このおさら頑丈がんじょうだから、ミョルニールの直撃ちょくげきくらいじゃビクともしないわよ」

 そうってかあさんがわらう。たしかにおさら無事ぶじだった。ってかミョルニールが直撃ちょくげきしたら防弾ぼうだんガラスだって粉々こなごなだろ? どうなってんの?

 とはいえいもうと無事ぶじかった。もしおれ咄嗟とっさめなければ、たおれてミョルニールの直撃ちょくげきらっていたかもしれない。いもうと身体からだふるえている。

「おにいちゃん、たすけてくれて、ありがとう」

 れてほおをしゅめながられいいもうと妖精ようせいのようにあいらしかった。


 つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る