第2話

朝起きると雨が降っていた。


雨が降ると元気が出ない。


28歳にもなってまだそんなことを、と

自分で自分を冷めた目でみる。


職場へと向かう地下鉄に乗り込みながら

考える。


昨日の夜、夢の中に久しぶりに

あの人がでてきた。


寝る前に考えていたからだろうか。


だからってなんてことない。


もうあれから1年以上、いやもっとかな。


不倫、だった。


不倫、という言葉を聞くたびに

少しだけ、ほんの少しだけ身を固めてしまう。


ほんの少しで済んでしまうところが

私の性格なんだろうな。


今時よくある話だ。

上司に恋をする。

その上司には奥さんがいた。

だめだとわかっていても

どうしても気持ちをおさえきれなくて、、、


そこまで考えて、やめた。


自分にまで嘘をつくのはよくない。


そんな綺麗で純粋な話ではないのだ。


はっきり言って

欲しかった。

ただそれだけ。

手に入れられるものだと直感で思った。


それが思いの外、難しかったというのと

単純に辛かった。


当時は色んなことに涙を流しすぎて

自分を保つのが大変だった。


考えてみれば28年生きてきた中で

たった2年間、だった。


それっぽっちの2年間になんだか今でも

妙に縛られている気がして時々嫌になる。


細かなことを思い出せなくなってもなお

まだ本当の意味で終わっていないのだ。


私の中ではね。


そんなことを考えていたら

悲しくなってきて、朝から泣きたくなった。


降りる駅ですくっと立ち上がり

悲しい気持ちを身体から振り落とすように

ホームの階段を1段飛ばしでかけあがった。


雨のせいにしたい。


こんな気持ちになるのは。


勘違いしないでほしいのは

未練があるわけでもなく。


今の現状はそう

不幸せじゃない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る