閑話 〜栞と図書館〜

 栞ちゃんと学校に行った日から数日が経ったある日、栞ちゃんに図書館に行こうと誘われて図書館にやってきた。

「本を探してくるから、好きなところに行っていていいよ」

「じゃあ、また後でね」

 栞ちゃんが本を探している間、図書館を見て回る。

「うぅ、あと少しなのに〰〰っ」

 背の小さな少女が背伸びをして、高いところの本を取ろうとしていた。

「取ってあげるよ。この本であってる?」

「そう、それ!」

 少女が指差した本を取る。タイトルを見ると、難しそうな本だった。

「難しそうな本を読むんだね」

「私もそう思うけど、お父さんが『読め』って言うの。それに『夏休みは図書館で勉強するように』とも言っていたけど、本当は私だって遊びたいよ」

「お父さんは何をしている人なの?」

「よくわからない。最近はお母さんが遠いところに行っちゃって、ホテルにずっと泊まっているんだぁ。だから、二日前から会ってないの」

 複雑な家庭なのかな。

「お父さんは元気なの?」

「ううん、元気ないよ。一緒にいると鬱々とした気分になるからこれでいいんだ。でも、やっぱり遊びに行きたいなぁ。遊びに行っちゃダメかな?」

「勉強も大事だけど、遊ぶことも大事だと思うなぁ」

「やっぱり、そう思うよね。遊ぶことも大事だよね。夏休みはいっぱい遊んで、いろんなことを学ぶっ!」

 このままでは遊ぶだけになってしまい、お父さんに怒られてしまう可能性がある。

「勉強もするんだよ?」

「もちろん、勉強もするよ。だから、この本は借りて帰ることにする」

 少女は貸出機の方へ走っていくが、立ち止まって振り返った。

「お姉ちゃん、ありがとう。私、雲龍希星うんりゅう あかりっていうの。またね」

夢乃風夏ゆめの ふうかだよ。バイバイ」

 希星ちゃんに手を振った。

「さて、栞ちゃんは借りる本が決まったかな?」

 栞ちゃんを探そうと思って通路を歩いていると、ある一冊の本が気になり、手に取ってみる。その本はかなり古そうで、紙が黄ばんでいた。

 少し内容を読んでみる。

『強大な敵と戦う少女と少年がいました。

 その強大な敵には四人の守護者がいて、守護者の一人の幻影使いが二人の前に立ちふさがりました。

 少女は神の剣を使い、少年は氷炭剣ひょうたんけんという氷と炎の相反する属性を持つ剣を使い、幻影の守護者に立ち向かいます。

 しかし、どんなに強い装備を持っていたとしても、幻影が相手では全く効果がありません。次々と幻影を呼び出す幻影の守護者にどう立ち向かえばいいでしょうか』

 ここまで読んで展開が気になるから借りてみることにした。

「なんか聞いたことがある話だし、結末が気になる」

 栞ちゃんを探していたことを思い出し、通路を歩いていると栞ちゃんは奥の棚にいた。

「借りる本は決まった?」

「うん、これにする」

 栞ちゃんは本を五冊ほど持っていた。

「少し持とうか?」

「大丈夫。借りてくるね」

 私も一緒に本を借りた。


 外でも普通に生活ができるようになったし、前よりも明るくなっている気がする。栞ちゃんはもう大丈夫そうだ。

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