閑話 〜水琴霊華〜

 あの出来事から数日後、私は夏期講習を受けるため学校にいた。

「ふぁあああ〰〰」

 夏期講習の一時間目が終わり、休み時間となった。

「あら、風夏さん、もうお疲れですの?」

「なんだ、霊華れいかちゃんか」

 机の横にいたのは、チェリーレッド色のショートヘアで制服を着たお嬢様みたいな少女の水琴霊華みこと れいかちゃんだ。

「私では不満ですの?」

「そんなことないよ?」

「いえ、そんなことありますわっ!」

「あっ、そうだ。この前、一緒に天体観測しなくて良かったの? 何も言わずにいなくなっちゃったから心配したよ」

 学校の謎を解き屋上に行こうとしたら、霊華ちゃんがいなくて人体模型に食われたのかと思った。

「……この前の夜、天体観測、何を言っていますの?」

「学校に閉じ込められた時だよ。覚えてるでしょ?」

「いえ、私は夜に出歩かないようにしておりますの。夜は家にいないといけない決まりがありますので」

 霊華ちゃんは確かに一緒にいたはずなのに、その時間は家にいたっていうの。

「あっ、そうそう、聞きましたわよ、噂の件」

「噂って、鏡や窓の?」

「そうですわ」

 この学校には鏡や窓に姿をうつすと、コピーが作られるという噂がある。そして、私たちはそのコピー、シャドウに散々な目に遭わされた。

「前回お会いした時に鏡で身だしなみを整えていましたのよ」

 確かに霊華ちゃんはトイレの鏡で身だしなみを整えたと言っていた気がする。

「もしかして、風夏さんが会われたのって--」

 夏なのに雪の中にいるような寒さがした。


 夏に起きた背筋も凍る出来事だった。

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