第25話 救出計画
「ただいま! 」
「お帰り優……ちょっと、どうしたのよそんなに慌てて」
「ちょっと急いでやらないといけないことがあるんだ」
家に着いた僕は急いで洗面所に行き、手を洗いながら驚く母さんに適当に答えて部屋へと駆け込んだ。
早く確認しなきゃ。
僕は帰りのバスと電車の中で、先輩に悪夢をみせていると思われるタブレット所有者の作品がなんなのか考えていた。
そして一つだけ今朝見たランキングに載っていた作品に心当たりがあった。
その作品を再度確認するために、僕はカバンを放り投げドリームタブレットを手に持ち起動した。
「ランキングの確か……あった! 」
そしてすぐにランキングを開き下へとスクロールしていくと、目的の作品を見つけることができた。
「『学園を追い出された俺が、スキル『迷宮』を使って剣道部の美少女剣士を屈服させるまで〜ついでに学園の可愛い子全員も奴隷にしちゃいます〜』……これに間違いない。作者名は『凌辱王フミオ』か、名前からして悪意に満ちてるよ」
僕は先輩が言っていた悪夢の内容で、顔見知りの男が先輩と学園のほかの女の子たちを奴隷にしようとしているということ。迷宮の中に放り込まれたということから、朝に確認したこの小説が怪しいと考えていた。
「剣道部の美少女剣士を屈服させ、学園の可愛い女の子を奴隷。そして迷宮。これだけ一致しているんだ。間違いないと思う」
作品のあらすじすら読めないランキングだけど、こういう時になれる系の長いタイトルは助かる。タイトルがほぼあらすじみたいなものだし。
僕は念のため僕より上のランキング全てのタイトルを確認した。
3分1ほど短いタイトルでよくわからない作品があったけど、それらは純文学やSFやオカルト系っぽかったので恐らく違うと思う。
なれる系のタイトルも復讐とかエロ系ハーレムがあったけど、先輩の話と凌辱王の作品ほど一致するものは無かった。
「多分これで間違いないと思う。161位で1435ptか……話数的にこれは2作目だと思う。前作のポイント次第だけど、1800Gの召喚をもう買っている可能性がある。でもプチ整形や魅力に身長アップとかほかにも色々商品があるし、もしかしたらそっちを先に買っているかも」
どうなんだろ? 相当先輩を恨んでいたら即召喚を買いそうだけど、ほかの女の子も奴隷にするとか書いてあるしそこまで執着がない可能性もある。だったらリアル世界に影響を及ぼせる商品を優先して買いそうだけど……
でもそれは希望的観測でしかない。最悪の事態を想定して動かないと。
そうだよ! 先輩に虫に喰われる経験なんてさせたら駄目だ! いくら夢でもそんな経験をしたら、現実世界の先輩にどれほどの影響があるかわからない。しかもそれが毎日だなんて、先輩の精神が壊れる可能性だってある。
確かに商品の注意書きには、現実世界に強い影響を与えた場合、効果を停止させるようなことが書いてあった。だけどそれがいつなのかまではわからない。先輩が壊れてからじゃ遅いし、最低でも一回は死を経験するのは確実だ。
そんなの絶対駄目だ。そうなる前に僕が先輩を取り戻さないと。
「僕が今1102ptで194位。寝る時にはもう少し数字が変わってるだろうし、向こうも明日にはもっとポイントが伸びてると思う。そう考えると少なくとも450ptは一晩で獲得しないとランキングで上回れないかも」
でもランキングで上回っただけで本当に先輩を取り戻せるのだろうか?
カミヨムショップはランキング上位者に優先権がある。ということは少なくとも僕も召喚を買わないといけないんじゃないか? たとえ僕が凌辱王フミオよりランキングで上回ったとしても、この商品を買ってなかったらあっちに先輩の魂を取られる可能性も無いとは言えない。なんたって有料アイテムだし。
そして僕と凌辱王が『召喚』を買った状態で、ランキングが上の小説に先輩を召喚できると見た方がいい。
つまり一度先輩を僕の夢の世界に呼べたとしても、次の日に凌辱王にランキングを抜かれたらそっちに先輩が行く可能性がある。
召喚を買うには1800G必要で、僕の所持Gが1295G。つまり505G足らないから505ptは必要だ。
一晩で505pt稼がないと先輩を救えない。これはかなり厳しい。せめて二晩なら……いや、それだと万が一のことがある。もしも凌辱王が召喚を購入済みで、夜に先輩がウトウトしてしまったら危険だ。
一晩で505ptを獲得して、その後も凌辱王より高ポイントを獲得しランキングで上回り続ける。そうすれば先輩を守ることができる。
正直厳しい。けどやらないと先輩が酷い目にあう。
ならやらないなんて選択肢はない。
あとはどうやって一晩で505ptものポイントを得るかだ。
まずストックの小説は全て投稿するのは確定として、あとはドリームタイム中の行動で稼ぐしかない。
ドリームタイムの評価は1人5pt持っていて、フォローが204人だからその半分の神様に満点をもらえれば510ptで目標達成となる。今までは平均3点だと仮定すると30人位からしか点数をもらえなかったのに、102人から満点か……やっぱり厳しい。達成特典で3倍になって33時間いれることになったけど、戦い続けたとしても恐らく200ptが限界だと思う。それを倍以上にするには……
今のレベルでは敵わない強い相手とギリギリの戦いをして勝利する。
これしかないと思う。
そんな相手はチュートリアルの道から出て強力な魔物と戦うか、予定では夢の中の世界で一週間後に戦うつもりだったボスくらいしかいない。
そうは言ってもチュートリアルのコースから外れるのは無謀過ぎる。まだ森の中央にある次元の渦からそう遠く離れていない。そんな場所でコースから外れれば、恐らくレベル50クラスの魔物が出てくる。それはさすがにレベル17の先輩とレベル15の僕じゃ瞬殺される。
それなら急いで先に進み、レベル25のオークキングと戦った方がまだ勝てる可能性がある。
最低でもレベル25になってから戦う相手だけど、神様ショップでアイテムを買って進みながらレベルアップしていけばなんとかなると思う。
大丈夫。僕は物語の作者だ。万が一死んでも翌日には生き返るはず。最悪の場合は夢の中の先輩を逃せばいい。
「うん、やるしかない」
僕は方針を決め、まずはストックしていた小説を2時間置きに投稿していった。
そしてベッドに入りなかなか眠れない自分と戦いながら、なんとか眠りについたのだった。
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