第15話 スキルポイント

 



 あ……ここは昨日の休憩場所か。


 ベッドで眠りにつき僕は夢の世界で目が覚めた。すると突然止まっていた世界が動き出したかのように、鳥や獣たちの声や、木々の葉の擦れる音。そして頬を撫でる風に森の匂いが僕の五感に入ってきた。


 僕の隣では石に腰掛け布で刀を拭いている先輩がいた。


「ふむ……不思議だな。あれだけ斬ったにもかかわらず刃こぼれが少ない。まだ研ぐ必要はなさそうだな」


「血のりが残らないからでしょうか? ゴブリンが消えると血も消えますし」


「そうだな。それは大きいかもしれない。しかしどういう原理で消えるのか……不思議な世界だ」


「こういうのは深く考えても答えは見つからないものですから、そういうものだと受け入れた方が楽だと思います」


「ふふふ、確かにそうだな。しかし君は順応性が高いな。おかげで必要以上に不安にならずに済んでいるよ」


「あはは、物事を深く考えないだけです。それより先輩、レベルがかなり上がってませんか? ちょっと確認してみましょう。こういうのはレベルが上がれば何かしら能力が増えてたりするものですし」


 僕はマッチポンプなのに先輩に褒められ、どう反応していいかわからずステータスの話を振ってごまかした。


「そういえば先ほどの戦闘では身体が動きすぎるほど動けていたな。見てみよう。『ステータス』」


「僕も確認してみますね。『ステータス』 」


 僕は先輩がステータスを開くのを確認してから、自分のも開いて確認した。




 土御門 優夜


 Lv.5


 職業: 賢者


 HP: 46


 MP: 48


 力: 19


 防御: 18


 魔力: 20


 素早さ: 21


 SP: 4


 魔法: 生活魔法 火球 風刃 プロテクション ヒール


 スキル: 空間収納(小)


 加護: 創造神の加護(神ショップ利用可能)


【ドリームタイム】 5:52



 よしっ! やっぱりドリームタイムが2倍になってる。それにステータスも結構上がってる。さすがレベルアップ効率2倍だよね。


魔法はレベルアップで覚えるのを先取りしちゃったから、当分は増えないのは仕方ないとしてスキルポイントのSPは4に増えてるな。確かレベル10までは1ずつで、それ以降はレベル30まで2ずつ。その後はMAXレベルの60まで3ずつ増える設定にしたと思う。レベル60からは昇格して99まであるんだけど、まだそこまで決めてないんだよね。


 スキルポイントは前衛は攻撃スキルや補助スキルを取得できて、後衛はステータスを伸ばす系がある。まだそんなにたくさん作ってないけど、近接職のスキルは今のところこんな感じだ。



 近接職スキル


 2P・身体強化 弱……力と防御と素早さのステータスが少し増える。 ※ 効果時間1時間。MP消費2


4PT ・身体強化 中…… 力と防御と素早さのステータスが増える。 ※ 効果時間1時間。MP消費4


6PT ・身体強化 強…… 力と防御と素早さのステータスがかなり増える。 ※ 効果時間1時間。MP消費6


 3PT・剛力……力2倍 ※効果時間10分間。クールタイム30分


 5PT・縮地……10m以内の距離を一瞬で詰めることができる。 ※クールタイム5分


 10PT・斬鉄……切断力アップ。※効果時間10分間。クールタイム10分


10PT・空間収納 中……6帖の部屋ほどの空間に物を出し入れできる。※空間内時間停止。生物不可。


20PT・心眼……敵の攻撃がスローに見える。 ※効果時間1分。クールタイム20分


20PT・吸収……敵を斬るとHPが1割回復。※効果時間10分。クールタイム20分



 このほかに近接職は魔法がない代わりに、職業スキルというのもある。これはレベルアップすると自動で取得するものだ。


 魔法使い系はレベルが上がると魔法を覚えて、近接職とかは職業スキルを覚える感じかな。あと身体強化以外は近接職はスキル発動にMPを消費しないことかな。その代わりクールタイムがあって連続では使えない縛りがある。


 ちなみに魔法使い系のスキルは身体強化が近接職の倍のコストが必要なのと、ほかはスキルポイント5ptで【魔力増加】10ptで【MP増加】同じく10ptで【消費MP減少】という常時発動型のスキルがある。


 僕は魔法メインなので身体強化は後回しだ。つまり10pt貯まるまではスキルポイントは温存する。5ptで取れる魔力増加は魔法威力の上昇なんだけど、まだ序盤なので手数を増やすことを優先する。


「レベル7か。このSP6というのはなんだ? 」


「あ、いまそのSPという項目をタップしたら取得できるスキルが出てきました。スキルを獲得するのに必要なポイントみたいですね。タップしてみてください」


 僕はステータスのSPを見て首を傾げている先輩に、なるべく自然にスキルの取得方法を教えた。


「なるほど……取れそうなものは身体強化「中」に剛力に縮地か……このクールタイムというのは? 」


「それはゲームでよくあるやつですね。一度発動して、次に発動できるようになるまでの時間です」


「ふむ……連続して使えないという意味か。縮地……いや、まずは身体強化だな。これで力も速度も上がる。これをタップすればいいのか? あ……取得するかの確認表示が出たな。本当にゲームのようだなこれは……」


 どうやら先輩は手堅く身体強化を選んだみたいだ。MPを使うけど効果時間が長いしね。


 それから先輩にどれくらいステータスが上がったのかを聞いた。パーティを組めば見ることができるんだけど、それまでは聞かないといけない。


 鑑定魔法がないからねこの世界。敵のステータスとか考えるの面倒だから、サーチという敵のHPしか見れない魔法にしたんだ。ステータスを見れる鑑定の水晶はあるけど、それは冒険者組合にのみだし。作者にとってのご都合設定なんだよね。


 とりあえず先輩のステータスはこんな感じだった。



 鬼龍院 小夜子


 Lv.7


 職業: 侍


 HP: 71


 MP: 8


 力: 40


 防御: 21


 魔力: 0


 素早さ: 51


 SP: 4


 職業スキル: 威圧


 スキル: 空間収納(小)・身体強化(中)


 加護: 刀神の加護(刀神への昇格可能・HP減少時素早さ上昇)



 威圧はレベルアップで覚えたスキルで、自分よりレベルの低い相手の動きを一瞬止めることができる。複数の敵にも有効でなかなか使えるスキルだ。クールタイムは5分だから魔物にエンカウントした時用かな。格下なら先輩は1分掛からず倒しちゃうし。


それと4Pの身体強化「中」を取ったのにSPが2しか減っていないのは、恐らく身体強化「小」が消えていることから還元されたんだと思う。この辺は神様に修正されたから詳しくはわからないんだよね。



「この威圧は使えるな。これならゴブリンが5匹出てきても対応ができる」


「そうですね。僕も魔法を当てやすくなります」


「ならば先に進むとするか。もうすぐ日が暮れる。それまでに安全な場所を確保しておきたい。夜の森は危険だからな」


「はい! 」


 確かに先輩の言うように日が傾いてきている気がする。ただでさえ巨木によって薄暗い森だ。あっという間に真っ暗になるだろう。


 でも大丈夫。僕にはマジックテントがある。このテントは結界が付いてるから、よほど強力な魔物が現れない限り壊されることはない。もしも結界が破られそうになった時は警報が鳴るようになっているから、その際は先輩とテントから出て対応すればいい。



 それから2時間ほど先輩と森の中を進んだ。敵は相変わらずゴブリンだけだけど、今まで3匹が最大だったのが5匹と現れる数が増えてきていた。それでも先輩の威圧のスキルでゴブリンが一瞬硬直するのでサクサク狩れていた。


ただ、もう少し進むとゴブリンアーチャーやウィザードが現れる区域となるから、これまでのようにサクサクとはいかなくなると思う。


「む……ゴブリンが棍棒から錆びたナイフを持つようになってきたな。進めば進むほど数も増え装備も良くなっていくという仕組みか」


「そうみたいですね。もうゲームそのままかと」


「神のゲームか……これ以上は視界が悪くて危険だな。そろそろ夜営の準備をした方がいいだろう。確か土御門君の加護の神ショップというところで衣類が買えると言っていたな? 毛布や屋根代わりに使えるようなシーツなどはないのだろうか? 」


「あると思います。でもその前に初期セットにあった、あのピラミッドみたいな物を試したいので少しいいですか? 」


 僕はここでマジックテントを展開することにした。


「ピラミッド? ああ、そういえばそんなものがあったな。試すのは構わんがどうするのだ? 」


「ラノベとかだと魔力を流すと変形したりする魔道具があるんですよ。魔法を使っているうちに魔力という物を感じられるようになったので、試してみようかと思いまして」


 この世界にいると身体に血液以外の物が流れてることに気付く。魔法を使えばなおさらだ。先輩も恐らく気付いていると思う。


「言われてみれば身体強化のスキルを発動する時に、身体から何かが抜けていく感覚があったな。なるほど、あれが魔力か……」


「そういうわけでちょっと試してみようかと。これがもし神ショップに売っているマジックテントだったら、お風呂もトイレもベッドだってありますから」


「それは凄いな……実はトイレなど少し困っていてな。期待してしまうな」


「あ、すみません気が回らなくて! す、すぐに試してみます! 」


 僕は先輩がトイレに行きたいと思っていたことに驚き、すぐに空間収納からピラミッド型のアイテムを取り出して道の端の草木を刈ってから置いた。


 忘れてた。この世界では生理現象が普通に起きるんだった。ソロでやってた時も何度もオシッコしたし。


 あの時は起きたらオネショしてないか不安だったけど、現実世界の身体にはその辺はフィードバックされてなかったんだよね。肉体的な痛みが幻痛として反映しないのと同じなんだと思う。


 僕は早くマジックテントを展開しなければと思い、足もとに置いた直径30cmほどの茶色いピラミッド型の箱の天頂部分に魔力を流した。これはソロの時に何度も行った動作なので淀みなくできた。


 いよいよ先輩と同じ部屋で過ごすことができる。緊張するなぁ。


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