第5話 名案

 



「あ……帰って来れた……よかった〜」


 僕はベッドの上で目が覚めると、見慣れた天井が目に入り安心した。


 そしてベッドの横に置いておいたドリームタブレットを起動させ、カミヨムサイトを立ち上げた。


 するとサイトが開くと同時に達成報酬取得という表示が出たので、僕はそれをタップして詳細を開いた。


 そこには100pt達成報酬としてドリームアドベンチャー、夢の冒険ができるようになると書かれていた。そして今後100pt獲得ごとにドリームタイムは1時間ずつ増えていくということも書かれていた。


「やっぱり達成報酬だった。僕の夢をいじることができるなんて、もう神様以外考えられないな」


 神様が僕の小説を元に異世界を創り、寝ている間に僕の魂が主人公に乗り移ったという感じなのだろうか?


 それにしても100pt毎にドリームタイムが1時間に増えるのは魅力かも。1000ptなら10時間てことだもんね。でもなぁ……僕がそんなにポイント稼げる気がしないや。


 僕は長い時間あの世界にいたいとは思ったけど、さすがにそこまでポイントは伸びないだろうと思い画面を閉じ、次に現れた小説管理画面を確認した。


「凄い、125ptになってる……ん? ドリームポイント? 」


 僕は総合ポイントがかなり増えていたことに驚いた。しかしその下に、ドリームポイントという項目があることに首を傾げた。それは総合ポイントの文字の半分くらいの大きさで、そこには20ptと書かれていた。


 こんな項目なんて最初は無かった。どういうこと? 増えたフォロー数と評価人数からいって、総合ポイントはこのドリームポイントも含めたものに思えるけど……


 僕はドリームポイントの下にある、詳細のリンクをタップして開いてみることにした。


「夢の世界での行動評価? 昨日まで無くて今あるということは……つまり夢の中で主人公に乗り移った僕が取った行動が評価されるということ? 」


 詳細には夢の世界での行動に対する評価ポイントと書かれていた。これは小説の評価と同じく、読者が最大で星5つ、5ptを与えることができるそうだ。


 うーん……確かに僕はストーリー通りに動かなくてもいいからな〜。僕の夢を神様が見てるとして、ストーリー通りの行動を取っているかの評価ということなのかな?


 いや、でもそれなら僕が主人公に乗り移らなければ忠実にそれは再現されるしな……


 もしかしたら小説で楽しませて、夢の世界でも違った行動を取って楽しませろということかも。それなら小説の評価と分けたことに説明が付く。


 そうなると読者1人につきフォロー2pt、小説評価5pt、ドリーム評価5ptの合計12ptを持ってるってことか。


 でも小説の評価に関してはフォロー数の10%しかしてくれてないから、ポイント稼ぐのって結構厳しそう。


 僕の書いた小説は完結しちゃってるし、今後ランキングが実装されたら読者の目につかなくなりそうだしやっぱ厳しいよね。


 確か1ヶ月で1万文字書かないと、このタブレットは使えなくなるんだよね。これは新作を書けってことなんだろうな。


 あの世界は魅力だ。あの世界でなら僕は自由に動ける。それに魔法……凄かった。火や風の刃を僕が放てるんだ。空だって飛べるようにすることもできる。


 1週間で2500文字なら大丈夫かな。けど、僕は身体が弱いから早めに書き始めないと、書けなくなる可能性もある。それに明日から学校が始まる。これは早く何を書くか考えないと……


 僕はその日は一日中何を書こうか考えていた。途中ゴブリンを倒した時のことを思い出して気分が悪くなったりもしたけど、リアルなゲームをやっていると思い込むようにしてなんとか耐えた。死体が残らないようにした僕。グッジョブ。


 そしてその日の夜。僕は再びあの世界へ行くのだった。



 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



「あ……ここからスタートか。これは戦闘中に時間切れになると次の日は危ないかも」


 僕が部屋で眠りにつくと、昨日時間切れになった場所で目が覚めた。


 周囲も明るいし、ステータス画面を開いてMPを確認したら全回復していない状態だった。


 本当に昨日の続きなんだろう。


「ドリームタイムは59分になってる。まだ何を書くか決まってないけど、次の作品の世界に行った時のために魔法の訓練はしておきたいな。レベルも2になったしちょっと走ってみようかな」


 僕はたくさん戦闘経験をしたくて、早くゴブリンを見つけるために数年ぶりに走ることにした。


「ハッハッハッ……おっと……よっはっ! はは……あははは! 走ってる! 僕が走ってる! あははは! 」


 息は苦しい。けど身体に力が入らなくなることがない。僕はただそれだけで、ただ普通に走れるだけですごく嬉しかった。


「いたっ! 魔物は敵、魔物は人を襲う。だから大丈夫。『ウインドカッター』 」


 《ギギャッ! 》


「よしっ! どんどん行こう! 」


 僕は途中歩いたり走ったりをしつつも次々とゴブリンを見つけ倒していった。


 そしてレベルが6になったところでドリームタイムが残り5分となった。


「今日はこのくらいかな。それにしても凄いや。どんどん走る時間が長くなっていた。HPが上がったからかな」


 楽しかった。ゲームみたいで本当に楽しかった。リアル過ぎて途中木の枝にぶつかったりして痛かったけど、たくさん走ってレベルも上がって強くなったと実感ができた。


 それはこの世界だけの強さだけど、この世界では僕は強くなれる。もう軟弱だとか、男らしくないとか言われないで済む。


「でもソロは寂しいな。1日1時間しかいれないから、エルフの女の子がいるところまではこのペースでも20日以上は掛かりそうだ」


 さすがにその頃には新作を投稿していると思う。そうなれば多分僕はこの世界にはもう来れないかもしれない。


 なら新作で最初から誰かが側にいる設定にすればいいか。できれば鬼龍院先輩がいいんだけどなぁ。


 ハッ!? そうだよ! 先輩に似た子を小説に登場させればいいんだ! 見た目も性格も細かく描写すれば、神様が補正してくれるはず。なんたって僕の下手な描写で、あれだけ可愛いエルフの女の子を創ってくれたんだ。そこは期待できるはず。


 夢の中だけでも先輩と会えたら、そして話ができて一緒に冒険までできたら……僕死んでもいいかも。


 これは本気で次の物語を書かないと!



 僕は先輩と夢の中で2人きりで冒険ができるのではないかと心を躍らせていた。


 新しい物語を書けば、2年近く想い続けていた先輩と夢で逢えるかもしれないと。


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