第1話 ドリームタブレット

 




 僕は送られてきたタブレットを手に、飛び跳ねて喜んでいた。


 ずっと欲しかった10インチのタブレットだ。しかも軽い!


「ん? ドリームタブレット? そんなタブレットあったっけ? 」


 僕はタブレットの背面に印字されている、見たこのないロゴを見て首を傾げた。


 そのロゴは羊皮紙に羽ペンで、『Dream Tablet』と書いている最中のようなロゴだった。


「まあいっか。インターネットに繋がってウェブ小説サイトやM-tubeが見れればメーカーなんて気にしない。それより説明書とかないのかな……もしかしてこれかな? 」


 僕はタブレットと一緒に同封されていた封筒を手に取り内容を確認した。


 そこには当選おめでとうございますとと書かれており、続いてタブレットの機能とカミヨム小説投稿サイトの説明が書かれていた。


「え? は? なに? 何かの冗談? 」


 僕はその内容を読み進めているうちに、このタブレットは何かのジョークグッズだったのかと疑い始めた。


 どんなことが書かれていたか要約すると……



 ・このタブレットは通信費がかからず、充電も必要ありません。


 ・このタブレットは土御門様しか使用することができません。紛失された場合もすぐに見つかるようになっています。


 ・このタブレットはカミヨム小説投稿サイト専用タブレットとなり、その他のウェブサイトへはアクセスできません。


 ・カミヨム小説投稿サイトとは、会員の読者様のみ閲覧できるサイトです。


 ・カミヨム小説投稿サイトに小説を投稿すると、様々な特典を得ることができます。それらはあなたに大きな幸せを感じさせるものとなるでしょう。


 ・月に1万文字以上の投稿が無かった場合。ご利用を停止させていただくことになります。


 ・神である読者様が楽しめるよう、多くの物語を創作していただけることを期待しています。



 通信が無料? それに充電しなくてもいい?


 というか小説の投稿しかできないのこれ!? それに特典てまた何か当たるってこと?


 だいたい読者を神とか呼ぶのは、いくらなんでもへりくだり過ぎじゃない? でも会員制とか言ってたから社会的地位が高い人や、大富豪の子供とかが読むのかも。それならまあ納得できないでもないけど……


 僕は本当に小説投稿しかできないのか確認するために、タブレットの側面にある電源ボタンらしき物を押した。


 するとタブレットが起動し、すぐにドリームタブレットのロゴが現れた。


 そしてその次にカミヨム小説投稿投稿サイトと書かれた画面が現れ、その下に作者の管理画面が表示された。


 そこには僕が応募用に書いた短編小説『ある日突然異世界召喚されて女神の加護を得た僕は、エルフの里を救ってのんびり過ごすことにした』というタイトルが表示されていた。


 間違いない。ほぼあらすじのようなこのタイトルは僕のだ。


 よく読みにいく『小説家になれる』というサイトで、長いタイトルが流行ってるから真似てみたんだけど、改めて見るとずいぶんと自己主張の激しいタイトルだなとは思う。


「駄目だ。本当にこの小説投稿サイトにしか行けないみたいだ。タブレットにほかにボタンらしきものもないし……ネットもできない、M-tubeも見れない。ほかの小説投稿サイトにも行けないとか……」


 僕はタブレットが当たり大喜びをしていた分、すごくガッカリしていた。


「まあタダだしこんなもんだよね。でもいくら新規小説投稿サイトを立ち上げたからって、そのために専用タブレットを作るなんて凄い力の入れようだよね」


 やっぱお金持ちの道楽なのかなぁ。


「あ、僕の小説を5人もフォローしてくれた人がいる。評価も1人してくれたみたいだ。星5つ満点で星2つか……初めて書いた小説だしそりゃそうだよね。総合ポイントが12ptということは、フォロー1につき2ptで星1つにつき1ptということみたいだ」


 僕は今まで『なれる』サイトで評価していた側だったのが、今度は評価される側になったんだなと複雑な気持ちでいた。


 するとカミヨム小説投稿サイトの管理画面の横に、カミヨムショップというリンクボタンがあった。

 しかしそこには準備中と書かれており押せなかった。


 その下にサイト説明というタブがあったので、ショップのことが書かれてないかタッチして開いてみた。


「あ〜やっぱりフォロー1につき2ptで星1つで1ptか……ランキングもやっぱりあるのか。これは後日実装するみたいだ。見たくはないけど。ショップの説明は……あった、商品はサイト内通貨で買えるのか。1ptで1Gゴールドになるということは、僕は12Gか。商品のラインナップは……書かれてないや」


 ショップに並ぶ商品てどんなのだろう? ちょっと気になるかも。


「達成報酬というのもあるんだ……」


 総合ポイントが一定のポイント数になるともらえるのか。最初は100pt達成時で次が500ptでその次は……書いてないや。ゲームの達成ボーナスみたいなものか。これは1作品毎にもらえるのと、1回しかもらえないのがあるようだ。ほかにもイベントとかで報酬くれたりなどもあるみたいだ。報酬て何をくれるんだろう?


 お金持ちがスポーサーに付いてるなら、良いものをくれそうな気がする。でも僕が書いた小説がそんなにポイント取れるわけないし、これ以上黒歴史を増やすのもなぁ。


 ほかにもジャンルとかの説明があったけど、現実世界系やSFとかは無いみたいだった。サイト全体がなんとなく、異世界ファンタジーを推奨しているようにも思えた。人気あるジャンルだからかな?


「とりあえずどんなのかはわかったけど、もう小説を書くつもりなんてないんだよね。読む方が好きだし」


 でもせっかく書いた初めての短編小説だし、少し手直ししようかな。もともとそのつもりだったし。読んでくれた人もまだ少ないし、今のうちに矛盾点を直しておこう。


 僕はサイトがオープンしたらするつもりだった修正作業をして、酔って帰ってきた母さんを介抱して眠りについた。


 でもその日から僕は不思議な夢を見るようになったんだ。



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