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午後の授業が終わり、放課後になると鈴音は傘をさして雨の降る街の中を移動した。
それは三つ葉を探す旅だった。
鈴音は三つ葉がこの世界のどこにいるのか見当もつかなかった。
だから鈴音は三つ葉の居そうな場所をすべてまわってみることにした。それは三つ葉と一緒に行った渋谷の本屋であったり、三つ葉がずっと行ってみたいと言っていたゲームセンターであったり、二人のいきつけの喫茶店であったり、おしゃれな駅前のクレープ屋さんであったりした。
……しかし、三つ葉の姿はどこにもなかった。
ファーストフード店で軽い食事を済ませた鈴音は店内の時計を見て時間切れを確認して渋谷の駅に向かった。夜の渋谷の街は当然のようにたくさんの人で溢れていた。でもこの鈴音の顔も名前も知らない人たちの中に三つ葉はいない。
鈴音はこの日、ずっと一人ぼっちだった。
鈴音は一人で改札を抜け、目的のホームにたどり着くと時間通りに電車がやってきた。
鈴音はその電車に乗って目的の駅に向かった。
その途中、昨日、三つ葉の手を(三つ葉は、……お願い、私の手を離さないで、と言う表情をしていた)、離してしまった駅のホームに緑色の電車が止まったときに、鈴音は三つ葉の顔をようやく、(ぼんやりとではなく、とても正確に)思い出すことができた。それは『松山三つ葉本人』が、夜のホームの青色のベンチに一人でぽつんと座っている姿を鈴音が見つけたからだった。
三つ葉は鞄を持ち、学校の制服を着ていた。
三つ葉はそこから、雨の降る暗い空をじっと一人で見つめていた。
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