第17・18話 真実への推理――

「一体何を……」

少し後退りをする。


「いやぁ…その言語を読めるのは夢の世界から来たと言われてる人間だけらしいんで」


信也はもう1度本を読み返す。やはり日本語だ。

「夢を現実に…現実を夢に…」


「それが天使の役割だ」

トリスタンは信也の方へ向けミーちゃんを投げる。


「ミーちゃんっ!!……」

ミーちゃんの方へと近付く


「んじゃな、坊主。」

トリスタンは手を上げ後ろに歩き出す。


「お前は一体…何を知ってるんだよ…」

顔を少し上げる。


「んーっと……そうだな……ヒントか…」

トリスタンは手を顎に当てる

「過去を振り返ってみな。」

そして、また歩き出す。


「あっ、ちょっと!待っ……」


「俺はエンターテイナー何でねぇ…」

そう言い残しその場を立ち去った。


階段から慌ただしく足音が聞こえて来る。

「大丈夫か信也」

ランスロットは慌てた様子で信也を見に来た。


「あぁ…ミーちゃんはずっと返事をしないけど…」


「とりあえず私の屋敷で面倒を見る。ついてこい」

そう言いランスロットとミーちゃんを抱えた信也は屋敷へと向かった。


ベットに猫の姿をしたミーちゃんを寝かせる。


側には信也が椅子に座りミーちゃんを見ている。

「ミーちゃん……」


「まぁ…深い傷は無いし時期に起きるだろう…」

ランスロットは立ちながらその状況を見る。

「少し話をしないか信也」


「えっまぁいいけど……」


それからランスロットと話を始めた。

「信也は他に友が居なかったのか…?」


「いや……居るにはいたんだけど……」


「んん?何があったんだ…?」

ランスロットは信也の顔を覗き込む。


俺は昔、幼なじみにヒミコって言う女の子がいた。

彼女は病弱でいつも病院のベットに横たわっていた。俺はいつも彼女のお見舞いに行ってあげていて、母には花を買ってもらっていた。それを届けるという名目で……

結局、ヒミコは死んでしまった。俺は泣いた。凄く泣いた。立ち直れない程に。学校で1人で居る俺にはそのヒミコへのお見舞いは唯一つの明かりだった。生きる希望だった。

でもヒミコは死ぬ間際にこう言っていたらしい。


「信ちゃんに……[諦めるな]って[自分を信じろ]って言ってあげて。

信ちゃんは不器用なだけで優しい子だよ。

ヒミコが元気じゃないぶん、信ちゃんはヒミコの分まで頑張って」って


その言葉が1人で泣いていた俺には凄く刺さった。

だから今こうして諦めずに前を向けているんだと


「心の中からそう思う。」


ランスロットは少し顔を下げる。

「すまない事を聞いてしまったな……」


信也は顔を上げ手を振る

「いやいや、大丈夫だよ」


「その…好きだったのか…?」


「まぁ初恋の相手でもあるかも……」


「そうか……」

その場が少し静まり返る。

信也は焦ったようにランスロットに声を掛ける。

「別の話題にしようっ。」


「そうだな……じゃあ、信也の生まれ育った国は何て言うんだ?」


「島国で北にはおっきな寒い北海道があって南には南国の用な暖かい雰囲気の沖縄がある

んだけど……」


「ほうほうっ!それでそれで!」

ランスロットはかなり食い気味に目を光らしている。


「凄い綺麗だけど何処か暗い……

まぁでも好きだよ。

日本って言うんだ。昔は大和って呼ばれてたらしいけど……」


ランスロットは窓の方へと顔を向ける。

「日本か……私も行ってみたいな……。」


「来て欲しいな1度でもいいから……」


「なら何処かに作るよ。

信也の故郷の用な素晴らしい国を……

今はまだだけど…いつかは…

私の夢は自分の国を作る事だからな。」


「あぁ…頑張れよ…応援してる…」


「何を言っている!お前も一緒に来るんだぞ!信也!」

ランスロットは笑顔ではにかむ。


「あぁ…行けたらな!」

窓からそよ風が入る。


朝から会議に呼ばれてもう日が暮れている。

俺はヘトヘトになっていた。


「んにゃ…信也かにゃ…?」

ミーちゃんが目を覚ます。


「おおっミーちゃん!!」

信也はミーちゃんに大声で声を掛ける。


「うるさいにゃ信也……」


「あぁ…ごめんつい…」


「ミーちゃんが寝てから何があったんだにゃ…?」


俺はミーちゃんがガヴェインに倒されてからの後々の事を全て説明した。

「なるほどにゃ……」

ミーちゃんは少し考え込む。

「やっぱりそうだったにゃのか…」


「どうしたの…?」


「その話が本当ならトリスタンが黒幕だにゃよ」


「本当に……?」


「何で信也にわざわざその干からびた天使と禁断の書を見せたと思う?」


「確かに……」


「アイツは危険だにゃよ……おそらく信也が天使の意味を、真実を知ったらどんな行動をするか、観察するためだにゃよ。」

ミーちゃんは焦ったように言う。


「そっか……エンターテイナーってそう言う意味で……」


「奴は夢を現実に、現実を夢に、

天使の力を使ってするつもりにゃよ。

王国最高峰のバグダートが調べた事だから間違いないにゃい……

そうすればこの世界は崩れる……」


「何とかしないと……」


「ランスロットが言ったのはそう言う……」


「信也……何か手はあるかにゃ……!?」

ミーちゃんがこれだけ焦るのだからトリスタンがどれだけヤバいかが瞬時に伝わってくる。


「とりあえず現実世界に何か手掛かりがあるかを調べて来るっ!」


「……任せた…にゃよ。」

何処か歯切れが悪い。

「信也…1つだけ……」


「何……?」


「私は何かを信也に隠してる……だけどごめんまだ言えないんだ…

でも私は最後まで信也の味方にゃよ……

信也……君に託すにゃよ。。。」


「行ってくる……」

そう言い信也は目をつむり眠り始めた。

少しコントロール出来る用になっていた。

それはより現実に、より夢に、近付いた証拠なのかも知れない。


「チッ……まずい事になったにゃ……」

ミーちゃんは爪を噛む。


信也…頑張るにゃよ…

もし例え……1番最初に会った友人が敵であったとして――


……


信也


 帰ったか…


 信也ッ!


 眠たい…


 起きろ信也ッ!


 起きる…?


「信也起きろって!今何時だと思ってんの?土曜日だからって寝過ぎだろ」


 布団をめくり上げられた。


 これはうちの母だ。


「お母さん…お休み」


 1度めくり上げられた布団をすかさずまたかぶった。


いやちょっと待って……

「母さんっ!!」


母はその拳を俺にはぶつける寸前だった。

「おっ?おう何だ急に、おあっ何泣いてんだ信也っ!」


「母さん……母さんだ…この人は母さん…」


「何だ気色悪いな…

とりあえず早く起きな。朝ご飯食べなよ。」


どうすれば……?

考えろ……トリスタンを止める方法を

考えろ……真実に辿り着く方法を…

考えろ考えろ考えろ考えろ!


「何ボーッとしてんの!早く食べなよ信也っ!」


「いただきます…」


目の前のホットケーキを食べながら考える。


俺はこの人の記憶が…

いや家族全ての記憶が無かった……?

それは何でだ…?


「母さん…今日は土曜日だよね」


「あっ?あぁ…そうだけど…」


「母さん…うちの家族は何人…?」


「何だ急に…今日は変だぞ信也…」

母は続けて言う。

「イギリスの父さんにカナダの立夏、それから母さんとお前だろ?」


「じーちゃんは?」


「じーちゃんは病院のベットで寝てるだろ。」


てことは……

この世界線は1番最初にタイムリープせずに戻った世界線…


「あっそうそう信也っ!」


「何…?」


「何だ冷たいな。最近聞いたんだがうちの子孫は海外にルーツがあるらしいな。

いやビックリしたよ本当に…」


「今はそれどころかじゃ無いから」


「あ、あぁそうか…何考えてるんだ…?」


「母さん!」


「さっきから情緒不安定だぞ信也」


俺はトリスタンを止めるのに精一杯何かを掴もうとしていた。

だが、そのトリスタンの言葉も引っ掛っていた。

「昔の事が調べられる場所って何処かに無い…?」


「図書館にでも行ってきたら?二駅先くらいにあるだろ?」


「母さん…車で連れてって」


「やだよ…めんどくさ」


「勉強の為なんだっ!」


「良しわかった!母さんに任せろ!」


この車に乗ると父さんが死んだ時を思い出す。

あの時は確か…

そうだ…俺が国に帰り宿で寝ている時に殺されたんだっけ


「ほら着いたぞ、母さんはスッピンだしここで待ってるからな!勉強頑張ってこい!」


正面はガラス張りで自動ドアがあり、丸尾を帯びた天井に左右には巨大な本棚が無数にある。とても大きな図書館だった


自動ドアを入りサービスカウンターの人に声を掛ける。

「あ、あの~?」


「はいっ。どうされましたか?」


「歴史の本って何処にありますか…?」


俺は世界の歴史が乗ってある本棚に連れていってもらい本の表紙に目を通していく。


【衝撃!?卑弥呼は実は日本生まれではない!?】


「いや多分日本史じゃない…」


【みんなのしゃかい 】


「これは小学生向けだ。俺には全く関係ない」


【中国の英雄3 ~三国の英雄達~】


「いや、これも関係ない」


【ヨーロッパの謎に迫る アーサー王伝説は本当だったのか!?】


「アーサー王……あの世界の王の名前だ。」

興味本意でその本を取った。

パラパラっとページをめくる。


西暦4世紀後半と言われているがそれよりももっと前かも知れない……


「いや、知らないし…」


アーサー王は言い残した。

魔法が使えたら苦労はしないだろう…

魔法さえあれば…


魔法は本当にあるのかも知れない……

そうだ。。。魔法はあったのだ。

奴に消されたのだ…魔法が…

この世界の秩序が…

変えなければならない

全て……奴さえ居なければ……


ランスロットはアーサー王を裏切り魔法をこの世から消滅させた。


ランスロットは後世に裏切りの騎士としてその名を轟かせている……


「実際はいいやつ何だけどな……」

本をソッと閉じる。


もしかすればあの世界はアーサー王の無念を晴らす為に作られた夢の世界…?

夢と現実が干渉する……

タイムリープ…天使…


頭には今までに考えた事がない程の膨大な文字が浮かび上がる。


過去を探れ…

今までに起きたこと全てを思い出せ…

世界線…

普通に戻れば誰も死なない【世界線a】

タイムリープすれば誰かが死ぬ 【世界線b】


平行…あるいは1つに繋がる…


夢が現実に……現実が夢に……

仮にアイツの言葉が…


いや違う…


て事は最初から……?


そうすれば辻褄が合う……


考えてもいなかったが…まさか…


いや、そうだ。そう言う事だ。


そんな事って……

諦めるな…

自分を信じろ…

夢なんかじゃない…

そうか…そう言う事か…


待ってろ…

今俺に出来る最大限。

その答え……


今見せてやるよ…



――黒幕









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