第12話 救い系

「すまない…すまない…」


遅れてきたミーちゃんが洞窟の方へと近付く。


「何だにゃ…これは…」


そこには大量の血の海が出来ていた。

至るところに盗賊の死体が転がっており、異臭を放っていた。

そこから数歩進むととランスロットが四つん這いになりに涙を流している用に見えた。


ニャー


「ミーちゃん…すまない…」


ランスロットはそう言い他には何も喋らなかった。

ミーちゃんは目を疑った。


「信也…が本当に信也…なのか…?」


無惨な姿をする信也にミーちゃんは言葉を失った。


「酷い…どうして…信也が…こんな目に…」

まず先に信也を追うべきだった…

辛かっただろう…苦しかっただろう…

ごめん…信也…

私の責任だ…


ニャー


「何だ…友を助けられず王国にまで見捨てられた私は無様だな…」


ンニャーーー!!

ボンッ!

煙と共に天使の姿へと変身を遂げた。

「ミーちゃん…そうか!信也を治せるんだな!?早くしてくれ!」

パッと顔をあげるランスロットを横目にミーちゃんは辛そうな表情をしていた。


「何も分からない…」


「どうした…!?早く信也を…ッ!」


「ごめん…私、もう分からないの…信也の事が…」


「急に何を…ッ」


「成功して帰ってきたと思ったら急に私から逃げ出して、助けようと追い掛けてきたらこんな事になっていて…」


「何が…言いたいんだ…」


「私…もう諦めようかなって…」


「何で、友の危機を目の前にしてそんな事が言える!?お前の回復魔法を使えばいいじゃ無いのか!?」

ランスロットは必死で訴えかける。


「ごめんね…信也を殺させて」


「ふざけるな!!私は何としても友を助け出す!!お前の目的は何なんだ!!」


手をぎゅっと握りしめ苦しそうな表情をしながら答えた。

「私だってこんな事したく無いんだよ…でも…信也を苦しみから解放させる為には殺してまた戻ってきてもらうしかないのよ!!」


素早く手を振り払う

「何を訳の分からない事をッ!」

振り払った先からは無数の水の刃が地面からつき出してきた。


「信也をこっちに渡して」


「断る…」


「チッ…何で邪魔するんだよ!!それが最善の策なんだよ!!信也を殺すんだ!!そうすれば信也は助かるんだ!!」

ミーちゃんの天使の力はもう1日分のを使い果たしていたため言葉で訴えることしか出来なかった。

足をドタバタし髪をかきむしりどこか精神が不安定になっていた。


「…正気じゃない…」


「どっちがだよ!!信也の事何も知らない癖に!!」


ランスロットは地面を軽く二回叩いた。

するとミーちゃんの足元から少しの水が涌き出てきてその水がミーちゃんの体全体を覆った。

ミーちゃんが必死に水を叩くが全て弾かれ全く意味を無さなかった。


「信也を殺さないと駄目何だよ!!ここから出せよ!!このアバズレ!!」


「信也…私が絶対に助けるからな…!」

そう言いランスロットは信也を水で覆い水蒸気の用に信也共々に消えその場から居なくなった。

ランスロットが居なくなった途端それまでミーちゃんを覆っていた水が弾けほとばしった。

「何だよあの女…何も…」


何も知らない癖に――


……


辺りはすっかり日が落ちて暗くなっていた。

「流石に…魔力を…使いすぎた…」

もぬけの殻の用な信也を背中におぶり途方も無く草原を歩いていた。


はぁ…はぁ…

信也…私はお前の味方だ…

絶対に助けてやるからな…

何処に行けばいいかは分からないが、きっと何かお前の役に立って…みせ…る…

すま…ない…信也…

ランスロットは信也をおぶりながらその場に倒れ込んでいた。


……


「……」

うっすらと目を開ける…


何となく今の状況は分かった

ベットに横たわっておりおそらく誰かに助けられたのであろう…


バッ!

ベットを勢い良く飛び出す。

「信也は……!!」


扉を開け目の前にある階段を下りていきそこからはバチバチと火の炊く音が聞こえてきておりその火の前のソファに座る1人の老人がいた。

「あなたですか…助けて下さったのは…」


老人は笑顔でこちらを振り向く。

「おぉ…元気そうで何よりです…」

そのかすれた声にはどこか暖かみを感じた。


「それより私の友人はッ!」


「酷い状態でしたよ…今は何とか回復魔法のポーションを使い顔の腫れは引いてきておりますが…」


「本当にありがとうございます。」

ランスロットは深くお辞儀をした。


「いえいえとんでもない、、、落ち着くまでは家に居ると良いですよ…」


「それで私の友人は何処に?」


「この部屋から少し右に行くと寝室があるので」


「ありがとうございます。」

ランスロットはまた深くお辞儀をして信也の所へと向かった。


信也…


信也…!!


目を覚ましてくれ信也!!


「んん…」

信也はうっすらと目を開けた。


「良かった!!本当に良かった!!」


「俺は…盗賊に…でも…何で…何で…8時間経っても戻ってないんだ…」


「信也…」

ランスロットは信也の顔に手を近付ける。


「触るな!!」

素早く手を振り払う。


「信也…」


「全部全部お前らのせいだ!!俺は弱いんだよ!!何でこんな目に逢わされなきゃ行けないんだよ!!ふざけるなよ!!やっと戻れるって思ったのに!!やっと帰れると思ったのに!!何で何で何で!!あの拷問も時間までは何とか耐たのに!!こっちの状況も知らないでよくもクエストなんか受けやが――」


ランスロットはその言葉を押さえ込むかの用に信也に抱きついた。

信也の頭を撫でている。


「やめ…ろ…よ…離せよ…」


「いいんだ…全部…私が受け止めてやる…辛かっただろ…苦しかっただろ…」


「全部…お前ら…の…」

唇を噛み締めている。

信也から初めて涙が溢れた。今までどんなにこの世界で絶望しても涙は見せなかったのに


「あぁ…分かってる…」


「うぅ…く…」


その一晩だけ信也は救われたような気がした。











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