第11話 1つのキッカケ系

はぁはぁはぁ…

力を振り絞って全力で走った。

流れ出る汗がほとばしりそれまで着ていた服は太陽の光で透けるほどに濡れていた。


「あぁっ!!」

小枝に足を引っ掻けた。


「何で…何で…何で何で何で何で」

1人で居ると自然と言葉が涌き出るかのように饒舌になる。

「うぅ…くっ…」

その場でうずくまってしまった。

またここの誰も居ない森の中で8時間経てば自然と現実世界に戻るハズだ…

もう疲れたよ…


ガサガサ

複数の足音が近付いてくる。

「兄ちゃん、俺達今困ってるからよ!金くれねぇか?」

この森の付近で盗賊をやってるゴロツキの男が数人出てきた。

どうやら走っていた俺をずっと追ってきていたらしい…

うずくまる俺を囲うようにその男達は俺の回りに立ち始めた。


俺の髪を引っ張り顔を持ち上げる。

「あぁ…」

顔には全く力が入らず喋ることもままならなくなった。

人と会うとこれだけ自分が無力になるらしい…


「旦那…コイツ多分もう壊れてますぜ」

子分と思われるそのゴロツキの1人が俺の顔を覗きそう呟いた。


「いや…あんなに急いでたんだ。何か知ってるに違いない。連れて帰るぞ。」

俺はその無力を感じたまま男達に担ぎ上げられアジトと思われる暗くれ松明が照らす洞窟へと入っていった。



……


「どうするにゃ…信也を見失ったにゃ…」

ミーちゃんは猫の姿のままであった。


「考えてもダメだにゃ…」

そう言い天使の姿に戻り王国のギルドへと向かった。


「あら?コスプレさん?クエストですか?」

長髪で金髪のギルドの受付嬢だった。

毎日自分達のクエストを発注したりしてくれる言わば自分達はこの人の常連だった。


「何でもいいから早くちょうだい」

勢いでカウンターの机を叩くほどに焦っていた。

「随分と焦ってますね…じゃあ…」

後ろの書類の用な物から1枚の紙を取り出した。

「こういうのどうです…?」


「分かったありがとう」

ミーちゃんはクエストの内容を見ずに颯爽と立ち去った。

「あぁちょっと…もう…内容くらい見たらいいのに…」


「何渡したの?」

二人いたもう一人の受付嬢が聞いた。


「えぇーと確か…」


難易度5 盗賊退治 場所 北東の森林地帯


これで信也が8時間で帰る事は無くなった。

次は…

私の天使の姿は3分しか持たない…

早くしないと…

ミーちゃんは急ぎ足で王宮へと向かった。


「ちょっと!通してくれる?私、ランスロットの友人なんですよ!?」


「き、急に押し掛けられても困ります!それに…」

門兵は何か暗い顔をして顔を反らした。

すると辺りをキョロキョロしだし


「誰にも言っちゃいけませんよ?」

私の耳に少し近付き小声で喋った。


「ランスロット王国騎士団長様は…」


「王国反逆罪で捕まったですって!?」


「しっー!声が大きいですよ。」


「詳しい事は後でいいからどこにいるの?」


「あの東の塔の地下牢に1人で閉じ込められています。」


「分かったありがとう」

するとミーちゃんは途端その場から消えた。

「何…いまの人…」


透明…飛行…鍵抜け…睡眠…あらゆる魔法を駆使して30秒で目的の牢へと着いた。

階段を描け下りるとそこには両腕を鎖で繋がれた金髪で目が青い女性がいた。

左目から血が流れ出して閉じており、全身がアザだらけになり酷い拷問を受けたと思われる。


「あなた…一体何があったの!?今助けるから!」

そう言い牢の中に侵入し腕の鎖をカシャカシャと音を鳴らしながら外していく。


「お前は…誰だ…」

うっすらと声が聞こえる


「信也の仲間だよ」

急いで鎖を外している。


「私は…やはり…無力だ…」


「あぁはいはい、そう言うの今はいいから」

ガチャ!

鎖が外れた


「さっ!早く行きましょう」

くっきりと鎖の後が着いた腕を引っ張り立ち上がらせた。


「ッッ…!」

立ち上がると足首が逆方向に向いているのが見えた


「もう…仕方無いわね」

【天使の加護】


ミーちゃんが手をかざすと緑の暖かい光が体の回りの傷がみるみると回復していった。


「良し!ごめんだけど貴方の片目までは直せないから」


「凄い…お前は一体」


「あ!ダメだ!もう時間が!」

ボンっ!

煙と一緒に一瞬にして猫の姿に戻ってしまった。


「なるほど…そう言う事か…」

猫を見て軽く呟き頷いた。

1枚の紙切れが降ってきた。


「盗賊…退治…?」


にゃー


「ここに信也が居るんだな…?」


にゃー


「分かった私に任せてくれ」

ミーちゃんはクエスト内容を全く知らないハズだが自分の直感でそこに居ると頷いたように見えた。


「どけぇぇぇえええ!!」

ランスロットの声と共に大量の水が王国の地下から溢れだした。

地面を突き破った巨大な水の刃はそのまま北東の森へと進んでいった。


「アーサー王…」

銀髪の紳士な男が老人に何かを伝えていた。


「そうか…脱走か…全員に伝えろ…反逆者を逃がすなと…」


「はい…国王のままに」

銀髪の男は上に飛んだように姿を消した。


「なぜだ…なぜ竜化などと言うたわけた事を…」


……


気が付けば夕方になっていた

水の刃が森の上空を真っ直ぐと進んでいた。

「あれは…盗賊…何か知ってるかもしれんな…」

そこには子分と思われる小さい生意気そうな子供がゴロツキの格好をして歩いていた。


「そこの君…何か知ってるか」

水から降り、歩いて行き話しかけた

子供は何か震えた様子だった。

すると突然


「あ、あんなのやり過ぎだよっ!!」

そう言い走っていった


やり過ぎ…?…嫌な予感がする…

子供のいた。真逆の方には暗い洞窟の用な物が見えた。

「信也…待っていろ…恩は必ず変えさせてもらう…」


暗い洞窟の中へと勢い良く走って行った

「貴様ら!!」


「何だ嬢ちゃん?」


「さらった私の仲間を返してもらおう」

ランスロットは暗闇がドンドンと近付いて行った。

ようやく全体が見える場所まで来た。


「って…ありゃランスロットですよ!旦那!」


「何?て事はこのガキはランスロットの…」


「何を騒いでいる…さっさと…ッッ…!」

少し近付くと十字架の用にくくりつけられている信也がいた。

服は全て剥ぎ取られており、爪は剥がれ、指も何本か別の方向へと曲がっていた。

顔はパンパンに膨れ上がっていて涙を流しながらうつ向いていた。


「信也…おい…信也…」

目を疑いながらも

少しずつ歩き近付いていく


「ランスロットの仲間って事はやっぱり何か知ってますぜこのガキ。」


「いくらランスロットとはいえここから先は遠さねぇぞ」

盗賊達は巨大な斧を担ぎ上げ戦闘体勢に入っていた。


「はぁ…はぁ…お前ら…」

ランスロットは怒りの余り右目が真っ赤に染まり少し血が流れ出して


――殺してやる










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