第10話 思い出系

――父さんが死んだ

その事実は日本に居る俺達家族に伝えられるのは1週間後のハズだった。

緊急で報道が先に動いたから現実よりも早くより正確にテレビで伝わってしまった。


そして父の死体が日本に届けられるのは3週間後だった。

俺は父さんが大好きだった。

「もう…俺…どうすればいいんだよ…」

じーちゃんは存在しない事になってる、そして父が死んだ…タイムリープ何て使ってないのに…

何で?何で?何で?全部、俺の責任なのか?

思い重圧が背中にのし掛かる、

俺は数日間学校にも行かず塞ぎこんでしまっていた。

俺は全く眠れなかった、、、あの世界に戻るのが怖い、父の死亡の原因が全て自分にあるのだと自分に言い聞かせていた。


トントン

「信也、入るぞいいか?」


それは母だった。

「病院行くか?」


「……」


「いつまでもそのままじゃ…成長しないぞ?」


成長…俺はあの時に少し成長したつもりだった。でも実際は夢の中だけであって勘違いだった用だ…

夢の中で出来たからって現実世界で出来るとは限らない、、、


俺は精神科に行き鬱病と診断され睡眠薬と精神安定剤が医師から進められた。


そんなつもりじゃないのにな、

俺は俺を否定しまくっていた。


母の車の中からただ無言で外を眺めていた。

「立夏からLINEが来てな」


立夏《リッカ》はうちの姉だ。

カナダへと留学中だった。


「父さんはいつも笑顔で居てくれたからって、叱る時はしっかりと叱ってくれた。褒める時は人一倍褒めてくれたよなって…

悲しいけど、前に進むしかないんだよ…

何とか立ち直ってくれ…信也…」


赤信号で車が止まった時に母の声が少し震えていた。

俺は少し母の方へ向く


「笑え…信也」

そう言い笑顔で涙を流していた。

何か心の中で締め付けられる用な感覚だった。

母さんが一番父さんとの付き合いが長いハズだもんな…

母さんは姉よりも俺よりも一番悲しんでいた。


「母さんが一番辛いのは父さんの死何かじゃ無いんだよ」


ハンドルを握る手は少し震えていた。

「お前が…そんなに辛そうな顔をしているのが…一番耐えられない…」


「母さん…ごめん…」

震える体を押さえて微かに声を出せた。

それは小さく聞こえないくらいの声だったが、母さんを見ていると耐えられなかった。

その時俺が言える最大の言葉がそれ意外に見つからなかった…


家に帰ったら母さんは無言だった。

日がくれて夜になったが夜飯が全く喉を通らない…

「信也…食べないと薬、飲めないから…」


小さなリビングテーブルには俺と母2人のいつもの席だったが、空いた席2つがやけに寂しく思えた。


目の前には自分がいつも大好きだったハンバーグが置いてある。

あんだけいつも大好きで食べていたハンバーグがこれだけ苦痛になるなんて考えた事も無かった。


「頂きます…」


無理やり口に流し込むかの用に凄い勢いで食べた。

母は食べてる俺を見てもその表情は相変わらず変わらなかった。


薬は飲むフリをしてゴミ箱に捨てた。

寝るのが怖いからだ。

眠ればまた、俺の責任で…


「ごちそうさま…ちょっとトイレ行ってくる…」


「……」

母は寂しげな表情をしたまま俺を見つめていた。


「ううっ」

食べた食べ物が胃から逆流し全て吐いてしまった。

胃が何も受け付けず拒否反応を起こしているかのように…


俺は意識がもうろうとしていた。

数日間飲まず食わず寝ずだったからそれは必然的であったが俺はそれも自分の責任だと責め立てていた。


「母さん…ごめん…」

そう言いトイレで気を失った。

戻る積もりは全く無かった…

でも心と体が保てなかった。


信也…


何戻って来てんだよ俺…


信也…


目をうっすらと開ける。


おい、信也大丈夫か…?


「信也!大丈夫か?」


あれ…?


「良かった!一瞬焦ったぞ!」


何で…何でだよ…


「それじゃな信也!私は王へバグダートの事を伝えてくる。また後日、そちらに使いを送る。たっぷりご馳走を用意しておくからな!」

ランスロットは手を振りながら笑顔で走っていった。


何で…何で…何で…何で…何で何で何で


「信也…?どうしたにゃ?」


俺は目と手が震えていた。


「信也…?」


「何でだよ…何で時間が…」


ミーちゃんは真剣な眼差しをしてこちらを見つめた。

「信也何があったか教えてくれないか」


「嫌だよもう…どうして…何で俺は…」


「信也!!」


頭を抱え俺はその場に座りこんでしまった、

「信也!!頼む!!教えてくれ!」


「じ、時間…が巻き戻って…」


「タイムリープだな、いつ頃?手を打つから!」


「夕、夕方くら…い」

呂律がうまく回らない。


「現…で…じーち…いなっ…て」


「それで?ゆっくりでいいから、大丈夫だから、私に教えてくれ」


「父…がテロ…死…で」


「ちょっと待って」

ミーちゃんは俺の頬を軽く触ると何やら魔方陣の用な物が浮かび上がった。

「よし全部分かった」


「もう…ど…れば…い…だよ」


ミーちゃんがグッと眉間にシワを寄せる。

「おかしい…」


ミーちゃんがそう一言呟いた。

「信也聞いてもいいか?」


信也は少し頷いた


「信也は父さんの事が大好きだったんだよな?」


首を縦に振った


「じゃあ何で、信也の父さんとの思い出が1度も話題に出てないんだよ。

父さんとの思いで話は信也の姉から来たLINE1通のみっておかしいでしょ。

しかもじーちゃんの存在が消えてるって事は…」


「信也…父さんとの記憶思い出してみて」


あぁ…あぁぁぁあ…


「思…い出せない」


「あぁぁぁぁあ!!」


「ちょっと信也どこ行くの!!待っててば!」


俺はその場から全力で走った。

逃げなきゃ…何処よりも遠く

逃げなきゃ誰にも会わずに…

逃げなきゃ…死なないために、、、




――逃げなきゃ













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