第7話 ドラゴンと科学者系

 そうか、俺は最初名字で名乗った。

 三上と。俺の下の名前は知らないハズなのに。

 なのにバグダートは「信也君」と俺を名指して指示を出した。

 しかし、何故だ?何故俺の名前を知っている?一体どこで…


「ミーちゃん…」


「何だにゃ」


「クエスト受けた帰り際つけられてたでしょ。」


「ははーん。信也にも理解出来たんだ。私の考え。」


 これは俺でも理解出来た。ミーちゃんはドラゴンに近づくために仕組んでいた、最初から。

 まず、この護衛のクエストがギルドに張られている事がおかしい。

 バグダートは国最高の科学者だ。そんな科学者の護衛を誰にでも受けれるギルドにするだろうか?確かに難易度8だ。だが、ミーちゃんが受けてきた。これは難易度8じゃない。

 実際は難易度1で誰にでも受けれるクエスト。


 俺はポケットに入っているクエスト用紙を取り出した。

 よく見ると難易度の所は少し修正された後があった。


「ミーちゃん…これ元々難易度1のクエストでしょ?」


「おお!すごいにゃ!何で分かったにゃ?」


「これは、俺をここまで連れてくるためにわざと難易度8に書き直したんだろ?」


「じゃあもう…全部気付いてるんじゃない?」


「あぁ、全部分かった。」


 バグダートは科学者。難易度1で、誰にでも受けれるクエスト、つまり俺達はドラゴン復活に関する何らかの実験台。

 俺の名前を知っていたのは多分、ミーちゃんに尾行して俺達の宿に行き扉の前で話を聞いていたからだ。


 そしてミーちゃんはわざと名字で名乗れと言ってきた。宿の話を聞いていたら俺の名前がばれているからだ。

 そしてランスロットも違うギルドで受けた人だ。

 でも1つ気掛かりな事があった。


「ミーちゃん、何でバグダートは俺達やランスロットをここに連れてきたんだと思う?」


「何だにゃ?それは分かってにゃかったのか?」


「え…それも…分かってるの…。」


「当たり前だにゃ!私を誰だと思っているにゃ!」


「もう…魔王みたいだな…」


「そう!私は魔王!いや天使にゃ!」


「ノリツッコミ下手だな…とにかく教えてくれ。」


「バグダートが最初に持ってた石にゃよ」


「あぁ、馬車に居たときの最初の石か。」


「あの石…どこかで見た事あると思ったら…あれは封竜石。竜の力を閉じ込めた石。」


「そうか!その石で竜の封印を解こうと…」


「いや違う。竜の封印は解けない。」


「どうゆう事?俺が一回タイムリープした時は竜がいたんだよ?それで俺が殺された…」


「なら方法は1つしか無いにゃよ…」


「方法…」


 ――ここで少し休もうか。

 調査をしていたバグダートとランスロットは森林の木の梺に腰を掛けた。

「飲んでください。騎士様。」

 バグダートはランスロットに自前の紅茶を差し出した。


「すまないな、バグダート」


「いえいえ、こちらこそ。」


 ゴグゴク

「はぁ…しかし疲れるものだな、なぁバクダート…?」

 目の前が少し揺れている

「バクダート…どうした…?お前の顔が…揺れて…見える…ぞ」

 手が震え始めた。持っていた紅茶が、カップと共に下に落ち破片が飛び散った。

 体の体温が上がっているのを感じる…

「すま…ないな…少し横…になる…」

 ハァ…ハァ…

 急に…病にでも…掛かったのか…?


「騎士様…ありがとうございます。」

 バクダートが笑顔でこちらを覗いてきた。

 右手には石の用な物を持っていた。


 ――森林前――

「人間の竜化!?」

 俺とミーちゃんは竜化を止めるために既に森林へと走り出していた。


「そう。それが奴の狙い。」


「でも、何で竜化何て…」


「簡単よ。自分の実験の為。」


 バグダートは国最高の科学者。裏を返せばこの国では好き放題に実験する事が出来る。

 おそらく奴は人間を竜化さし、その竜がどれほどの力があるか試したかったのだろう。

 国にドラゴンが復活したと報告すれば間違いなく国が動く。ドラゴン討伐に。


 て事は俺が殺された時のドラゴンはおそらくランスロット…

 そして周りにには誰も居なかったと考えると奴はドラゴンに殺された。

 なるほど辻褄が合う。


「でも、何でランスロット何だ…?」


「それが一番簡単よ…」


 ――森林内部――

 そうか…ハメられたのか…私は…ハァ…ハァ…

 不覚だ…

 意識が遠退いていく…


「永遠にお眠りになりなさい騎士様…」

 いいえ…


 ――円卓の騎士の1人 サー ランスロット


「なるほど…ランスロットが王国最強騎士団の1人で、バグダートは竜の器にランスロットを選んだって訳か…」


「それと竜は代々、オスの血筋が見つからなかったらしいわ」


「て事は竜は何千年もメスだけで繁殖してきたのか…?でも、それとランスロットに何の関係が…?」


「簡単よ…」


「そうか…」


 ランスロットは小柄で顔をフードで覆っていた。

 それに何か自分を隠したがっている用だった。

 ランスロットは女だ。間違いないだろう。

 王国最強の騎士の1人で女

 バグダートからしたら絶好の獲物って訳だ。


「信也!!居た!!バグダートだ!!」


「チッ。今まで騙しやがって…!」


 森林の木々を走り抜けて5分くらいで奴が見えた。

 あのドラゴンは一瞬で森を消し去った。

 絶対に阻止しないと…

 俺はまたあの絶望を味わう事になる…

 今度は母が死ぬかも知れない…

 絶対に…絶対に阻止しないと…!


「バグダートォォォオ!!」

 少し光っている。この先だ。


 俺は一般人で何も出来ない。

 それに周りより人一倍コミュ症だし特技も無い…

 でも…

 何も出来ないけど…

【やれるだけやってみたい】

 初めてそう思えた。


 俺の肩にはミーちゃんも居る。

 出来る事を出来る限りで精一杯やってやる。


光の先、ひらいた場所についた。

「ハァハァ…見つけたぞ…ハァハァ…竜化何てされてたまるかよ…」

 たまらず顔が落ち膝に手をついた。

 顔から落ちる汗は尋常では無かった…


「…信…也…」


ミーちゃんの声は少し震えていた。


「どうしたの…ミーちゃん…」

 ――ッッ!?


目を疑った。

 俺が顔をあげた時にはもう遅かった。


 俺達が見たのはバクダートの死体だった。


 そして…既に竜化は











 ――完了していた。









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