第2話 記念すべき初クエスト系
まずこういうのは最初に冒険者ギルドへ行き初期装備やクエストを受けるんだよな。
最初は情報召集だよな…
俺はこの手のゲームは小学生の時から得意だった。
友人の中では負けたことが無いくらい強かったがいざリアルになると戸惑う物だ……
「――あ、あの~?」
手を挙げて人通りの多い賑やかな町で聞き込みを始めようとした。
誰も見向きもせずただ通り過ぎて行くだけだった。
だ、駄目ァァァア!!俺、極度のコミュ症で人見知りだったぁぁぁあ!!
くそっ!異世界に来て舞い上がって通る人々に話を聞こうと思ってたけど…
駄目だ…主人公失格だ…
これじゃぁ1話目で最終回だよ!!
俺は人気の無い路地の壁にもたれていた。
「ニャー」
白猫がこちらに近づいて来た。
野良猫とは思えないような綺麗な白い毛並みだった。
「――哀れなる勇者よ…」
急に脳に直接響くような声が聞こえてきた。
聞いたことのある声だ。
この猫か…?
「私よ美少女天使よ」
自分で美少女って言っちゃうのね…
猫の姿をしたこの美少女天使はため息をついた後かのような声で尋ねた。
「どうしたの勇者様…そのコミュ症どうにかしてくれない…どーするんだニャー…」
お前本当に語尾が色々と変わるよな…
「仕方無いだろ…元々勇者として呼ばれる予定なんて無かったんだから…」
「でも色々な人に話を聞かないと分からないニャー」
確かにそうだけど…
「ていうか何でここにいるの!?」
「勇者様が困っているから見ていられなくて力を貸してあげようと思ったんだニャー
ここではミーちゃんっていう猫として扱って欲しいにゃ?」
「ま、まぁいいよ…分かったよ…まず助けてくれるって具体的に何をしてくれるんだ?」
「とりあえず、ギルドに行って最低限の装備とクエストをうけるんだにゃ。話はそこからだにゃ。」
――国唯一の冒険者ギルド、ここには難易度1の初級クエストから難易度8の最高難易度までの全てのクエストが掲示板に貼り付けてある。さらに!初心者には優しく最初のクエストには装備が支給されるのだ!
「…それで…?勇者様の記念すべき最初のクエストはどれになったんだにゃ?」
ギルドの門前で猫と2人で喋るなんて他の人からすると只の変人だろう…
「…これだよ」
俺はしゃがみこみ猫に持ってきたクエストの張り紙を見せた
「…はぁ…まぁ最初のクエストだからいいんじゃにゃい?」
そのクエストは初心者向けで、国の東の大森林へと行きそこに生えてるにょきにょき茸を10個納品する事だった。
でも1つだけ問題があった…
「初級装備がひのきのぼうだけってどうなってんのぉぉぉぉお」
「うるさいにゃ…」
「だっておかしいだろぉぉ?ひのきのぼうだぞ?ド◯クエだったら攻撃力5だぞ?勝てねぇだろslimeにも!」
何でスライムの所だけ英語で言ったのかは謎だがこの16歳の少年はそんな事を言いつつもどこか楽しそうだった。
「ま、まぁいいや…とりあえず…」
信也はミーちゃんに張り紙を笑顔でもう一度見せた。
「クエスト開始だ!」
【クエスト:にょきにょき茸を納品せよ!】
ここから東の大森林。馬車で2日程の場所にある。出現する魔物も弱く初心者にはうってつけのクエストだ。
ギルドではコミュ症ながらも色々とこの世界の事を聞いた。
まずこの世界は大きく分けて国が5つ程あるんだとか。
そして1000年毎に現れ、世界を無に返すとされている崩壊の炎竜の事。
さらにその炎竜の出現が再び近づいているという事。
天使(ミーちゃん)は全て知っていた。
そりゃそうだ。炎竜も見たことがあるんだとか。
前回の炎竜は世界を滅ぼす前に何とか
七大天使がその力を封じ込めたとか何とかで詳しくはあんまり聞いてない。
その話をするとミーちゃんは静かにどこか悲しそうな表情をしていた。
馬車に揺られて2日程がたった
「――お兄さん、あれが大森林ですよ」
馬車の運転手のおじさんは俺を呼び見えてきた大森林に指を指した。
そこには雲まで突き抜けるような巨大な木が何千何十万と生えており、ここでも異世界を実感するほどだった。
馬車に乗っけてくれたおじさんはとても気さくでいい人だ。
2日だけだがとてもお世話になった。
…それに比べてこの天使は…
「気持ち悪いにゃ…吐きそうだにゃ…マジで吐きそう…ウヴヴェ」
やめろぉぉお!馬車酔いが俺にも移るぅ!お願いだから脳内に直接その気持ち悪い声を送りつけるのはやめろぉぉぉ
――ありがとうございました
おじさんはにこやかに手を振り去っていった
森林はとても大きく馬車を降りた後はさらに驚愕する程だった。
「勇者様…いつまでも驚いているんだにゃ…早く行くにゃよ」
俺はその絶景にみとれていた…
「もうちょっと待ってくれよ…すげぇ…」
「ッチ」
「え、今舌打ちした?お前天使だろ?そんなことすんなよな?いいじゃんか!異世界だし!見たことが無いんだもん!」
「早くするにゃよ…」
――ッ!
一瞬だけだったが森林から突風が吹き荒れてた。
「やべぇ!不穏な風だよこれ!始めてだよ不穏な風!」
テンションの上がっている信也を前にミーちゃんはどこか不安げだった。
「この風…おかしい…」
大昔に感じた事のある風。
「早く行こーぜ!ランランラン!」
不安げだったミーちゃんを横目に信也は森林へと入っていった。
………
「これで10個ッ!」
にょきにょき茸とか安直な名前だよな…
それにしても来る途中魔物に1体も出て来なかったしこれじゃレベル上げ出来ないじゃん…
しかも誰もいないし…
「やっぱりおかしい…!」
ミーちゃんは深刻そうな顔だった。
「魔物が出ない事がそんなに不思議?確かにこのクエストイージー過ぎるけど…]
「信也!早く帰…ッ!]
「どうしたの…そんなフラグ回収みたいな事…ッッ!]
驚愕した。森林の巨大な影に見たことも無い程の巨大な目がこちらを睨んでいた!
最初からおかしいと思ってた…
動物も魔物も居ない。初心者には優しい場所なのに他の初心者すらも居ない…
「信也ッッ!危ない!ここから逃げッッ!」
それは一瞬だった。
キーン!というとてつもなく大きな音が鳴り響いた。
俺は両手で耳を防さいだ。
…
あれ…両手…ッ
目の前には自分の両手が転げ落ちていた。
勢いよく降る赤い血の雨。
目を疑った。
ミーちゃんの姿はそこには無かった。
「ああああああああああああ
あああ
あ 腕が腕が腕が腕が
腕が
痛い痛い痛い痛い痛い痛い
あああああああああああああああ」
その場にうずくまる事しか出来なかった。
それは目の前にいた。
気付けば回りの木が全て消えており奴は姿を表していた。
1000年前の伝説。
崩壊の炎竜が。
俺は睨み付けるように顔を上げた。
すると何故か視線が一瞬中を舞い、下に落ちた。
俺は気付いた。
あ…
俺…
――死んだかも
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