すいすいもきゅー

エリー.ファー

すいすいもきゅー

 私の知ったことではないけれど、とにかく水泳の時間になると影が出てくる。

 大体の同級生はその影に気づかないでプールに入り、そのまま溺れて亡くなってしまう。

 別にそういうことはよくあるから先生も気にしてはいないけれど。

 でも。

 私は知っている。

 私から伸びる影が、人の命を奪っていることを。

 真夏ともなると影はより活発になる。何故なのだろう。

 詳しいことは知らない。

 研究するとか、そういう考え方を持っている訳ではないから、別にありのままを受け入れるしかないのだけれど。

 とにかく。

 プールで人が死ぬことで私の影が満足することだけは間違いない。

 昔、私の指示に従わせようと思ったこともあったけれど、影はどうしても言う事を聞かなかった。何もできなかったのだ。

 家族に話すと相手にはしてもらえなかった。

 それもそのはずだ。

 そもそも、家族とは仲が良くない。

 というか。

 私は一方的に嫌われていた。

 なんでも、本当だったら私ではなかったらしい。正解があったのに、私が生き残ってしまった、ということらしい。

 詳しい意味は知らない。

 しかし。

 私が生き残ったことは決して良いことではなかった、ということは事実のようである。

 私から伸びる影というのも、そのような心の問題から生まれているのではないか、とお思う時がある。あくまで推測だが、こんな不思議なことなのだから、何が原因となるかは分からない。

 誰に相談するべきかも、どうするべきかも分からない。ただ、影はひたすらに伸び続けるのみである。

 私は。

 私の影を少しだけ愛おしく思おうと努力した時期もあった。


 体から光が出ていることに気が付いたのは。

 いつのことだっただろうか。

 いつであっても別にいいか。

 とにかく。

 私の体からは光が溢れていた。

 最初の内はそれこそ少量で、自分でも気づかない程だった。しかし、それが少しずつ増えていき、その弊害として明るすぎて眠れなくなることもあった。次に生まれた悩みは自分ではなく周りの人に迷惑をかける、ということだった。両親は私が一人で寝るのが寂しいというから隣で寝ていたけれど、その明るさで眠れないことばかりであったと思う。

 妹と弟がいたけれど、光を発するというようなところは全くなかった。

 一族の中でも私だけの特徴ということのようである。

 聞いた話によると、体から影が出てくるとか伸びるとか、そういう悩みを持っている人がいることを知った。光と影で正反対ではあるけれど、どうにも会ってみたくはなるものである。

 それこそ。

 光と影が出会えばお互いの個性を打ち消し合って、普通の人間になれるのではないか、と思ったからだ。


 光と影が少しずつ交わる時というのは非常に楽しいもので。

 それがまるで私たちをどこかに連れ去ってくれるような気さえする。

 理、という言葉がある。

 そこには意味があり、法則があり、哲学がある。

 光と影もまたそこに依存する存在なのである。

 時間はなくなり、少しずつ収束し。

 それから。

 大切にしなければならないことを思い出す。

 まるで、自分の知っていることが一つ一つ形を失っていくかのようである。

 それが全てであり、それが全てになる。

 そういう光と影が、他の誰でもない貴方の背中に張り付く。

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